カワイイだけじゃないペンギンの話

23/09/28まで

ごごカフェ

放送日:2023/09/21

#いきもの

午後2時台を聴く
23/09/28まで

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地球上にいる18種類のうち、日本では12種類のペンギンに出会えるそうです。ペンギン会議研究員の上田一生(うえだ・かずおき)さんにいろいろ教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
上田一生さん(ペンギン会議 研究員)


<プロフィール>
1954年、東京都出身。40年間、都内の私立高校で社会科教員として勤務。1988年、第1回国際ペンギン会議に参加。1990年、日本で「ペンギン会議」を設立。2016年からは国際自然保護連合(IUCN)の「ペンギン・スペシャリスト・グループ」のメンバーとして活動中。


――ペンギンに興味をもったきっかけは?

上田:
中学生の時から鳥のことは調べていて、鳥類に関しては詳しいと思っていました。しかし、高校生のときに彼女と上野動物園に行き、ペンギンのことを質問されて、まったく答えられなかったんです。そのことでプライドが傷つき、ペンギンのことを調べ始めたんです。ちなみにそのときの彼女が今の妻なんです。

――奥さまと出会わなかったら「ペンギン会議」の設立もなかったかもしれませんね。この「ペンギン会議」はどういうものですか?

上田:
現在、会員数は全国に900人ほどいて、ペンギンの飼育環境や技術の向上、野生のペンギンの研究の推進、ペンギンの保護活動の推進などの情報発信をしています。

――これまでに、どんなところにペンギンに会いに行ったんですか?

上田:
南米、ニュージーランド、南極などに行きました。南極は体力的に疲れました。ペンギンって南半球にしかいないんですよ。

ペンギンの誤解

――ペンギンといえば飛べない鳥ですよね。

上田:
ペンギンは「飛べない鳥」ではなく「飛ばない鳥」なんです。鳥類は恐竜から進化したという学説が定説になりつつあるので、ペンギンも恐竜の子孫と考えられ、さまざまな研究の結果、昔は飛んでいたということがわかっているんです。そして、進化の途中で海の中で魚を捕まえることに特化するため飛しょう能力を捨て、水深600メートルくらいまで潜ることができる能力を持つようになったんです。

――「飛ばない鳥」になるという生き方を選択したんですね。

上田:
マンガなどでペンギンとホッキョクグマはセットで描かれたりしますが、一緒に見ることができないんですよ。

――動物園では近くにいますよね?

上田:
ペンギンは南半球にのみ生息していますが、ホッキョクグマは名前の通り北極圏を中心とした北半球の生き物なので、野生では一緒に見ることができないんです。19世紀の終わりから20世紀のほぼ同じ時期に、北極探検と南極探検が行われ、北極探検のマスコットはホッキョクグマ、南極探検のマスコットはペンギンで新聞の記事が出たことで、このような誤解が生まれたと考えられます。
実は南極で見られるのはコウテイペンギンアデリーペンギンの2種類だけなんですよ。そのほかのペンギンは、南極の少し北の亜南極と呼ばれるところや、暖かいところに住むフンボルトペンギンや、赤道直下に住むガラパゴスペンギンです。フンボルトペンギンは日本の水族館にいますが、30年くらい前までは「寒いところに住む生き物」として展示されていました。

――ある程度暖かい場所でも住むことができるのに、どうして南極で暮らす種類がいるのですか?

上田:
ペンギンは1日で自分の体重の半分くらい食べるんです。そのエサは、カタクチイワシやイカです。それらがいるのは水温が低い地域なんです。なので、エサを探す過程で暖かいところから寒いところ(南極)に進出していったのです。

――寒いところでの子育ては壮絶ですよね。

上田:
コウテイペンギンは南極の一番寒い時期に繁殖をします。オスはメスの卵を預かって2か月ほど絶食して卵を温めるんです。その間、メスはエサを探しに行くのです。

――上田さんの推しペンギンは?

上田:
走るのがとても速いジェンツーペンギンですね。亜南極・南極条約の決まりで5メートル以内に近づくことはできないのですが、好奇心がとても強く、向こうから近づいてくるんです。私は何回も靴ひもをほどかれたり、リュックのファスナーを開けられたりしました。

――かわいいですね。向こうから近づくのはOKなんですね。

ペンギンに会いに行こう!

上田:
日本は世界でも多くペンギンを飼育している国で、18種類のうち、12種類を見ることができます。「長崎ペンギン水族館」では9種類と多く、橘湾(たちばなわん)の一部を使って、ペンギンが自然の海・砂浜で過ごす様子が観察できる「ペンギンふれあいビーチ」もあります。

――9種類とは! さすが館名にペンギンがついているだけありますね。

上田:
フンボルトペンギンの飼育面積が世界最大なのが「埼玉県こども動物自然公園」です。チリのチロエ島の自然を再現にしたペンギンヒルズでは、波の中を泳ぐ様子や、緑に囲まれた丘を歩き回る姿が観察できます。また、今年7月にオープンした札幌の「AOAO SAPPORO」では、キタイワトビペンギンを間近で見ることができます。

――珍しいペンギンに会いたい場合は?

上田:
パンダで有名な和歌山・南紀白浜の「アドベンチャーワールド」は、ペンギンにも力を入れていて、管理が大変な南極種のコウテイペンギン、アデリーペンギンを見ることができます。また、「下関市立しものせき水族館 海響館」には水深6メートルのペンギン専用プールがあって、希少なマカロニペンギンに会えますよ。

ペンギン会議報告

――9月3日~8日までチリで行われていた「国際ペンギン会議」に出席されていたんですね。今回の会議で話題になったものは?

上田:
“ペンギンは18種”というのが定説ですが、分子生物学者から「22種にすべきだ!」という斬新な説が提示され、議論を呼びました。また、何種類かのペンギンが、死んだ魚や海底の小石を呑み込んでいるところが確認されたことも報告されました。堅苦しい会議に思われますが、みんなペンギングッズを身につけたりして交流を楽しんでいました。

――上田さんにとってペンギンとはどんな存在ですか?

上田:
もう相棒になってきました。生活の中に組み込まれています。ペンギンが出てこない日は一日もありません。こちら(人間)の気持ちをペンギンに伝えられたらいいなと思っています。

  • ペンギンの鳴き声クイズは「聴き逃し」でチャレンジ!

【放送】
2023/09/21 「ごごカフェ」

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