テロ・紛争解決スペシャリストの永井陽右(ながい・ようすけ)さんは、テロ紛争の解決を目標に、組織からの投降兵の更生支援などを行っています。活動のきっかけや、現在の活動、今後のことなどうかがいました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)
【出演者】
永井陽右さん(テロ・紛争解決スペシャリスト)
<プロフィール>
1991年、神奈川県出身。大学在学中に学生NGO「日本ソマリア青年機構」設立。2017年に法人化し「NPO法人アクセプト・インターナショナル」の代表として紛争地で活動。
――永井さんはどのような活動をされているのですか?
永井:
国同士の戦争の場合は、国際連合とか安保理などが解決に動きますが、テロによる内戦には動いてはくれません。しかし、内戦やテロは起きています。その解決に第三者が動くのは難しいのです。そこで私は、内戦で戦っている兵士に投降を促し、更生させることが大事だと考えました。
――現在、内戦の多発地帯はどこですか?
永井:
イスラム教徒の国での内戦が多く、アフリカのソマリアや中東のイエメンですね。ソマリアは、20年以上イスラム過激派組織のテロが横行しています。少年たちを拉致し、教育という名のもとに兵士に育て、テロ活動をさせているんです。少年たちには更生施設などがあるのですが、成人した青年は投降して捕まっても、社会復帰を支援する施設や教育プログラムがないので、また兵士に戻ってしまうんです。そのような「憎しみの連鎖」を断ち切って、新しい人生を歩んでほしいと考えています。
――具体的にはどのようなことをされているのですか?
永井:
ソマリアの紛争地区では、テロ組織から投降した兵士や、逮捕されて服役している元兵士の復帰支援をやっています。たとえば刑務所にいる元兵士のカウンセリングや基礎教育、職業訓練を行っています。また、現地の軍や治安機関と連携し、社会復帰した彼らを犯罪組織から守っています。
――どのようなスタッフで活動されているのですか?
永井:
ソマリア、イエメンなどの現地のスタッフや、世界中からやってきた仲間、現地の警察にも協力していただいています。
――地道で時間のかかることだと想像します。
永井:
テロ組織の実効支配地域では、そこに住む人たちは彼らを拒否できません。学校も支配されていて、そこで暴力的過激主義をたたき込まれているんです。そういうところでは、和平協定を結ぶことは無理なので、一人一人にアプローチしています。
――活動する上で大事なことは何ですか?
永井:
まずは「受け入れる」ことですね。人を何人も殺している人でも、まずは彼らの話を聞いてみます。更生には最低1年はかかります。
――今は何人くらいの人がいるのですか?
永井:
50名くらいです。日々争いが続いているので、12名が調整待ちです。例えば「きょう投降したいんです!」って電話があっても、いろいろなわなもあるので、投降までの調整が大変なんです。テロ組織からしたら、一番殺したいのは我々なんです。