14時台を聴く
21/09/21まで
新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養している人の数は、2021年9月8日時点で10万3千人あまりと、希望者がすぐには入院できない厳しい状況が続いています。きょうにも、自分や家族が感染し、自宅療養せざるを得ない状況になるかわからない中で、感染したらどう対処したらいいのか、事前に準備しておくべきことは何か、感染しても慌てずに行動するためのヒントを医学博士の水野泰孝さんにうかがいました。(聴き手:武内陶子アンカー)
【出演者】
水野泰孝さん(医学博士)
<プロフィール>
東京都出身。東京慈恵会医科大学大学院修了。タイ王国マヒドン大学熱帯医学部留学、在ベトナム日本大使館医務官、東京医科大学病院感染制御部長・感染症科診療科長などを歴任。日本感染症学会認定感染症専門医・指導医、日本小児科学会認定小児科専門医・指導医。専門は熱帯感染症・渡航関連疾患。感染症の専門家として各種メディアで活躍中。
――9月に入り、新型コロナウイルス感染症の自宅療養者が増加しています。自宅療養者増加の背景にあるものはなんでしょうか。
水野: |
感染力の強いデルタ株に置き換わったことにより、感染者が急増し、重症者だけではなく中等症者も増加したので、入院病床が充足されていない状況が続いていることが考えられます。医療が追いついていないのです。 |
自宅療養 その時どうする
――ふだんから感染対策をしっかりとっていたはずなのに「なぜ自分が」と思い当たる節がないという人もいますよね。新型コロナウイルスに感染した場合、どのような症状が現れるのですか。風邪やインフルエンザとの違いを教えてください。
水野: |
初期症状は見分けがつけにくいです。風邪やインフルエンザとの違いはウイルスの潜伏期間です。インフルエンザや風邪の場合、潜伏期間は1~3日に対し、新型コロナの場合は5~7日です。さらに、新型コロナの場合、味覚や嗅覚に異常があることが多いと言われています。最近のデルタ株は、のどの痛みが目立っていますね。 |
――多くは発熱から始まるのですね。当初は、37.5度以上の発熱が4日以上続く場合といわれていましたよね。
水野: |
37.5度以上の発熱があり、息苦しいなどの症状が出ている場合は、かかりつけ医か、自治体が開設している相談センターに電話で連絡しましょう。事前連絡なしで病院に行くのはNGです。受診前には熱を測ってから行ってください。発熱がある場合、自分は感染している可能性があるという前提で行動してください。 |
――感染してから症状が出るまでの期間、人にうつす可能性がある期間はどのくらいですか。
水野: |
発熱や咳などの症状が出た日の2日前から他人にうつす可能性があります。この2日前からというのが、従来の感染症とは大きく違い、感染源がつかまりにくく、コントロールを難しくさせている要因です。ちなみに症状が出てから7~10日で感染力は低下します。 ※濃厚接触者とは陽性者の感染可能期間に、必要な感染対策をせずに1m程度以内で、15分以上接触した人。同居家族。濃厚接触者は、検査結果が陰性でも14日間の自宅待機が必要。濃厚接触者に該当するかどうか、最終的には保健所が判断。 |
――病院で診察を受け、PCR検査を受けることになるわけですよね。その行き帰りに、公共交通機関やタクシーなどを使っていいものですか。
――PCR検査の結果を受けて、以後のやりとりは保健所にうつるわけですよね。自宅療養、宿泊療養、入院の線引きは、いつ誰がどんな基準で判断しているのですか。
水野: |
医療機関で診断され届出が出された時点から保健所の管轄となります。毎日の健康観察は主に保健師が行うと聞いていますが、やはり医師でないと重症化の判断などは難しいと思います。 |
――パルスオキシメーターが手元にない場合、自分で状態を判断するのはとても難しいですよね。こうなったら即対応が必要だと判断する方法はありますか。
水野: |
1人ひとり状況が違うので、パルスオキシメーターの数字だけで判断できるものでもありません。教科書通りにいかない例も多いです。以下の症状をチェックしてください。 |
唇が紫色になっている/息が荒くなった/急に息苦しくなった/少し動くと息苦しい/胸の痛みがある/座らないと息ができない/肩で息をしている/突然ゼーゼーしだした/脈のリズムが乱れる感じがする。など
顔色が明らかに悪い/いつもと様子がおかしい/反応が弱くぼんやりしている/返事がなく、もうろうとしている。など
――療養中の食事で気を付けるべき点とは。
水野: |
脱水症状にならないように水分の多いものをとってください。食べるのがつらい場合は、ゼリー状のものでも構いません。 |
――自宅療養となった時のために、今から準備しておくべきことは。
水野: |
非常用食材など災害時と同じようなものを備えておいてください。また、動けなくなったときに知人や親族などに連絡を取れるようにしておいてください。誰かの助けを頼ること、支援体制を構築しておくことは大切だと思います。 |
- ◇ 東京都の自宅療養者向けハンドブック
- 1)部屋を分ける(部屋を分けられない場合は2m、カーテンや仕切りで区切る)
- 2)感染者の世話をする人は、できるだけ限られた人に。
- 3)感染者、世話をする人はお互いマスクをつける。
- 4)こまめに手洗い。
- 5)日中は、できる限り換気をする(1時間に1回、窓を5~10分窓をあける)
- 6)手がよくふれる共用部分を掃除、消毒。
- 7)汚れたリネン、衣服は熱湯消毒してから洗濯。タオルなど共用はなし。
- 8)ゴミは密封して捨てる。
- ※ 東京都のHPからダウンロード可能
WITHコロナの時代をどう生きるか
――ワクチン接種の効果はいつごろ、どのように見えてくるのでしょうか。
水野: |
実際に高齢者での重症者数、感染者数の減少がその効果であると理解しています。ワクチン接種のさらなる浸透、治療薬の開発・流通によってこの情勢はリアルタイムに変化すると考えられるので、改善するのがいつなのかはわかりません。 |
――ワクチン接種したからといって安心してはいけないんですよね。
水野: |
適切な対策を取っていなければ感染はします。ただ、ワクチンにより免疫ができていれば、重症化は避けられると思います。ウイルスの増殖も抑えられるため周囲への感染も低下させると考えられます。 |
――これから日常生活の中で気を付けるべきポイントは。
水野: |
いざ感染したという時に慌てずに行動できるように、きちんと知っておくことも大事です。感染対策は「やっている感」ではダメです。識者からの正しい対策を学び、なぜ感染が拡がるのかをよく理解したうえで効率よく行ってください。特に最近のデルタ株の感染対策に対して、ウレタンマスクはオススメできません。家族など近しい人と食事にでかけても、隣でマスクなしで大きな声で話している集団がいた場合は、できるだけ近寄らないなど、周辺環境にも気をつけなければならないと考えています。 |
【放送】
2021/09/14 「武内陶子のごごカフェ」
14時台を聴く
21/09/21まで