14時台を聴く
21/10/22まで
15時台を聴く
21/10/22まで
新型コロナウイルスの影響で、会食の自粛が呼びかけられています。ワイワイできないのは寂しいですが、そこを逆手に取って、ひとりの外食「孤食」を楽しみましょう。今回は、漫画家の久住昌之さんに、明るく楽しい孤食の魅力についてうかがいました。(聴き手:武内陶子)
【出演者】
久住昌之さん(漫画家)
<プロフィール>
1958年、東京都出身。
1981年に、泉晴紀さんとのユニット「泉昌之」名義でマンガ家デビュー。その後、谷口ジローさんとの共作「孤独のグルメ」をはじめ、「花のズボラ飯」「昼のセント酒」「野武士のグルメ」など多くの作品を発表。ミュージシャン、エッセイストとしても活躍中。
空腹の人はおもしろい
――えっ! そうなんですか(笑)。「孤独のグルメ」はどのようなきっかけで企画されたのですか。
久住: |
バブル期にグルメブームがありましたよね。僕の漫画は、そういったグルメブームへのアンチテーゼ、担当編集者の反骨精神がはじまりなんです。 |
――当時、久住さんはそういったグルメブームをどう感じていましたか。
久住: |
全く興味なかったですね。食材がどうとか、いいワインがそろっているとか、どうでもよかったです。それよりも、店構えやお店の成り立ち、店員さんやお客さんに興味がありました。 |
――この作品を作るうえで、大切にしたことは何ですか。
久住: |
まずは料理のおいしさばかりをクローズアップしないことです。ひとりでごはんを食べに行った時、自分の中で色々悩み考えますよね。おなかが空くってコトはなんか笑っちゃうんですよ。その面白さを表現しようと思いました。 |
――久住さんはお酒が大好きなのに、なぜ、漫画の主人公を下戸に設定にしたのですか。
久住: |
主人公は好き嫌いなく何でも食べる人なんですが、ヒーローには何か弱点が必要で、弱点があるとドラマが面白くなるんですよ。 |
お店は独立国家
――久住さんは、いつごろから孤食をはじめられたのですか。
久住: |
美術学校時代に初めて孤食をしました。それが孤食の原点ですね。僕は、会社勤めをしたことがないので、孤食は日常なんです。地方取材時も、いい感じのお店を見つけたら、ふらっと立ち寄ります。 |
――迷いもなく、初めてのお店に入ることができますか。
久住: |
今でもお店選びは悩みます。常連さん以外お断り系だったらどうしようと、入るときはドキドキします。漫画の主人公と一緒ですね(笑)。 |
――どうやってお店選びをしているのですか。
久住: |
グルメサイトやガイドなどは一切見ません。レコードをジャケットだけを見て選ぶ「ジャケ買い」と同じ、店構えで選びます。レコードも聴き込むとその良さがわかるのといっしょで、「この店、失敗したかな」と思っても、謙虚な気持ちでリラックスしていると、そのお店の魅力が見えてくるんですよ。自分の勘を働かせ、お店選びをすることを「面食い(じゃけぐい)」と呼んで楽しんでいます。 |
――どんな店がお好きですか。
久住: |
地味だけど、同じ場所で長くやっている店。食べている時よりも、帰り道に「おいしかったかも」って思う、そのくらいの店がいいと思っています。一口食べて「スゴイ!」というテレビの食レポとかが好きそうな店には興味がありませんね。 |
――勘だけでお店を選ぶと、合わないお店もあったのでは。
久住: |
そりゃそうですが、それをしないとお店選びの勘は鍛えられません。お店というのは「一つの国」だと思っています。独立国家なのだからその国の法律(ルール)に従うべきなんです。 |
――お店のルールはどうやって知るのですか。
久住: |
重要なのがメニューです。メニューはその国の憲法であり歴史書です。メニューの古さで店の歴史がわかりますし、品数や種類によって「元々中華だったのに、お客さんの要望で洋食も始めたんだろうなぁ」とか「初代の頑固おやじから2代目の息子になって、カジュアルになったんだろうなぁ」とか店の成り立ちを考えてしまいます。 |
空腹は最大の調味料
久住: |
極限までお腹が空いたときに食べる物は大抵うまいですよね。ドラマで主人公を演じる松重豊さんも、前日からご飯をセーブし、最大の空腹状態で食べるシーンに臨みます。だからこそ本当の「うまい!」という表現が伝わるのだと思います。空腹は最大の調味料なんです。 |
――いまコロナ禍で、飲食店も厳しかったですよね。
久住: |
たくさんの知っているお店が閉じました。長年店を続けてきた知り合いが「引き際くらい、自分で決めさせてほしい」とおっしゃっていました。 |
――今こそ孤食、黙食で飲食店を応援したいですね。
久住: |
昔から知っているお店に行ってあげてください。こんな世の中だからこそ、そのお店について、初めて知ることがあるかもしれません。僕が45年通うラーメン店があります。ある日、客のおばあさんが帰ったあとに店主が「あの方、週3でかれこれ60年通っていらっしゃいますよ」と教えてくれました。“僕より15年も長く、しかも週3で!”通いなれたお店でも、こんな知らないエピソードがあります。ぜひ、あなたの近くのお店へ行ってみましょう。 |
【放送】
2021/10/15 「武内陶子のごごカフェ」
14時台を聴く
21/10/22まで
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