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2020年11月11日(水)放送より

HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字で「人一倍敏感な人」を意味する言葉です。大多数の人が気にならないようなことでも敏感に感じ取ってしまうために、困難を抱えている人もいるようです。もしかして私もと思う方もいらっしゃるかもしれません。今回は少しでも、そうした生きづらさを解消するヒントをつかんでいただくため、HSPについて、精神科医の長沼睦雄さんに教えていただきました。

【出演者】
武内アナ:武内陶子アナウンサー
長沼さん:長沼睦雄さん(精神科医)


<長沼睦雄さん プロフィール>
山梨県出身。北海道大学医学部を卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻。精神科医として北海道立子ども総合医療・療育センターや、道立病院の精神科に勤務。2016年、自らのクリニックを開設。著書多数。

武内アナ: HSPという考え方はいつごろからあるのですか。
長沼さん: アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が、1996年に発表された著書がきっかけといわれています。世の中には敏感な気質を持った人たちが一定数いることを調べ、その人たちのことをHSPと呼び始めました。博士自身が敏感であり、そのことで困難を抱えていたそうです。

HSPの特徴

長沼さん: HSPは、病気や障がいではなく、生まれ持った気質です。提唱者のアーロン博士によると、次の4つの性質(感覚)を全て持っている人はHSPの可能性が高いと言います。

1) 物事を深く丁寧に考える
物事を深く理解するため、機知にとんだ発言や、鋭い質問・指摘ができる一方、いろんな可能性に配慮して慎重に考えるため、行動に移すまでに時間がかかる。

2) 過剰に刺激を受けやすい
普通の人にとってはなんでもないことがとても気になる。大きな音、強いにおい、大勢の人がいる場所、突然の予定変更などに弱く、サプライズには楽しむというより動揺する。

3) 感情の反応が強く、とくに共感力が高い
人の気持ちを読み取って、相手の考えていることを予測したり、人の感情に共鳴して自分も悲しくなったり、つらくなったりする。

4) 些細(ささい)な刺激を察知する
小さな音、かすかなにおい、わずかな味の違いなど、普通の人が気づきにくい感覚を感じ取る。痛みにも敏感。

長沼さん: この4つの性質に全て当てはまるようならHSPといえますし、ひとつでも飛びぬけているケースがあれば、可能性があります。

HSPセルフチェックリスト(長沼さんオリジナル)

※以下の感覚があるかどうかチェックしてください。

【得意な面】
・素直で純粋で人を信じやすく優しい
・人を守りたいという気持ちが強い
・使命感があり向上心が強い
・真面目で責任感が強い
・ネガティブな感情への共感性が強い
・相手の気持ちを読むのが得意である
・正義感が強く礼儀正しい

【苦手な面】
・いつも相手に合わせて「いい子」でいようとしてしまう
・色や音や匂いなど、ちょっとした刺激が気になる
・夢や空想がリアルで現実と混同してしまう
・ひとりになる時間や空間があると助かる
・相手のペースに合わせてできない
・相手のことを考えすぎて嫌だと言えない
・集団の中で無口になってひとりになる
・感情、言葉、行動を表に出せず抑えてしまう
・監視や評価や時間制限などが苦手
・周囲の人の気分や感情に左右されてしまう
・とても神経が疲れやすい
・1度にたくさんのことができない

【周囲の人たちに影響されやすい】
・自分には関係のない問題に巻き込まれたりする
・予期せぬほど多くの人に嫌な思いをさせられたりする 
・必要以上に口に出してしまったりする
・人間関係の泥沼に引きずり込まれたりする
・深く付き合うはめになったりする

HSPの背景

武内アナ: HSPは遺伝的なものなのですか。
長沼さん: 遺伝的なものと無関係ではないのは確かですが、何かから来ているのかを特定することは難しいです。生まれ持った感じやすく傷つきやすい気質に、育ちの環境やトラウマなどの体験が加わって、感覚過敏性が強まる傾向にあるようです。環境の影響は大きいと思っています。

