自動販売機 驚きの進化!~刺身から結婚指輪まで

23/10/03まで

ごごカフェ

放送日:2023/09/26

#インタビュー

午後2時台を聴く
23/10/03まで

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あんな物やこんな物まで、さまざまな商品を買うことができる自動販売機。日々進化を続けている自動販売機について、自動販売機マニアの石田健三郎(いしだ・けんざぶろう)さんに教えていただきました。(聞き手:武内陶子 パーソナリティー)

【出演者】
石田健三郎さん(自動販売機マニア)


<プロフィール>
1987年生まれ。会社員のかたわら珍しい自動販売機を取材し、SNSで紹介し発信。撮りためた写真は1万枚以上。テレビやラジオなどで活躍中。


――石田さんが自動販売機に夢中になったきっかけは?

石田:
大学時代に留学生が、「日本に来て一番驚いたのは、街中に自販機があふれていること」と話しているのを聞いて、自動販売機をテーマに卒業論文を書いたんです。調べていくうちに自動販売機の奥深さにハマってしまいました。

――石田さんが考える自動販売機の魅力とは?

石田:
自販機には日本の「おもてなしの心」と「技術」がつまっている、まさに“クールジャパン”の代表格だと思うんです。

――それはどのようなところですか?

石田:
日本では、1台の自動販売機に「ホット」と「コールド」がいっしょに入っているのは当たり前ですが、海外にはほとんどありません。また、炭酸飲料が吹き出さないように、落下の衝撃を抑える構造にしているんです。まさにやさしさがつまっていると思いませんか?

第三次自販機ブーム

――世界で最初に作られた自動販売機は?

石田:
世界初の自動販売機は紀元前215年の古代エジプトで誕生しました。コインを投入すると、その重みで聖水が出てくる装置で、寺院に置かれていたそうです。ちなみに日本では1800年代後半に登場した「自動郵便切手はがき売下機」が始まりです。

――日本にはどのくらいの自動販売機があるのですか?

石田:
現在、自動販売機と定義されているものは約400万台です。台数だと世界2位ですが、人口や国土面積を勘案した「国民一人当たりの普及率」という意味では、日本が圧倒的に世界1位でしょう。ちなみに台数1位はアメリカです。

――私たちの身近に普及したのはいつごろからですか?

石田:
1960年代に、デパートの屋上などに噴水型ジュース自販機が登場しました。これが子どもたちを中心に大ヒットしました。これまでの自動販売機は、ハガキやガムなどの日用雑貨やお菓子を買うイメージでしたが、この自動販売機の普及により「自動販売機=飲み物を買う」という意識が国民に根付いたのが「第一次自販機ブーム」です。

――第二次ブームは?

石田:
ひとつの自販機の中でホットとコールドが売れるようになった機種が1970年代に登場しました。これは自動販売機の歴史の中でも価値のある発明で、その後5年間で、飲料自販機の数は90万台から216万台まで激増したんです。そして、2020年代が「第三次自販機ブーム」なんです。コロナ禍の影響で非対面非接触の需要が急増し、冷凍食品の自動販売機や、新技術と結びついた自動販売機が続々と登場しているんです。

進化した自動販売機

石田:
全国の名店の味を冷凍食品として提供する自動販売機がコロナ禍で急増しました。非対面非接触で商品が買えるので、店舗側は時短営業や営業自粛で落ち込んだ売り上げを補填(ほてん)できるようになりました。冷凍食品の自動販売機といえば、ラーメンやギョウザが一般的ですが、最近ではお刺身の自動販売機もあるんですよ。

東京・渋谷に設置されている自動販売機には、AIカメラが搭載されていて、購入者の性別や年齢のデータを収集し、天候や時間のデータと組み合わせて分析することで、供給量やメニューの最適化を図っています。加えて、自動販売機の前の人の流れや賞味期限を考慮して、価格を変動させることも可能なんです。

指輪の自動販売機

石田:
約1万円で(結婚)指輪が買える自動販売機です。これは手作りの指輪キットになっていて、真鍮(しんちゅう)製のリング、木のハンマー、円すい状の棒などがセットで販売されています。「ふたりでこんな珍しいことをした!」という記憶や経験を重視するカップルが増えてきたことで、週に数個は売れているようです。

はんこの自動販売機

石田:
最短10分で、実印にも使える本格的なはんこが完成します。漢字だけでなく、ひらがなやローマ字のはんこも作れるので、外国人の方が記念やおみやげに買っていくケースも多いそうです。

生しぼりのオレンジジュースの自動販売機

石田:
シンガポール発の生しぼりオレンジジュース自動販売機が勢力を拡大中です。マシンが3~4個のオレンジをその場でしぼってジュースにしてくれます。今年3月時点で日本を含む33か国で利用されているそうです。

――いろんな自動販売機があるんですね!

石田:
他にも「温泉の自動販売機」や「フレンチのフルコースの自動販売機」、「花火の自動販売機」などもありますよ。

防災機能の自動販売機

石田:
防災の面でも自動販売機は有効活用されています。災害ベンダー機能が搭載されている自動販売機であれば、災害時に無料で飲料を飲むことができます。また、スマートフォンの充電ができる機能や、AED(自動体外式除細動器)を搭載した自動販売機もあるんです。

――自動販売機が「ライフライン」になりますね。

石田:
自動販売機には「住所表示ステッカー」といって、現在地が記載されているシールが貼ってあります。見知らぬ土地で救急車などを呼ぶ際、近くの自動販売機のステッカーを見れば、すぐに住所が分かるようになっているんです。さらに、浸水センサー付き自動販売機も登場し、特定の高さまで浸水すると市役所や国土交通省に連絡が行くしくみになっています。

――災害時に役立つ進化はありがたいですね。

石田:
期間限定でJR新宿駅南口改札内に設置された「クスリの自動販売機」では、処方せんなしで購入できるOTC医薬品が販売されていて、商品を選択すると、店舗にいる薬剤師(または登録販売者)の専用タブレット端末に、購入者の顔写真などの情報が送られ、薬剤師さんがチェックしてOKを出すと、該当する薬が買える仕組みになっていました。今後、制度が変わってくれば、離島や地方などでも24時間いつでも薬が買えるようになると思います。

――これからの自動販売機の可能性は?

石田:
数は減るかもしれませんが、質は上がると思います。商品が買えるだけではなく、そこにプラスαの要素が増えてくるでしょう。「いつでも商品が買える」というのが最大のメリットでしたが、コンビニエンスストアやネット通販の普及により、差別化が難しくなっています。また、SNSでバズるためにはある程度とがった要素が必要なので、「自販機でこんな珍しい商品が買えた」とか「こんな変わった形の自販機があった」など、エンターテインメント性のある機種が今後も求められると思います。


【放送】
2023/09/26 「ごごカフェ」

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