午後2時台を聴く
23/09/27まで
化石の発見や科学技術の進歩で、恐竜の研究は日進月歩。子どもだけでなく、かつて恐竜少年少女だった大人をも魅了する世界が広がっています。恐竜に関連するさまざまな活動をされている恐竜くんに、恐竜の「いま」を教えていただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)
【出演者】
恐竜くん(恐竜世界ナビゲーター)
<プロフィール>
東京都出身。16歳でカナダの高校へ単身留学。恐竜研究の本場・アルバータ大学で古生物学を中心に地球科学全般を学ぶ。研究機関や大学に属さず、恐竜展の企画・監修、トークショーやワークショップの開催など、恐竜に関わる活動を手がけている。
――恐竜くんが恐竜にハマったきっかけは?
恐竜くん:
6歳のとき、国立科学博物館の恐竜の骨格標本に一目ぼれしたんです。大きさ、迫力、美しさ、骨を見て「美しい!」と思ったんです。そして、8歳のときに「アルバータ大学で恐竜の勉強をする!」と宣言したんです。
恐竜の世界の常識
――恐竜の研究は目覚ましい発展を遂げていて、むかし常識だったことが、今では常識でなくなっているそうですね?
恐竜くん:
かつて、恐竜はワニやトカゲのようにウロコに覆われているイメージでした。しかし、1996年にシノサウロプテリクスの化石が発見され、そこにくっきりと羽毛の跡が残されていたんです。以前から羽毛を生やした小型の恐竜の存在は予測されていましたが、動かぬ証拠が見つかったんです。
映画『ジュラシック・パーク』シリーズに登場する“ラプトル”という恐竜は、ヴェロキラプトルという恐竜で、トカゲのようなツルツルの姿で描かれていますが、羽毛恐竜の化石の発見により、鳥に近い小型の肉食恐竜は、体が羽毛で覆われていたことがわかり、ヴェロキラプトルも全身が羽毛に覆われてフサフサだったと考えられているんです。
――恐竜の色もわかるようになってきたんですって?
恐竜くん:
「化石から恐竜の色は絶対にわからない!」というのが、恐竜研究における長年の常識でした。しかし、2010年に、アメリカ・イェール大学の研究チームが小型の羽毛恐竜・アンキオルニスの化石を詳細に調査した結果、全身の色がグレーと判明したんです。カギとなったのは、全身を覆う羽毛部分に残されていた色素細胞で、その形状や大きさ、配置などを細かく調べ上げ、鳥類のさまざまな羽毛と比較することで、恐竜化石から色の復元に成功したんです。
――やっぱり鳥は恐竜なんですね。そして、技術の進歩ってすごいですね。
恐竜くん:
鳥=恐竜が定説になったことにより、鳥をヒントに多くのことが推測できるようになったんです。
骨格標本はオーダーです
――恐竜の骨格標本を10数体も持っているということですが、骨格標本は博物館が所有するものだと思っていました。
恐竜くん:
もちろん実物の標本ではなくレプリカです。実物の標本はもろいので、博物館で展示されている骨格標本もほとんどがレプリカなんですよ。
――この骨格標本はどのようなものですか?
恐竜くん:
世界で初めて脳腫瘍の痕跡が確認された大型肉食恐竜・ゴルゴサウルスの骨格です。大型の肉食恐竜の場合、争いなどでろっ骨の変形や足の疲労骨折などがよく見られるのですが、この骨は、それ以上にケガだらけだったんです。断定は難しいのですが、脳腫瘍により、まっすぐに歩けず、フラフラして頻繁に転んで骨折が多かったのではないかと推測されるんです。
――この骨格標本はトリケラトプスですね?
恐竜くん:
トリケラトプスは強じんな体と圧倒的な個体数を誇り、北米西部の広い範囲で大繁栄しました。これは現時点で最も科学的に正確と言えるトリケラトプスの幼体標本といえます。
――骨格標本はどのようにして購入するのですか?
恐竜くん:
通常、博物館などが恐竜の骨格標本を購入する場合、業者が制作したものを購入します。私の場合は、骨格標本のスケッチを描き、指示書を英語で書き、サイズなど、さまざまなことを記した設計図を書いてオーダーしています。非常に面倒な作業ですが、業者さんたちもおもしろがって作ってくれています。
――フルオーダーにこだわる理由は?
恐竜くん:
私が企画する恐竜展やイベントは、子どもから大人まで楽しめて、飽きないようにエンターテインメント性を意識しています。一般的に恐竜の骨格標本は「棒立ち」か「歩いている姿」が多いですよね。これだと、恐竜が過去に存在していたという事実だけを伝えるにとどまってしまいかねない。私は恐竜を「生きもの」として捉えられるように工夫したいと考えているんです。なので、骨格標本は、科学的、解剖学的に可能な姿勢でありながら、躍動感のあるポーズや、暮らしのワンシーンを切り取ったポーズでオーダーしているんです。
――これは迫力ありますね。
恐竜くん:
これはティラノサウルスとトリケラトプスです。同時代を生きた恐竜同士が、まさに一戦まじえる直前の緊迫感のあるシーンを骨格標本で表現させました。私は、舞台を作っているイメージで展示しています。
――最後に恐竜くんからメッセージをお願いします。
恐竜くん:
恐竜というと、子どもがいっとき夢中になるというイメージが強いのですが、大人も子どもも「恐竜ってすごいね」だけで終わらず、そこから興味を持ってもらいたいと思っています。科学的に研究が進んでいて、どんどん新しいことが発見されています。恐竜に興味を持つと、世界のいろいろなことに興味がつながっていきます。もう一度、「恐竜は生き物である」「かつて地球に生きていた」というおもしろさを感じてください。
【放送】
2023/09/20 「ごごカフェ」
午後2時台を聴く
23/09/27まで