武内アナ: 今年は新型コロナウイルスの感染拡大にともない、生活様式もガラッと変わってしまいましたが、そのことも大きく影響しているのですか。
長沼さん: コロナ禍により、それまでの安定した規則的な生活が崩れてストレスが増えたことが関係していると思われます。相談者についても以前は30~50代の女性が多かったが、コロナ禍以降は、男女問わず、10~20代の相談が増えました。

HSPを理解する

長沼さん: どんなに自分の心が傷ついていても、それをうまく表現できないし、訴えたとしてもその深刻さは理解されない。これは、発達障害や慢性疲労症候群、発達性トラウマの方々に共通していることです。仕事についても他の人と同じようにできないことで、自分を責めて自信を失いやすい傾向が見られます。自分の外側にある情報を受け取りすぎて疲れてしまうので、次第にアンテナを引っ込め、自分の感じることにもフタをしてしまう。やがて、本当の自分を見失い自己肯定感が低くなってしまうのです。
武内アナ: そのような状態が続くとどうなってしまうの。
長沼さん: 頑張りすぎ、我慢しすぎ、自分を責めすぎたりすることで、脳内の自律神経の中枢の機能が低下し、めまいや動悸(どうき)、立ちくらみといった自律神経失調症状や、頭痛、腹痛などの身体痛を感じやすくなります。不眠症などの睡眠障害、パニック症などの不安障害、うつ病などを発症する例もあります。
武内アナ: 心身のバランスを崩し、他の病気を誘発する可能性もあることですよね。予兆とか、注意すべき状態を教えてください。
長沼さん: 現れている症状を「治す」「治してもらう」のではなく、敏感さの根本にある歪みを「癒す」「戻す」「正す」ということが大事です。

HSPとつきあう4つのコツ

1) 覚悟を決める
覚悟はとても大事。「自分で決めて、自分で生きる」「自分で決めて、自分で研究」「自分で決めて、自分で癒す」「医者の薬や診断に頼らない」「いいと感じたことを、素直にやってみる」など、受け入れてうまく使うことが大切。

2) 自他の境界線を引く
人は人、自分は自分の境界線を作るということ。「自他の区別をする」「他に踏み込まず、踏み込ませず」「嫌われて自由になる」「境界線を強く厚く柔らかくする」などの心構えが大切。

3) 自分軸で生きる
HSPの人は、自分より他人を優先し自分のことを後回しにしがち。過剰同調して自分らしさをおろそかにしないためには、「他人軸で生きる」のではなく、「自分軸で生きる」「自分軸を優先させる」「自分軸と他人軸を共存させる」ことが大切。

4) たっぷりの休息をとる
目を閉じて、外から入ってくる情報を遮断するだけでもだいぶ楽になる。SNSを見すぎない、苦手なところへはなるべく近づかない。

HSP気質の人との接し方

長沼さん: 自分とは違った知性・感性・心性をもっている人がいることに気づき、言葉にできない、言い返せない、実行に移せないということがあるということを理解しましょう。頭ごなしに決めつけたりしないことを心がけてください。この感覚を否定しないでください。知ることが理解を深め、理解することが心を救うと思っています。

生きづらさを抱えている人へ

長沼さん: 「生きづらい」のは、すべて「抑圧」からきています。この世で生きていく限りは、世間の常識・規則・枠組みに束縛され、あなたが本来、「やりたかったこと」「やりたくなかったこと」「やれなかったこと」にフタをし、嘘をついて生きることが多くなります。そんな生き方をしていると、自分で自分を信頼できなくなり、自己肯定感が下がってしまいます。人に認められよう、好かれようとするあまり、自分の本心を出せなくなってしまいます。嫌われる勇気を持ってください。

聴き逃しは1週間です。まず知ること、そして理解することが大切なんですね。

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2020年11月11日(水)放送より