防災備蓄の基礎知識

21/07/06まで

武内陶子のごごカフェ

放送日:2021/06/29

#インタビュー#防災・減災#水害から命を守る

14時台を聴く
21/07/06まで

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今回は、防災備蓄の知識とスキルを教える専門家、防災備蓄収納プランナーの長柴美恵さんに、地震や風水害などの災害に対して、どのような考え方で防災備蓄を行えばいいのか教えていただきました。(聴き手:武内陶子アンカー)

【出演者】
長柴美恵さん(防災備蓄収納プランナー)


<プロフィール>
1967年、東京都出身。
2006年から一般家庭や企業オフィスの整理改善事業に従事。
2012年、収納のプロの資格を持つ人を集めた東北応援チームを結成。
2016年、一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会を設立。
2018年には農林水産省の「食糧の家庭備蓄懇談会」委員を務める。
メディア出演や講演会など幅広く活躍。

長柴: 防災備蓄というのは、災害に備えて水や食料などを備蓄しておくことですが、ただ防災グッズを置いておけばいいというわけではありません。防災グッズを購入したけど、どこにしまったか分からくなってしまったというパターンがありますよね。ボランティアに行った東北でも被災者の方々から、「どこにしまったか分からなかった」という声を多く聞きました。災害が発生したら、すぐ取り出して使える状態でないと防災備蓄の意味はありません。防災備蓄には「収納」という観点がとても大切です。

水害から命を守る

――NHKでは公共メディアキャンペーン「防災・減災」の一環として「水害から命を守る」をテーマに、番組やイベントなどを通じて、さまざまな取り組みを実施しています。これから大雨や台風などが増えることも予想されますが、どんな備えがあればよいでしょうか。

長柴: 収納という面では、外に出しているモノをすぐ家の中にしまえる場所を確保しておいてください。排水溝の水詰まりを防ぐ小型のスコップやブラシを用意して下さい。浸水してしまうと長靴では対応できないので、動きやすい運動靴を用意してください。また、家の中への逆流に備えて水嚢(すいのう)が作れるようなビニール袋もあるといいでしょう。これからの時期は、暑さ対策も必要になってくるので、冬よりも水は多めに用意しましょう。冷却シートや冷却グッズ、経口補水液、ゼリー飲料、梅干しやなどもそろえておくといいでしょう。

――どのくらいの量を用意しておけばいいですか。

長柴: 防災備蓄は、買い物なしで1週間生活できることを目安に考えてください。食料や水など、何をどのくらいというのは、人数で家庭ごとに異なるので、例えば、農水省の家庭備蓄ポータルサイトや各種防災備蓄の書籍なども出ていますので日常的にチェックすることが大切です。

――被害状況を知るには。

長柴: 被害状況は地域ごとに異なります。全国の天気予報は参考にしつつも、必ず自分のお住まいの地域(市区町村)の情報をチェックしてください。携帯ラジオを備蓄品として持っておくことも大切です。あと、市区町村から警戒レベル4が発令された場合は、全員避難の段階となります。お住まいの場所が安全であれば自宅が良い場合もありますが、事前から地域の情報をこまめにチェックし、家族と話し合ってシミュレーションしておくことが重要です。

――過去の水害から何か学んだことは。

長柴: 2019年9月の台風15号のときは、エアコンが止まった場合に備え、暑さ対策としてバスタブに新しい水を汲み置きし、ガラスの飛散防止に加え、カーテンを閉めて固定しました。その時に感じたのは、自宅に防災備蓄があることでモノの不足の心配がなく、精神的な安定があったことです。そのため落ち着いて情報収集に集中でき、家族で避難が必要になった場合のシミュレーションを話し合うこともできました。防災備蓄が心の余裕を与えてくれることを痛感しました。

