アーチェリー山本博 「中年の星」を支えた言葉

23/08/01まで
ごごカフェ
放送日:2023/07/25
#インタビュー#ライフスタイル#スポーツ#オリンピック
午後2時台を聴く
23/08/01まで
オリンピック5大会に出場し、銀と銅、2つのメダルを獲得した山本博さん。還暦を迎えた今も、肉体や気持ちの衰えと向き合いながら、現役選手として世界を目指しています。自分を律し、諦めずに現役の道を歩み続ける山本さんを支えた言葉についてうかがいました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)
【出演者】
山本博さん(アーチェリー・五輪メダリスト)
<プロフィール>
1962年、神奈川県出身。中学1年からアーチェリーを始め、中学3年で全日本アーチェリー選手権大会に出場。高校でインターハイ3連覇、大学でインカレ4連覇を果たす。1984年、大学在学中にロサンゼルスオリンピックで銅メダルを獲得。その後、ソウル、バルセロナ、アトランタとオリンピックに出場。2004年、アテネ五輪で銀メダルを獲得。現在、日本体育大学スポーツマネジメント学部教授。東京都体育協会会長など数々の公職も兼務しながら、現役選手として活躍中。
――中学1年生で、初めて弓を引いたときのことは覚えていますか?
山本:
当時は、1年生は球拾いからはじめるとか、根性論のスポーツが多かったんです。でも、新興のスポーツだったアーチェリーは、競技する人を増やしたかったので、中学のアーチェリー部も、みんなフレンドリーで、誰でも打たせてくれたんです。矢がうまく飛んだかといえば、ちゃんと飛んだ感じですね(笑)。
山本博の乗り越える言葉
「勝利は自分を信じる事から始まる」
山本:
僕自身、何度も言葉に救われてきました。自分を信じられなくて勝利があるはずがありません。自分を信じられるだけの努力をすることが大切なんです。いつも自分に言い聞かせています。
――まぐれはないですか?
山本:
まぐれはないですね。運に頼って試合はしたくないんですよ。
――還暦の現役選手として若い世代に交じって試合に出場されていますが、7月の連休中には、大会が2つもあったそうですね。
山本:
日曜日に山梨で強化試合があって、祝日の月曜日は東京都の強化試合をハシゴしましたが、その前の土曜日に富士山に登ってきました。富士登山は私のゼミの恒例行事なんです。努力に努力を重ねても、日本一を取れないことはたくさんあるけど、この日本一の高さは、努力を重ねれば必ず得られる日本一なので、一回は頂上に立ってみろと言っているんです。ゼミ生の半分くらいは参加してくれます。
――大会前に富士登山をしちゃって大丈夫なんですか?
山本:
学生と温泉に入って、翌日、私は山梨の試合に向かいました。その試合が終わって、東京の大会に出場しました。 富士山、試合、試合の3連休でした。
「限界に追い込めば限界が広がる」
山本:
学生にも言っているんですが、能力を高めて、心も体も限界に追い込まないと広がりません。ただし、限界を超えてしまうと心も体も崩壊するから要注意です。それにはいいコーチや家族が必要なんです。
――年間、どのくらいの数、試合に出場していらっしゃるんですか?
山本:
去年は32試合、今年も30試合のペースですね。2009年以来、世界の大会に出てないので、全日本のチームに入るために、いっぱい試合をしています。試合数でいうと中学高校のペースに戻っていますね。今は辛くても幸せですね。
――60歳ともなると体力も体の調子も、若いころと同じようにはいきませんよね。アーチェリー選手は、特に目が大事ですよね。
山本:
右目だけ老眼のコンタクトレンズを入れています。人は必ず衰えていくもので、それは認めざるを得ません。でも、工夫はいくらでもできるんです。今の体、今の自分でできる最善の策を追い求めています。老眼が気になったころから、“風が見える”ようになってきたんです。目が老いたことを機に、感覚が研ぎすまされ、この力を授かったのかもしれませんね。
「努力は報われない。だから全力で努力する」
山本:
努力は報われないことの方が、実はとっても多いんです。 報われるかどうかが問題ではありません。努力することにどれだけ心を燃やし、一生懸命になれるか、全力で努力する気持ちの強さにこそ、価値があると思っています。
――自分に厳しく、ウソをつけないということですよね? どうしたら、山本さんのように心も体も元気でいられるのですか?
山本:
不摂生をしないこと。愚痴をいわないこと。くよくよするより前に進むこと。愚痴をいっても解決にはなりません。そこには知恵がありません。元となっている問題点が解決されないかぎり何も変わらないんです。
――これからどこを目指しますか?
山本:
この年齢でも大会に出て多くの選手と競うあうコトができていることがうれしいです。でも、まだまだオリンピックの表彰台に立てる予感がするんですよ。やはり、オリンピックの舞台に戻れたらいいですね。パリの出場はもうないんですが、その次のロサンゼルス大会に出られたらいいですね。
――山本さんの目標は?
山本:
人生を最後まで楽しく、後悔のないように無駄なく生きていきたいですね。
【放送】
2023/07/25 「ごごカフェ」
午後2時台を聴く
23/08/01まで