毎週土日の夕方に、“世界の今”を現地で暮らす人ならではの目線でお伝えしている双方向番組「ちきゅうラジオ」。世界中の人々と電話をつないで海外のホットな話題をピックアップする「ちきゅうメイト」のコーナーでは、セネガルの首都、ダカールにお住まいの鈴木洋平さんにお話をうかがいました。
【出演者】
鈴木:鈴木洋平さん
ローズ:當間ローズさん(土曜担当MC)
中村:中村慶子アナウンサー
毎週土日の夕方に、“世界の今”を現地で暮らす人ならではの目線でお伝えしている双方向番組「ちきゅうラジオ」。世界中の人々と電話をつないで海外のホットな話題をピックアップする「ちきゅうメイト」のコーナーでは、セネガルの首都、ダカールにお住まいの鈴木洋平さんにお話をうかがいました。
【出演者】
鈴木:鈴木洋平さん
ローズ:當間ローズさん(土曜担当MC)
中村:中村慶子アナウンサー
中村:
鈴木さんが注目したセネガルの話題は?
鈴木:
セネガルは全人口の9割以上がイスラム教徒で、そのセネガルで最も大きなお祭りと言われているのが「タバスキ」、日本語では「犠牲祭」と呼ばれるお祭りです。そのタバスキが先日行われましたので、紹介します。タバスキは「イード・アル=アドハー」とも呼ばれるイスラム教最大のお祭りで、犠牲祭という名前のとおり、アラーの神に羊を捧げて一家の健康と安全を願う行事で、当日は家族で集まって、羊をまるまる1頭さばいて食べるのが慣習です。タバスキが行われる日は毎年変わります。断食月のラマダンが明けて1か月と10日後のイスラム暦12月10日に行われますが、今年は6月29日でした。
中村:
羊は、どう売られているのですか。
鈴木:
タバスキ前になると、毎年いたるところで生きた羊が売られ、街中が羊であふれかえります。値段もふだんより倍近くに上がります。羊が車に積まれて運ばれたり、街で何百匹もの羊が売られたりする光景は風物詩になっています。
タバスキに備えて売られていた羊(ダカール市内)
ローズ:
1頭買いというのは経験がないのですが、お値段はおいくらぐらいですか。
鈴木:
値段はさまざまで、小さいものだと日本円で1万円ほど、通常のサイズだと5万円ほど、大きくてかっぷくのいい羊だと数十万円するものもあるそうです。ことしはロシアによるウクライナ侵攻の影響で餌代が高騰して、例年以上に値上がりしたようです。それでも大切な宗教的行事なので、借金してでも買うという人も多いですね。
中村:
タバスキ当日の写真もありますが、こうして家族みんなで食べるんですね。
当日は家族みんなで羊を食べて過ごす
鈴木:
私がお邪魔した家は、家族や親戚が同じ敷地内で何軒かに分かれて住んでいて、数が多いと、写真のように男女で分かれて食べるそうです。30人近い家族なので、羊を2頭買ったと言っていました。買った羊は大きく3つに分けられて、一部はその日に自分たち家族で食べ、一部は1週間かけて家族以外の人を呼んだりして少しずつ食べ、もう一部はお金がなくて羊を手に入れられない人にあげるのが慣例だそうです。イスラム教徒ではない私たち家族も、いろいろな人から「うちでも食べて行きなよ」と誘ってもらって、新鮮な羊をとてもおいしくいただきました。
ローズ:
女性の皆さんのドレスがすてきですね。
鈴木:
女性は、この日のために新調したカラフルなアフリカの布の服でドレスアップして、おしゃれを楽しむ日でもあります。小さい子どもも新しい服を着ていて、とてもすてきでした。
タバスキはお祭りですが、日本人がイメージするようなお祭りとは、ちょっと違うかもしれません。朝から羊を料理してお昼ごはんをみんなで食べ、その後はおしゃべりをしたり踊ったりして、夕方にまた羊を食べた後、お出かけするそうです。
夕食後、新しいドレスで出かけることもある
中村:
タバスキの前に行われた断食、ラマダンについても教えてください。
鈴木:
ラマダンはイスラム教徒が1か月間にわたって、日の出から日没までの間、食べ物だけではなく水も飲まずに過ごします。ただ小さい子どもや病気の方、高齢者や妊婦、授乳中の方は断食を行わなくていいそうです。
ローズ:
国民のほとんどがイスラム教徒のセネガルで、鈴木さんはラマダン中、どんなふうに過ごしましたか。
鈴木:
イスラム教徒ではない私たちの過ごし方にはそこまで大きな影響はないのですが、おもに現地の人が利用する露店はラマダン中はやっていないので、セネガル料理が大好きでよく食べているうちの子どもたちは残念そうでした。また日中は、空腹からなのか、セネガル人の人たちは少し気が立っているようには感じました。ラマダン中は交通事故も多く、けんかしている様子も見かけたりします。
ローズ:
海外に旅行するとき、ラマダン中のイスラム教徒の方の目の前では、できるだけ飲食を控えて配慮するようにと言われますね。
鈴木:
そうなんです。彼らにとっては、私たち外国人が飲食していたり、それが視界に入ったりするのはまったく問題ないようですが、それでもこちらは気を遣って、なるべく見えないところで飲食するなどはしていました。
中村:
それにしても、昼間とはいえ1か月も空腹というのは、つらそうですね……。
鈴木:
友達のセネガル人は、「最初の1週間はきついけど、2週目からは体が慣れてくるし、毎年やっていることだから苦じゃないよ」と言っていましたね。私も「せめて1日だけでも」とラマダンにチャレンジしましたが、やっぱりきつかったです。1日だけならまだ耐えられましたが、これを1か月も続けるのかと思うと、気が遠くなるようでした。ただ実際に1日中飲むことも食べることもできない生活をしてみると、ふだん何気なくしている飲むことや食べることに、すごくありがたみを感じられましたし、よりおいしく感じられました。
中村:
セネガルのタバスキ、鈴木さんの感想は?
鈴木:
ラマダンもタバスキも、イスラム教徒ではない私はセネガルに来るまであまり認識していませんでしたが、体験してみると、セネガル人にとってすごく大きな意味を持つものなんだなと感じました。印象的だったのが、タバスキ当日は街が静まり返ることです。いつもは車の通行量が多く、いたるところで工事をしているので何かしら音が聞こえてくるのですが、タバスキは家族行事なので、当日は基本的に家で過ごして、夕方にならないとみんな外に出ないんですね。家族で過ごす時間を本当に大切にされているんだなと思いましたし、羊のお肉も、自分たち家族だけでなく、羊が手に入らない状況にある人にも分ける慣習というのは、すてきだなと感じました。セネガルがより好きになった体験でした。
中村:
セネガルの鈴木さんに伝えていただきました。ありがとうございました。
鈴木:
ありがとうございました。
【放送】
2023/07/01 「ちきゅうラジオ」
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