防災備蓄の意識チェック

長柴: これができていれば防災備蓄の意識がある人という項目を5つ考えました。最近は電気の復旧率の目安が平均1週間とされています。これを実現するために必要な項目をまとめてみました。当てはまる項目にチェックを入れてください。
  • 1)ライフラインが止まった中でも、水、食料、トイレの代用品をはじめ、衛生品や生活用品の家族全員の使用量を把握し、7日分以上備えている。
  • 2)調理用コンロ、暖房機器、コンパクト扇風機、スマートフォン、懐中電灯、ラジオなどで使用する燃料や電源など、想定使用量分を用意している。
  • 3)防災備蓄の衣替え(暑さ、寒さ対策)を忘れずに行っている。
  • 4)ハザードマップを確認し、常に自分が住む地域の情報を入手している。
  • 5)建物の耐震化、家具の転倒防止対策がしてあり、家の中に避難部屋、もしくは避難スペースを確保している。
長柴: 1~2つ当てはまれば「防災備蓄の意識がある方」。3~4つ当てはまる人は「防災備蓄の意識が高い人」。5つ全部当てはった方は「防災備蓄収納の達人」です。ちゃんと使える防災備蓄にするためには、このくらいの意識でいてもらいたいというのが私の理想です。ゼロだった方は、今からでも遅くないので防災備蓄を始めてください。

防災備蓄のポイント

長柴: 「災害時にすぐ取り出せてすぐ使えること」が基本ですが、特に気をつけたいのが、置き場所と置き方です。災害状況のことまで想定して収納を考えるのが防災備蓄の大前提と覚えておいて下さい。

――家具の転倒防止対策はどうしたらいいですか。

長柴: 家具が倒れたとしても「ここに立てば安全」という避難スペースが必要です。落ちてくるモノがない、倒れてくる物がないスペースを確保しておきましょう。照明器具の下も避けましょう。狭くてそんなスペースは確保できないという方も多いと思いますが、本当に必要なモノかどうか見直すことも大切です。モノが減れば収納家具が不要になり、転倒物がなくなって避難スペースを確保できます。

――家の中を見直すことは大切ですね。

長柴: 防災グッズを何もかも買いそろえないといけないと思っている方もいるようですが、家にあるモノを見直すことで備蓄に役立つアイテムが見つかることもあります。いくつか紹介しましょう。
  • 新聞紙

敷く、火起こし、添え木、食品保存、水分の吸収、体に巻いて暖を取る、ごみ処理など、大変有能な資材です。1か月分くらいは備蓄しておきたいですね。

  • ポリ袋やゴミ袋

ポリ袋やゴミ袋はゴミを入れられるだけではありません。保存、調理、処分、雨具の代用、体の保温など、使用用途がたくさんあります。

  • 使い古したタオル

使い古しでも洗濯してキレイに保管したタオルなら、洗顔、体を拭くのにも使えます。使う用途に合わせてカットすることで、使用の幅が広がります。

  • ヘルメット

自転車やバイクのヘルメットなどは、頭部を守るという意味ではそのまま災害用として流用できます。

長柴: 残すモノと捨てるモノの間に「災害用」という考え方を取り入れてみてください。お金をかけずともできることがありますので、そこから始めてみるのもいいのではないでしょうか。お金をかけないという意味では、100円ショップも便利です。笛、ライト、小型ランタン、トイレの凝固剤、ベビーオイル、ハンドクリームなど、防災グッズや備蓄に使える用品がたくさんあります。それから、布おむつや腹帯に使われている綿素材「さらし」はオススメです。肌にもやさしく、長さも幅も自由なサイズにカットできるので、布巾やマスク、ケガの応急処置、生理用品など、マルチに活用できます。

――食料の備蓄についてはどうですか。

長柴: 被災地でボランティアをしていた時に「腹が減ったら何でも食べる」という考えは間違いだということを知りました。食べられる方はそれでもいいですが、口に合わない食事が続くと気力も萎えて、食べられなくなってしまうことがあり、健康を害してしまいます。備蓄食料は、おいしく食べられるモノをそろえてください。食べたいモノが食べられるって、一瞬でも幸せなれることだと思います。それから備蓄食料を廃棄することがないようにしてください。備蓄食料を買ったら、商品のすぐ目に留まる位置に賞味期限を書いたラベルを張っておき、賞味期限の前に食べるようにしましょう。

【放送】
2021/06/29 「武内陶子のごごカフェ」

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