日常を面白がろう/市川力さん

21/04/21まで

武内陶子のごごカフェ

放送日:2021/04/14

#インタビュー#ライフスタイル#ココロのハナシ#コロナウイルス

14時台を聴く
21/04/21まで

コロナ禍で不安を抱えつつ生活している人々が、世代を問わずにおられるのではないでしょうか。心や気持ちの健康を保つために、日常生活の中でできることはなんでしょうか。ストレス解消の一つの試みとして「今ある日常を面白がる」という考え方があります。その具体的な方法を教育活動家の市川力さんにうかがいました。(聴き手:武内陶子アンカー)

【出演者】
市川:市川力さん(教育活動家)


<市川力さん プロフィール>
1963年生まれ。大学院修了後、渡米。13年間に渡り、日本人駐在員の子どもが通う学習塾を運営。帰国後は、フリースクールの初代校長に就任。小学生を対象に、時代をたくましくしなやかに生きるための教育を実践研究。大人と子どもが共に学ぶ場づくりに取り組む「ジェネレーター」として活動。著書多数。※フリースクールは、不登校やひきこもりなど、さまざまな事情を抱えた子どもたちに居場所を提供しようという施設。

――市川さんのプロフィールにあるジェネレーターとは。

市川: ジェネレーターとは「引き起こす・生み出す」という意味です。子どもと同じ立場で取り組み、お互い誘発しあって何かを探り出そうという感じで使っています。

――今、子どもたちや大人はどんな状況に置かれていると感じていますか。

市川: 行きたいところに行けず、ネットとばかりつながって、触れあいも少ないので、イライラしたり、気分がふさいだりする人が多くなっているように感じています。動かないので体力の低下と、そこに付随する精神面も心配ですね。

――心を保つためにはどうしたらいいですか。

市川: 適度な運動や規則正しい生活を送るのはもちろんですが、自分の興味あることや面白いと思うことは、実は日常生活のなかに転がっているのだと気づいて欲しいです。この時期だからこそ、面白がることが重要だと思っています。

――面白がることの大切さとは。

市川: 未来や将来、また身近な明日のことなどを考えていくと「こんなこと意味があるのかな」とか「もうやめよう」と心が揺れる時があります。良い悪い、できるできない、うまいへた、ということだけを評価すると「チャレンジしてみよう」という気持ちは駆り立てられません。「自分の考えはたいしたことない」「間違っているかも」「おかしいと言われたくない」という、場を支配する人に引きずられて、面白いアイデアを自由に言えないこともあります。ハッキリしないプロセスのなかでも「前向きに歩み続ける心」を持ち続けることは、日常を面白がることで育まれると思っています。

――市川さんがそのことに気づかれたのは。

市川: 「好きなことや興味のあることがないとダメ」という発想への違和感。そして「好きじゃないからやらない」という、いわゆる「食わず嫌い」の子どもが多いことも気になっていました。しかし、好奇心というというのは、一見自分には関係なさそうなことでも「何かあるかも」と思えることなんだと気づいたのです。

面白いことの見つけ方

――どうしたら面白いことや興味のあることを見つけられますか。

市川: まず、ひとりではなく、身近な人や親子で「日常を見直すこと」から始めましょう。デジカメやスマホを持って、近所の道や路地裏や花壇や公園を歩いて、なんとなく気になった風景など何でも構わないので、パチパチと撮影する散歩をしましょう。その写真をお互いに見せ合って「へえ、面白いね」とお互いの発見について語り合いましょう。感じたことを語り合うことで、自分の興味の方向性が見つかると思います。私は「感じて触れて感度を上げる散歩」という意味で「フィールドウォーク」と呼んでいます。

――撮影したものをスマホで調べて教え合うのですね。

市川: スマホは記録として写真を撮るだけに用います。自分が感じた面白さを、相手に納得させるのが目的ではないので、すぐにその場で調べないようにしてください。写真を見せ合いながら、思いつくまま自由に語り合うことが大切です。変でもOK。 変への不安や、心の壁も面白がりましょう。知っていることを増やしたり、教えてあげたりするのではないのです。身の回りに面白いものが転がっていることに気づく「発見の感度」が高まればいいのです。歩くことで、自分が選んだことではない偶発的な出会いが向こうからどんどん飛び込んできます。そこに身を委ねると、偶発的への遭遇に身を任せることの面白さを知ることになります。そうすると、どんなことでも面白がれるようになると考えています。発見こそが次への始まりなんです。

面白いことをやってみよう

【俳キング】

  •  ● 60分~90分、あてもなく好き勝手に近所を探検して写真を撮影。
  •  ● 60分~90分、自分の撮影した写真に俳句をつけてできた俳句を披露。
  •  ● 合計2~3時間の日常を面白がる。
市川: 俳句しながらウオーキングで「俳キング」です。自分の撮った写真を見ながら俳句を考えるのは簡単なことではありません。しかし、子どもたちは「つらいけど楽しい」 「面倒で大変だけど、これまでにない発見をした」ととても面白がりました。親子で息抜きができて、お互いの好奇心を知って親子で成長できる時間だと思います。臨機応変に動ける小さなグループで、「思いつきを素直に語る・自らをさらけ出す・発見を共有する」この3つを心がけてください。相手の発見を面白いとなんでも受けとめ、自らも率先してさらけ出しましょう。

【発見知図】

  •  ● あてもなく歩いて、発見や気づいたこと、思いつきを大きな模造紙を広げてみんなで書き込む。
  •  ● さらに仮説や推理、もう想や分析を書き加え、いろいろな知識を集めた地図を作る。
市川: 地図でなく知図です。小さな発見から何かを思いついたり、いつもと見え方が変わったりします。リモートやオンラインで展開して、SNSで広げていくのも楽しいですよ。大人も夢中になって作っていますよ(笑)。

――家の中でもできることはありますか。

市川: 物置小屋などを宝探し探検するのも面白いですね。昔、祖父が買ったまま忘れていたサルノコシカケを発見した小学4年生は、写真を撮り、においや感触をノートに記録して、サルが腰かけた絵も描きました。その絵を見せて、祖父と孫のコミュニケーションが生まれましたよ。

――これからの教育の場は、どうなるとお考えですか。

市川: 教師が教えるべき知識を伝える役割を果たすことは変わりませんが、IT技術やAIにより比重は下がるのではないでしょうか。重要になっていくのは 「安心して語り合える場」 を作ることです。それは、コロナによってさらに加速されていくことでしょう。先行きが不透明で想定外の事態に、日々考えて決断して行動することが迫られます。それは「教える側・学ぶ側」という非対称ではなく、同じ立場でコラボレーションして取り組むことが必要だと思います。

これまでの学びや創造は、早く速く多く「できる・わかる・完成する」直進効率型でしたが、これからは、遅く緩く少し「できない・わからない・終わらない」漂流無駄型になるのではないでしょうか。自分なりに状況に対処して、見えない成り行きを追い続けることが求められます。これを私は「学び直す時代」と考えています。時間や場所に制約のある学校だけでなく、家庭・仲間・近所も 「学びの場」として、ひとりひとりが自然な創造性を発揮できる場所になればよいですね。その第一歩として「日常を面白がる」ことを心がけ、楽しんで欲しいです。

【放送】
2021/04/14 「武内陶子のごごカフェ」

14時台を聴く
21/04/21まで

この記事をシェアする