「もふもふ」で「にやにや」 オノマトペの世界

23/09/13まで

ごごカフェ

放送日:2023/09/06

#インタビュー#学び

午後2時台を聴く
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擬音語・擬態語のことを「オノマトペ」といいます。例えば、「しっくり」と「ぴったり」の違いがわかりますか? 微妙なニュアンスの違いや、最近の傾向など、オノマトペにまつわるアレコレを明治大学文学部教授の小野正弘さんにドドドーンと解説していただきました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
小野正弘さん(明治大学文学部教授)


<プロフィール>
1958年、岩手県出身。専門は国語史(語彙・文字)。特に力を注いでいるのがオノマトペの研究。オノマトペに関する著書多数。


――オノマトペの研究を始められたきっかけは?

小野:
大学の卒論テーマが、人々、家々、山々など、繰り返すことでさまざまな効果や余韻を残す “繰り返し言葉” でした。本格的にオノマトペの研究にとりかかったのは10数年前なんですが、あるとき、出版社の方から「オノマトペはオノ先生にぜひ!」と言われ、オノマトペの辞典を編集することになったんです(笑)。

――日本語のオノマトペは多いそうですね?

小野:
日本語のオノマトペは、5000前後はあるといわれています。大型の国語辞典に収録される言葉は50万語ほどありますが、その1%がオノマトペということですね。

――日本の歴史をさかのぼると、いつごろから確認されているのですか?

小野:
もっとも古いオノマトペとされるものは、『古事記』の中に出てきます。神々が、アメノヌホコという矛(ほこ)をかき混ぜる動作について「こをろこをろ」という擬態語(擬音語)が用いられているんです。1300年たった現代で、この重々しい様子を体感できるオノマトペってすごいと思いませんか。

――外国から日本を訪れた人は、オノマトペの多さに驚いたそうですね。

小野:
戦国時代に来日したポルトガル人の宣教師は、オノマトペをいくつも記した日本語の辞書を作っています。例えば、馬が走る音を「だくだく」と紹介しています。日本人の懐に飛び込むためには、オノマトペを覚えることが大事だと感じたのでしょうね。

オノマトペクイズ

Q.「わくわく」というオノマトペは、期待する様子を表すときに使われますが、明治以前は違っていたそうです。さて、どんなときに「わくわく」は使われていたでしょうか? 次の3つの中からお選びください。

  • 1.かゆくてかゆくてたまらない様子
  • 2.かわいくて仕方ない様子
  • 3.気持ちが乱れて落ち着かない様子

小野:
正解は()です。昔は気持ちが乱れて不安なときに「わくわく」を使っていたんです。現代の「わくわく」とは反対なんです。

最新 オノマトペ事情

――最近の気になるオノマトペはありますか?

小野:
おもしろいと思ったのは、「もふもふ」ですね。柔らかそうだけど、「ふわふわ」ともちょっと違います。研究者的に解析すると「ふわふわ」は、中まで柔らかい。対して「もふもふ」は、表面は柔らかいけど、そこに手を入れると中に芯がある様子を思い起こさせる。ワンちゃんネコちゃんとか、ぬいぐるみとかですね。

――最近、意味が変わってきているオノマトペもあるそうですね。

小野:
笑う様子を表すオノマトペはたくさんありますが、その中でもちょっと不穏でいやらしい笑いを表す「にやにや」という言葉の使われ方に変化がみられます。例えば「彼氏に誕生日プレゼントをもらって、にやにやしている」と言うのです。昔は「にやにやするな!」といった具合に、ネガティブな笑いをニュアンスとして含んでいたんです。わずかな変化のように思えますが、こういったわずかな変化が大きな変化につながっていくんです。

――まさに言葉は生き物ですね。オノマトペをはじめ、言葉が変わるスピードも速くなっているのですか?

小野:
京都が日本の都だった時代、上方で新たな言葉が生まれると、その言葉が広まるスピードは、1年に1キロほどだったそうです。今は、インフルエンサーによって、瞬時に伝わるようになっていますね。

――オノマトペの魅力は?

小野:
オノマトペはかゆい所に手が届く言葉なんです。例えば「胃がキリキリ痛い」というだけでわかるという、とてもコスパのいい便利な言葉なんです。オノマトペを使うことで、言葉も人生も豊かになると思います。


【放送】
2023/09/06 「ごごカフェ」

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