心身の不調 天気のせいかも

23/05/18まで

ごごカフェ

放送日:2023/05/11

#医療・健康#気象

午後2時台を聴く
23/05/18まで

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気象変化によって引き起こされる「気象病」。症状は、頭痛、けん怠感、肩こり、めまいなど多岐にわたり、時にはメンタルに支障をきたすこともあるそうです。気象病のことを理解して、適切に対処することで、毎日が暮らしやすくなるかもしれません。医師の久手堅司(くでけん つかさ)さんにお話をうかがいました。(聞き手:武内陶子パーソナリティー)

【出演者】
久手堅司さん(医師)


<プロフィール>
1972年、沖縄県出身。1996年、北九州大学法学部卒業。2003年、東邦大学医学部卒業。2013年、内科・神経内科クリニックを開設。気象病外来では5000人以上の診察を行っている。気圧予報で体調管理をするアプリの監修も務めている。


久手堅: 気象病は、気圧や気温、湿度などの気象変化によって引き起こされる心身の不調のことです。正式な病名ではないため、医師からも理解されにくく「気にしすぎ」などと言われてしまい、なかなか周囲に理解してもらえないこともあるんです。

――気象病の専門外来をつくろうと思ったきっかけは?

久手堅: 頭痛で悩んでいる患者さんが、天気と関係していることが多く、そんな人たちのために外来をつくりました。コロナ禍で生活習慣が乱れたことなどもあり、ここ1~2年、診察を受けに来られる方が増えています。

寒暖差、湿度、気圧

久手堅: 気象病の3つの原因について以下に解説します。
  • 寒暖差・・・7℃以上の寒暖差があると体温調整に使うエネルギー消費が大きくなり、不調が出やすくなります。また、自律神経は環境に合わせて体温を調整していますが、気温の差が大きくなると自律神経が過剰に働き、それによって疲労がたまりやすくなります。
  • 湿度・・・湿度は気温との関係で適切な範囲にないと体温調整するのに自律神経に負担がかかり不調につながります。
  • 気圧・・・患者さんの8割くらいの方が気圧の変化で体調が悪くなっています。人間の体は、外からの気圧に負けないように、体の内側から同じ圧力で押し返すことでバランスを保っています。気圧の変化が大きくなるとそのバランスが崩れるため体調を崩しやすくなります。特に気圧の上昇時よりも低下時に多く見られます。雨の降る前に体調が悪くなる人が多いのはそのためなんです。
    気圧の変化には、特に耳の奥にある「内耳」が反応しています。気圧の変化に敏感な人ほど、ちょっとした気圧の変化でも、脳に異常を知らせる情報を過剰に送ってしまい、自律神経が乱れ、頭痛やめまい、関節の痛みなどの症状を引き起こすといわれています。このように気象変化に合わせて自律神経が働いているため、気象病と自律神経は切っても切れない関係があるのです。

――女性のほうが気圧の変化に敏感なイメージですが、やはり女性の患者さんは多いですか?

久手堅: 7割弱くらいが女性ですが、最近では男性の方も増えています。また、コロナ禍で生活習慣の乱れもあり、20代~50代と年齢層が広がっている印象があります。

気象病はこれからがシーズン?

久手堅: 梅雨入り前、5月の大型連休明けの今の時期から7月の梅雨の終わりごろまで、そして9月~10月の台風シーズンがピークです。台風シーズンのほうが気圧の変化が激しいので、つらいと思います。しかし、今後、地球環境の変化によっては、梅雨時期・台風シーズン関係なく影響を受けやすくなるのではないかと思っています。

【気象病チェック】

□天候が悪いときに体調が悪い

□雨が降る前や天候が悪化する前に何となく天気の変化が予測できる

久手堅: 以上の2つのどちらかに当てはまる人のおよそ8割は気象病の可能性があります。これ以外も以下の項目に当てはまれば気象病の症状といえるでしょう。

□片頭痛などの頭痛持ちである

□肩こり、首こりがある。または、首肩の持病や不調がある

□耳鳴りやめまいが起こることが多い

□けん怠感が強い。起床時や日中もだるい

□低血圧気味である。血圧が低くなると体調不良が出る

  • 気になる症状がある場合は病院で専門医の診断を受けてください。
久手堅: 医学的にまだ証明されていないので、断定することは難しいのですが、姿勢が良くなると気象病も改善することが多いですね。骨格のゆがみが改善すると、自律神経の乱れが改善されて健康状態が良くなるため、気象変化のストレスに耐えられる体になると考えられています。

気象病のセルフケア

【耳のマッサージ】

  • 両耳を持って水平に伸ばして10秒キープ。さらに斜めに引っ張り10秒キープ。
  • 耳たぶを持って、前に5回・後ろに5回ゆっくり大きく回す
  • 耳の周りを指でもむ
久手堅: 耳をマッサージすると血行がよくなり自律神経が整います。気がついた時に軽くやってみましょう。

【タオルマッサージ】

  • タオルを首の後ろにかけて、そのまま耳の下くらいにタオルをあてて顔は上向きに。
  • タオルを斜め前に引っ張り、頭は後ろに倒して20秒キープ。
  • 次は下を向いて20秒キープ。終わったら顔を前に戻す。
久手堅: 1時間に1回、背骨を伸ばしてあげるだけでもストレートネック対策になります。

――食事についてはどうですか?

久手堅: ヨーグルトがオススメです。脳と腸は相関関係にあることがわかっています。脳の状態が悪いと腸へも悪影響を与え、腸の状態が悪いと脳へも悪影響を与えます。そこで腸内環境を整えるためのヨーグルトなのです。そこにセロトニンを増やすバナナを加えて、バナナヨーグルトにするとよりいいでしょう。「幸せホルモン」といわれるセロトニンが増えると、心の安定、睡眠改善につながります。

――寒暖差の対策も教えてください。

久手堅: 質のいい睡眠のために、ぬるめのお湯に首まで10分くらい入るのをオススメします。

――リモートワークなどで体を動かすことが減ってしまっている方もいますよね?

久手堅: 歩く量を少し増やすだけでも、股関節を動かす機会が増え、脳に送られる酸素量も増えます。自律神経が整い、心もリフレッシュします。無理のない範囲で、軽く汗をかくような運動を習慣づけてください。

――気象病でつらそうにしている人に対してできることは?

久手堅: まずは「気象病」のコトを知って理解してあげましょう。最近では産業医の紹介状を持って来院される方も多くなってきました。会社や社会全体が症状のつらさを理解できれば、シフトの調整や梅雨の時期の休暇など、対応できるようになると思っています。

――ありがとうございました。


【放送】
2023/05/11 「ごごカフェ」

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