午後2時台を聴く
23/07/24まで
今年は、劇作家で詩人の寺山修司の没後40年。今回は俳優の三上博史さんをお迎えして、寺山さんとの思い出や、作品についてうかがいました。(聞き手:武内陶子、吾妻謙パーソナリティー)
寺山修司・・・1935年、青森県出身。1967年、劇団「天井桟敷」を結成。舞台、映画、著作などで世界的に評価される。1983年5月4日死去(47歳)
【出演者】
三上博史さん(俳優)
<プロフィール>
東京都生まれ、神奈川県横浜市育ち。高校在学中に寺山修司の映画『草迷宮』で、俳優としてデビュー。その後、数々の映画やドラマ、舞台に出演。朗読ライブにも熱心に取り組んでいる。
武内:
ラジオは、お好きですか?
三上:
ラジオは、素でいられるから好きですよ。
武内:
高校生で、デビューということで、俳優歴は長いですね。
三上:
時間は長いんですが、僕の場合、「今年はやらなーい!」って、オンとオフをはっきりさせていたので、休んでいた時期もあるんです。
吾妻:
ずっと、出ていらしたイメージですけど。
三上:
これまでに、結構いろんな国に住んでいたんですよ。
武内:
どういうことですか?
三上:
旅が好きで、気に入った国があったら、そこにアパートを借りて住んでいたんです。パリに7年くらい、アメリカ西海岸にも7年、ロンドンにも数年いましたね。
吾妻:
日本での撮影はいつされていたんですか?
三上:
海外にアパートを借りたまま、ドラマなら3、4か月、映画なら2か月くらいの期間、日本に帰って来て、また海外に戻るという生活をしていたんです。好き勝手やっていましたが、そうするのにも飽きちゃって、今はどこもいっしょかなと思っています。
寺山修司との出会い
武内:
寺山さんに見いだされてデビューされたんですよね?
三上:
当時、寺山さんといえば、競馬中継に出ているおじさんという印象しかなかったんですが、友達に誘われて高校1年生の時に『草迷宮』のオーディションに行ったんです。順番を待っていたら、突然後ろから肩をたたかれ、寺山さんから「君の番号はいくつ?」と聞かれたんですよ。
武内:
ひとめぼれされたんですね! 『草迷宮』を見たら、そこに、高校生の紅顔の美少年の三上さんがいらっしゃいました。
三上:
日本では、ボカシが入ってますけど、フランスでは、すっぽんぽんで上映されました(笑)。
吾妻:
デビュー作で、「きみ、裸になって!」って言われてどうでしたか?
三上:
演技のことなんか、何もわかっていなかったので、言われるがままに、裸にもなりました。思春期だったので、めちゃくちゃ恥ずかしかったですよ。
武内:
私の高校の先輩、伊丹十三さんも出てました。伊丹さんの松山弁も懐かしかったです。
吾妻:
伊丹さんは一人三役でしたね。
武内:
寺山さんといえば、実験的な演劇をずっとされてきましたよね。
三上:
アングラとしては、僕が最後の世代かもしれないですね。そこからは、退屈な時間になるんですけど(笑)。
武内:
『草迷宮』を拝見して、とにかく色とか、動きとか、場のチカラとかを束ねて、1本の作品になさったんだなと思いました。
三上:
想像力が爆発していて圧倒されますよね。
武内:
亡くなられたあとも、寺山さんの作品は多くの人に愛されていますよね。
三上:
毎年5月4日の「修司忌」に、青森県三沢市の寺山修司記念館で追悼ライブをやっています。もう20年近くやっているんですけど、来てくださる方の年齢層は、上がっていかないんです。
吾妻:
常に、若い人が新しく参加されるということですか?
三上:
若い世代へとファンがつながっていくんですよ。
武内:
三上さんが、寺山さんとご一緒できたのは、限られた期間だったんですよね。
三上:
15歳で出会って、映画を1本やって、20歳の時に寺山さんが、亡くなるんですけど、その前の年に、1本映画に出させてもらったのが最後なんです。そして、僕自身が忙しくなるのはそのあとなんです。
武内:
トレンディードラマですね。
吾妻:
寺山作品とトレンディードラマは、対局に位置していると思うのですが。
三上:
寺山さんが、「こういうテリトリーだけじゃなく、いろいろなところに出ていきなさい」とおっしゃってくれたこともありますし、あとは、僕の母親が売れない女優だったんですよ。
武内:
えっ!三上さんのお母様が?
三上:
僕が子どもの頃にはやめていて、僕が20歳のときに死んでいくんですけど、彼女は、僕がアングラでやっていくことが心配だったんですね。そして「性格俳優にはならないでね」と言って死んでいったんです。「いい役者」ではなく、いろいろな人に名前と顔を知ってもらえる役者になれということだったのかなと思い、いろいろなことにチャレンジしました。
武内:
三上さんは、役に入り込むタイプですよね。
三上:
僕の場合、まず、その役が入ってくる体を用意するんです。1つ仕事が決まると、例えば2か月先がクランクインだとすると、2か月前から、自分の趣味を1つずつ捨てていくんです。例えば、映画も見なくなるし、音楽も聴かなくなくなるし、好きなものを排除しないと役が入らないじゃないですか。だから、僕が役に没入するというよりは、役が入ってくるように、僕を空けておく作業に入るんです。よく「役づくり」という言葉を使われると思うんですけど、僕、大嫌いなんです。つくれるもんじゃないって思っているんですよ。だから自分を捨てる作業なんですよ。
寺山ワールドを朗読で再現
武内:
きょうは、三上さんに、寺山作品を朗読していただきます。ピアノは、エミ・エレオノーラさんです。よろしくお願いします。
- ※ 三上博史さんの朗読ライブは「聴き逃し」で1週間お楽しみいただけます。
武内:
三上さんのパフォーマンスで、寺山さんの言葉の破片が降って来て、ヒリヒリする感じでした。エミさんのピアノもすごかったです。
三上:
毎年、青森でやっているんで、ぜひ青森に来てください。また、今年からは、いろいろなところで、みなさんに届けられたらなぁと画策しています。
吾妻:
毎年、寺山さんの言葉を表現し続けていて、寺山修司の伝道師の一人ですね。
三上:
これも、一つの使命ですね。
武内:
今も、寺山さんといっしょに、生きていらっしゃるんだなって感じました。
【放送】
2023/07/17 「ごごカフェ」
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