川上ミネさん/語りかけるピアノ

21/11/19まで

武内陶子のごごカフェ

放送日:2021/11/12

#インタビュー#音楽#クラシック#ワールド

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ピアニストで作曲家の川上ミネさんは、ドイツ、スペイン、キューバへと移り住み、各地で出会った音楽や人々に影響を受け、心に語りかける音楽を生み出し続けています。川上さんに影響を与えた世界各地の音楽を紹介いただくとともに、既存の枠にとらわれない唯一無二の音楽がどのように誕生したのかお話しをうかがいました。(聴き手:武内陶子アンカー)

【出演者】
川上ミネさん(ピアニスト・作曲家)


<プロフィール>
1969年、愛知県出身。3歳でピアノをはじめ、高校卒業後にドイツに渡り、ミュンヘン国立音楽大学ピアノ科を卒業。その後、スペイン・マドリッド王立音楽大学院を卒業。在学中にキューバ人のジャズピアニストの演奏に衝撃を受けキューバへ移住。音楽学校で教べんをとりながらラテンジャズや作曲を学ぶ。その後、中南米やアジア各地を放浪し2000年に帰国。現在は、スペインと京都に拠点を置き、演奏、作曲、音楽制作の活動をしている。

巡礼路の終着地で作曲活動

――スペインのお住まいが、世界遺産にもなっている「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」ですが、どんな街なのですか。

川上: 全長およそ1500キロにも及ぶ、サンティアゴ巡礼路の終着地です。巡礼路の終着地なので、やり遂げた人たちの喜びに満ちあふれている感じがします。

――ここに住むことで、音楽制作にも影響ありましたか。

川上: 不思議な静寂感があり、自分にとっては真っ白なキャンパスのようなところです。自分の周りに浮遊しているミジンコみたいな小さな音もキャッチしやすく、根気強く音と向き合えますね。ここに住めたことは、神さまにもらったご褒美だと感じています。

――コロナ禍では、どのように過ごされていましたか。

川上: 感染が拡大し始めてから1年半はスペインに帰れませんでした。日本での仕事をメインに番組関連の楽曲制作をしていました。

作曲は「お福分け」

「やまとの季節 二十四節気~立冬~」(川上ミネ)

川上: 現在、NHK BS4Kで放送されている「やまとの季節」の音楽です。奈良在住の映像作家、保山耕一(ほざん・こういち)さんが撮影した、奈良県各地の自然美を満喫できる映像に、オリジナルの曲をつけました。この楽曲はシリーズになっていて「二十四節気」「七十二候」のバージョンがあります。

「やまとの季節」詳細はこちら

――映像を見ながら曲の構想を膨らませるのですか。ピアノだけで細かい季節のうつろいを表現するのは大変ですよね。

川上: 以前は映像を見ながら作曲していましたが、最近は音楽が先なんです。保山さんがそれを聴いて映像を合わせています。画像と音楽でセッションしながら作っている感じですね。

――作曲に欠かせないのがスケッチブックなんですって。

川上: 日頃気になったものを、絵や言葉でスケッチブックにメモしています。これは自分にとっての「楽譜」なんです。

――音符のない楽譜、壮大な絵日記みたいですね。

川上: 世の中は、美しいものにあふれています。降るような星空、美しい雲などは、時間、香り、自分自身の状態など、いろいろな次元が合わさったことで現れるものです。人生の中で体験したもの、自分の中に湧きあがった感情、感動など、忘れたくないからイラストや文章にしています。

――その手法は昔からですか。

川上: ピアノを始めた時から変わっていません。美しいものを再現するために音を探す作業は、いってみれば「お福分け」ですね。世界各地の美しい景色を見て、いろいろ体験し、人と出会い、それを独り占めするのはもったいないので、自分が得た宝物を、皆さんに「お福分け」している気分です。

旅するピアニスト

――高校を卒業後は、ドイツ、スペイン、キューバに住み、さらに世界各地も放浪されていますね。引っ越しの多い人生ですね。

川上: 一か所にとどまることができない性格なんです。移動しやすいように荷物は少なめで、先のことはかっちり決めすぎない、どんな事態になってもうろたえないようにはなりましたね。

――多くの人は、安定や落ち着いた環境を求めたがりますよね。川上さんは何を求めているの。

川上: ピンチを求めに行っているようなところありますね(笑)。水や電気がなく、連絡手段もない、そんなところに身を置くと想像力が研ぎ澄まされるんです。

――不便だと不安になりませんか。

川上: キューバでは、ペダルがなかったり鍵盤が欠けていたり、まともなピアノは少なかったです。しかし、心ふるわせる音は、モノが豊かにあるかどうかとは別の次元にあることに気づきました。ピンチの中から生み出される音楽は、まさに「音を楽しむ」そのものなんです。

川上ミネさんに影響を与えた音楽

「ピアノソナタ第11番 イ長調 K.331」(ヴァルター・ギーゼキング)

川上: ピアノが好きになったきっかけになった曲です。このような透き通ったピアノの音を弾きたくて、ギーゼキング本人に教えてもらいにドイツへ行きたいと父にお願いしました。ギーゼキング本人はとっくに亡くなっていましたが、その奏法を引き継いでいるピアノ教授の元で学ぶため、高校を卒業してドイツのミュンヘン国立音楽大学へ入学しました。

「ナンディ」(チューチョ・バルデス)

川上: ピアノで人は自由になれるということを教えてもらったキューバ人の演奏です。爆発的エネルギーを持ったその国を知りたくてキューバへ引っ越しました。ラテン音楽は底抜けに明るいイメージがあるかもしれませんが、キューバという国はつらい歴史があり、人々の暮らしも決して豊かではないのに音楽は正反対でした。

「教皇マルチェルスのミサ曲:キリエ」(ハリー・クリストファーズ、ザ・シックスティーン)

川上: おそらく人生で最も聴いた曲ではないでしょうか。目には見えない地上で最も美しい草花が一面に風に揺れている風景を感じることができます。つらい時、悲しいときにこれを聴くと心の中がきれいになっていく気がします。

「ドンガイフェロス・デ・モルマルタンのロマンス」(ルアル・ナ・ルブレ)

川上: スペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼道の伝説を歌った曲です。スペインというとフラメンコギターのイメージあると思いますが、北西スペインの音楽は、ケルトやポルトガルのファドのような懐かしい響きがあります。

「エアウア」(カピウ&アパッポ)

川上: 北海道の阿寒湖に暮らすアイヌの姉妹の歌です。“本当の音楽”を探し求めてアマゾンにもアンデス山脈にも世界中を歩いたのに、実はこんな近くにあったと衝撃をうけました。客観的に情景を表現するのではなく、鳥や木々、そのものになって奏でています。

100年ピアノの声を聞く

川上: 「やまとの季節」のオリジナル曲は、100年ピアノで演奏しています。奈良県は、グランドピアノの保有率が高い県で、製造されてから100年近くたったグランドピアノが数多くあり、修復、復活させています。

――100年ピアノの魅力とは。

川上: 古いピアノには、記憶が刻みこまれています。学校に置かれていたピアノには、子どもたちがピアノの周りで歌い遊んだ記憶がしみこんでいて、弾くとその記憶が聞こえてくるんです。

――今後の夢を教えてください。

川上: 今住んでいるサンティアゴ巡礼の道、シルクロード、四国のお遍路など、世界のいろいろな道を音というカタチでつなげていきたいですね。

今回ご紹介した楽曲は「聴き逃し」でお楽しみください。


【放送】
2021/11/12 「武内陶子のごごカフェ」

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