毎週土日の夕方に、“世界の今”を現地で暮らす人ならではの目線でお伝えしている双方向番組「ちきゅうラジオ」。世界中の人々と電話をつないで海外のホットなニュースをピックアップする「ちきゅうメイト」のコーナーでは、ブラジル・サンパウロにおすまいのフォトグラファー、仁尾帯刀(にお・たてわき)さんにお話を伺いました。
【出演者】
仁尾:仁尾帯刀さん(フォトグラファー、サンパウロ在住)
ローズ:當間ローズさん(土曜担当MC、ブラジル生まれ)
中村:中村慶子アナウンサー
ローズ:
仁尾さん、ブラジルで6月と言ったらあれですよね?
仁尾:
ブラジルで6月と言ったら、もちろん「フェスタ・ジュニーナ」ですよね。日本語に訳すと「6月祭り」ということになります。この時期、ブラジルは冬なんですが、今日はブラジルの冬の風物詩「フェスタ・ジュニーナ」についてお伝えします。
中村:
ブラジルのお祭りといったらにぎやかなカーニバルが有名ですが、他にもあるんですね?
仁尾:
おっしゃるとおり、サンバパレードが行われるリオデジャネイロのカーニバルが世界的に有名ですよね。でも、ブラジル北東部の内陸などには、カーニバルよりフェスタ・ジュニーナのほうが盛り上がる地域もあるんですよ。
ローズ:
ブラジルで「あなたをHAPPYにする言葉を教えてください」と聞くと「フェスタ・ジュニーナ」と言うぐらい大好きなお祭りです。簡単に説明するとブラジルの収穫祭で、素朴だけどめちゃくちゃ盛り上がるお祭りです。
中村:
仁尾さん、フェスタ・ジュニーナの由来は?
仁尾:
もともとはヨーロッパ各地で、1年で昼が最も長い夏至の日に行われていた豊じょう祈願の祭りが、ポルトガルからブラジルに持ち込まれて各地で行われたというのが始まりだったそうです。この夏至の日が、6月24日のキリスト教の「聖ヨハネの日」と近いことから、ヨーロッパではこの聖人のお祭りと夏至の祭りと結びついてお祝いされていたそうなんですが、ブラジルでは、北半球での夏至にあたる南半球の冬至の日の前後にお祝いされているんです。
中村:
日本など北半球は夏至だけど、ブラジルは冬至なので収穫祭。本当に季節が逆なんですね。フェスタ・ジュニーナは6月のいつ行われるんですか?
仁尾:
ブラジルでは、6月24日の「聖ヨハネの日」に加えて、それに先立つ6月13日の「聖アントニオの日」から6月29日の「聖ペドロの日」までがフェスタ・ジュニーナとして楽しまれています。
中村:
13日から29日にかけて! 長いんですね。
ローズさんは、フェスタ・ジュニーナに何か思い出はありますか?
ローズ:
いっぱいあります。僕は静岡県の湖西市出身なんですけど地域にたくさんのブラジルの方が住んでいて、毎年6月になるとフェスタ・ジュニーナをやるんです。日本では土曜か日曜の1日だけですが、みんなで農作業するような洋服を着て、ブラジルの伝統の料理を食べて、踊ります。
サンパウロ市内の教会で行われているフェスタ・ジュニーナ
中村:
仁尾さんが撮影したブラジルのフェスタ・ジュニーナの写真が掲載されています。鮮やかな小旗が飾られてたくさんの人が集まっていますね。このフェスタ・ジュニーナ、ブラジルではどんな風にお祝いするんですか?
仁尾:
写真はサンパウロ市内にある教会主催のフェスタ・ジュニーナです。ブラジルは大きな国ですから地域によって異なるのですが、収穫祭を兼ねたお祭りということで、もっぱら田舎風な食べ物と装いで楽しみます。この祭りの代表的な食材がトウモロコシなんですが、これをケーキやパモーニャというお菓子にして食べます。
フェスタ・ジュニーナではトウモロコシの屋台が並びます
仁尾:
フェスタ・ジュニーナの代表的な飲み物もあるんですが、それが「ケンタォン」です。ケンタォンは、ワイン、またはブラジルのサトウキビ由来の蒸留酒「カシャッサ」をベースにしたホットカクテルです。カシャッサに、シナモンやショウガ、クローブ、レモンの皮、リンゴ、水などとともにカラメル状にした砂糖に加えたホットカクテルが「ケンタォン」なんです。味は違いますが、日本で寒い冬に甘酒を飲むような感じです。フェスタ・ジュニーナでは、各地の教会や学校の庭、あるいは路上で、こうした食べ物や飲み物の屋台が並びます。
中村:
フェスタ・ジュニーナでも、サンバを踊ったりするのですか?
仁尾:
このお祭りを彩る音楽としては、アコーディオンやトライアングルを使用したフォホーという音楽があります。サンバは1人でも踊りますが、フォホーは男女がペアになってお互いの手を握って、体を寄せ合って踊るのが基本です。
ローズ:
フォホーの音楽の特徴はアコーディオンを使うところなんですよ。仁尾さん、学校とかで子どもたちが踊るんですよね。
仁尾:
教会主催のフェスタ・ジュニーナは本格的に踊るようなものではなく、ゆるく屋台を楽しむ内容なんですが、学校では生徒たちが田舎風の衣装を着て、このフォホーの音楽でペアダンスを披露します。男子は、ジーンズにチェック柄のシャツにスカーフ、麦わら帽子をかぶった農民風のスタイルに、女子はカラフルなつぎはぎドレスやエプロンなどを身に着けます。これは多くのブラジル人にとっての子ども時代の共通体験です。
ブラジルでは7月の1か月間が学校の冬休みなので、子どもや先生にとっては1学期を締めくくる行事となっています。
中村:
ブラジルで農民スタイルの衣装でダンスって、私が想像するブラジルのイメージとは全く違いますね。
ローズさん、ブラジルにはこういう一面もあるんですね。
ローズ:
そうなんです。フェスタ・ジュニーナは期間中、それぞれの学校や地域がお祭りをしているので、期間中はずっとお祭りに参加できるんですよね。
仁尾:
そうですね。6月の週末はいろんなところでやってますね。私も今日は午後から息子の学校でフェスタ・ジュニーナがあるので出かけます。
中村:
仁尾さん、どうもありがとうございました!
【放送】
2023/06/17 「ちきゅうラジオ」