テロ・紛争を無くすために

23/09/04まで

ごごカフェ

放送日:2023/08/28

#インタビュー#世界情勢#ワールド

午後2時台を聴く
23/09/04まで

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テロ・紛争解決スペシャリストの永井陽右(ながい・ようすけ)さんは、テロ紛争の解決を目標に、組織からの投降兵の更生支援などを行っています。活動のきっかけや、現在の活動、今後のことなどうかがいました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
永井陽右さん(テロ・紛争解決スペシャリスト)


<プロフィール>
1991年、神奈川県出身。大学在学中に学生NGO「日本ソマリア青年機構」設立。2017年に法人化し「NPO法人アクセプト・インターナショナル」の代表として紛争地で活動。


――永井さんはどのような活動をされているのですか?

永井:
国同士の戦争の場合は、国際連合とか安保理などが解決に動きますが、テロによる内戦には動いてはくれません。しかし、内戦やテロは起きています。その解決に第三者が動くのは難しいのです。そこで私は、内戦で戦っている兵士に投降を促し、更生させることが大事だと考えました。

――現在、内戦の多発地帯はどこですか?

永井:
イスラム教徒の国での内戦が多く、アフリカのソマリアや中東のイエメンですね。ソマリアは、20年以上イスラム過激派組織のテロが横行しています。少年たちを拉致し、教育という名のもとに兵士に育て、テロ活動をさせているんです。少年たちには更生施設などがあるのですが、成人した青年は投降して捕まっても、社会復帰を支援する施設や教育プログラムがないので、また兵士に戻ってしまうんです。そのような「憎しみの連鎖」を断ち切って、新しい人生を歩んでほしいと考えています。

――具体的にはどのようなことをされているのですか?

永井:
ソマリアの紛争地区では、テロ組織から投降した兵士や、逮捕されて服役している元兵士の復帰支援をやっています。たとえば刑務所にいる元兵士のカウンセリングや基礎教育、職業訓練を行っています。また、現地の軍や治安機関と連携し、社会復帰した彼らを犯罪組織から守っています。

――どのようなスタッフで活動されているのですか?

永井:
ソマリア、イエメンなどの現地のスタッフや、世界中からやってきた仲間、現地の警察にも協力していただいています。

――地道で時間のかかることだと想像します。

永井:
テロ組織の実効支配地域では、そこに住む人たちは彼らを拒否できません。学校も支配されていて、そこで暴力的過激主義をたたき込まれているんです。そういうところでは、和平協定を結ぶことは無理なので、一人一人にアプローチしています。

――活動する上で大事なことは何ですか?

永井:
まずは「受け入れる」ことですね。人を何人も殺している人でも、まずは彼らの話を聞いてみます。更生には最低1年はかかります。

――今は何人くらいの人がいるのですか?

永井:
50名くらいです。日々争いが続いているので、12名が調整待ちです。例えば「きょう投降したいんです!」って電話があっても、いろいろなわなもあるので、投降までの調整が大変なんです。テロ組織からしたら、一番殺したいのは我々なんです。

若者たちで世の中を変えようぜ!

――永井さんは小さい頃から正義感が強かったのですか?

永井:
どちらかというと悪ガキで、親にも反抗的な荒れた中学生でした。何となく大人とか社会に対しての反発心みたいなのが根っこにあって「大人はいつだって言葉だけじゃないか!」という感じでした。大学1年のときに「日本ソマリア青年機構」をつくり、最初はサッカーの用具を送っていましたが、自分はソマリアの人たちの命を助けるために何ができるのか? と考え、ソマリアのギャングを更生させるというプログラムを思いついたんです。ギャングといっても自分と同世代だと知り、会いにいくことにしたんです。

――でもギャングですよね。同じテーブルにつけるの? 怖くはなかったの?

永井:
最初は首根っこをつかまれて、僕の名刺をペラペラして去っていきましたが、「俺たち若者で世の中を変えようぜ!」とアプローチしました。最初は相手にされませんでしたが、しつこく通ううちに信用してもらえるようになり、2年くらいして、ひとつの大きなギャング組織は解散しました。ギャングというレッテルさえ剥がせば、ただの20歳の若者なんです。無限の可能性を秘めているんです。彼らの存在をまず認めてあげることなんです。

――そういう努力があって、向こうに根付いて活動しているんですね。

永井:
やっぱりギャングの彼らから、一人一人に可能性があるんだということを学びました。

――一人で乗り込んでから、すでに1000人ぐらいの投降兵を、更生プログラムでこっち側に持ってきたのね。気が遠くなるような遠い道のりですね。

永井:
投降したけれど、スパイだったというケースもありました。また、プログラムを終わって社会に戻っても、やはりうまくいかずに、自爆テロで亡くなった人もいました。

――いま私たちにできることはありますか?

永井:
例えば寄付というカタチで参加していただくのも、テロや紛争のない世界に向けた大きな1歩だと思います。「人間なんて殺し合いの歴史だ!」なんて言うのは簡単ですけど、それでも、「世界の平和をこの日本から実現してやる!」という意志を持って、胸張ってみんなで歩んでいけたらステキだと思っています。


【放送】
2023/08/28 「ごごカフェ」

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