午後2時台を聴く
23/10/05まで

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言葉の芸術である「詩」に魅了されるのはなぜなのでしょうか? 今回は、独自の言葉選びで日常を鮮やかに描く、詩人の最果タヒ(さいはて・たひ)さんをお迎えしました。(聞き手:武内陶子 パーソナリティー)

【出演者】
最果タヒさん(詩人)


<プロフィール>
1986年生まれ。2004年からインターネット上で詩作をはじめる。2006年、現代詩手帖賞を受賞。2007年、第一詩集『グッドモーニング』を刊行。同作で中原中也賞を受賞。著書『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が2017年に映画化。小説やエッセイも執筆。


――詩集が映画化されるってビックリですね。

タヒ:
私も話をいただいてビックリしました。詩って読む人によって、前向きに受け止める人もいれば、ネガティブな気持ちに重ねる人、読むタイミングによっても見え方が違うんです。声を乗せるとその人の作品になるんです。映画も監督さんの作品に生まれ変わる感じがしておもしろかったです。

――タヒさんは美術展も開催されていて、しかも歩き回って詩を体験できる展示をされたんですよね。

タヒ:
詩の言葉を断片的にモビールにして、天井からたくさん吊るしました。それが揺れることで言葉の順番が入れ替わったり、表と裏がひっくり返ったりして、見るタイミングで言葉の並びが変わるんです。見る人たちは、その場所に立ってその瞬間しか見えない言葉に出会えるんです。作品を書いていると一方通行的にとらえられることが多いのですが、読む人が、自分の気持ちと重ねることで、作品が完成すると思っているんです。だから「私が見つけているんだ!」と意識的になれるし、写真も撮影できたので、自分の詩を見つける感覚をより引き立てる展示になればいいなと思ったんです。

――タヒさんも会場にいたと思いますが、自分の書いた言葉でも新たに出会うということはありますか?

タヒ:
自分の書いた言葉って、私の形跡を感じるのであまり・・・(笑)。

――においがついてる感じね。

タヒ:
ちょっとクセが強い気がします。

――タヒさんが考える「詩」とは?

タヒ:
私もどういうものなんだろう? ってずっと考えています。ブログで文章を書いていたとき、見ていた人が「詩っぽいね」って言ってくれたのをきっかけに、いろいろな詩集を読むようになったんです。そうしたらいろんな詩があったので、よけいわからなくなっちゃったんです。でも、その中に、わからないけどめちゃくちゃカッコイイ詩集があったんです。このめちゃくちゃカッコイイと思ったら、それでいいんじゃないかと思ったんです。正解を出すような言葉でなく、”効率的に情報を伝えるための言葉の真逆な言葉”が詩だと思うんです。言葉にもがき続け、妥協しないで出てくる言葉が詩なんじゃないでしょうか。カッコイイと思ったあの時の感覚を基準にしています。

――読む人に共感してほしい、わかってほしいという気持ちは?

タヒ:
読む人の気持ちをコントロールできたら、それは詩ではないんです。感動してほしいと思って書いた詩は、詩ではないと思っています。だから共感とかメッセージを伝えたいということの真逆を目指して書かないといけないと思っています。

――詩を書くときは、心象風景とか想像で言葉を探していくの?

タヒ:
何を書こうとかは考えず、まず1行目を書いて、そこからジャンプするみたいに2行目が出てくるんです。ジャズのアドリブ、言葉のセッションですね。できるだけ真っ白な状態で書き始めると、予想しない言葉が出てくるんです。それがおもしろいんですよ。そうすると、何かを伝えようとする欲求とか、わかってほしい欲求から、どんどん言葉が離れていくんです。

――タヒさんが作詞されたAlexandrosの「ハナウタ」は、どんなことを意識して書かれたのですか?

タヒ:
地下鉄の広告の音楽なんですけど、「ひとりぼっち」を意識して書きました。でもそれはさみしいことでなく、ひとりぼっちの豊かな時間を切り取って書いたんです。

――タヒさんの詩を読んでいると、私、もうハートマークがいっぱいになるんです。ドキドキする幸せを感じてしまいます。

  • 最果タヒさんの詩(朗読:武内陶子)は「聴き逃し」で。

【放送】
2023/09/28 「ごごカフェ」

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