山極寿一さん/ゴリラに学ぶコミュニケーション

21/09/15まで

武内陶子のごごカフェ

放送日:2021/09/08

#どうぶつ#コミュニケーション#コロナウイルス

14時台を聴く
21/09/15まで

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21/09/15まで

コロナ禍が続き、人と顔を合わす機会が減る一方で、SNSに触れる割合も増えがちですよね。
ゴリラの研究に携わってきた山極寿一さんは「現代の人間社会は、言葉のコミュニケーションに比重を置き過ぎだ」と警鐘を鳴らします。今回は、ゴリラの研究で学んだ「生き方のヒント」を山極さんにうかがいました。(聴き手:武内陶子アンカー)


【出演者】
山極寿一さん(総合地球環境学研究所所長)


<プロフィール>
1952年、東京都出身。人類学者・霊長類学者。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了。昨年まで京都大学総長を務め、現職。著書多数。


――先生はゴリラと話すことができるそうですね。

山極: 言葉ではないけど「あいさつ音」のようなものを出せます。信頼関係があれば伝わります。

――40年以上ゴリラの研究をされていますが、元々は人間に興味がおありだったそうですね。

山極: 高校時代に、人間とはどういう生き物なのかと疑問を持ちました。大学で日本の霊長類学の基礎をつくった今西錦司さんの「動物にも社会がある」「サルを知ることは人間を知る」という考え方に出会ったのがきっかけです。

――はじめはニホンザルの研究をされていたそうですね。

山極: 自然の中に入り、ニホンザルたちの行動を記録観察し、サル社会のルールを見出しました。それからゴリラを研究対象にしていきました。アフリカではゴリラの群れに入って朝から晩まで同じようなものを食べて暮らしを調査しました。でかくて怖い思いもしました。

――その時に得たことはなんですか。

山極: 言葉がなくても、お互いの気持ちがわかることに感動しました。遊びたいとき、ゴリラも目がキラキラするんですよ。私もゴリラになって接していました。

ゴリラの暮らし

山極: ゴリラは、群れで移動生活し、リーダー格のオスとメスと子どもたち、10~20頭で群れを構成しています。

――ゴリラの家族構成、子育てについては、どんな風になっているのですか。

山極: 赤ちゃんが産まれて3年ぐらいは母親が面倒を見ますが、乳離れをしたらオスが育てます。メスと子どもを守る、守れないと信頼を失う。皆に選ばれるリーダーとは「社会的な父親」という存在なのでしょうね。一方、サルは自分の母親の元で子を産み、子育ては母親がします。

ボスとリーダー

山極: 強者、弱者という階層性を重んじるサルに対し、ゴリラは対等性を重んじるので、サルはボス、ゴリラはリーダーという概念があります。なので、ケンカの収め方にしても、サルは強い者が勝つことで(弱い者が負けを認める)ケンカが収まりますが、ゴリラに勝ち負けはないんです。ゴリラはお互いの顔をのぞき込み合ったり、第三者が間に入ったりして和解を目指します。相手の立場を考え、期待を背負って行動を決める習性があります。人間の社会も、ゴリラの「共感」や、相手への「関心」を発達させてきたはずですが、現代の日本人は、サルの社会に寄ってきているように私には感じています。

――どのようなことから日本人がサル化していると思われるのですか。

山極: 共同体より、個人の利益(強い・弱い)を優先する考え方が強くなってきたことがサル化の証しだと思うのです。

人間本来のコミュニケーションとは

――人がコミュニケーションをとり始めたきっかけはどういうものだったのですか。

山極: 人間の祖先が「言葉」を獲得する前は、言葉で説明する「伝える力」より、相手の様子を感じる「受け取る力」でコミュニケーションを保っていたはず。身体的な共鳴が大事なんです。スポーツ選手が、アイコンタクトや、動きの間、タイミングを見てプレーするのと似ているかもしれないですね。その後、言葉が生まれて、物語を作り、時空を超えて意味を伝えたり、世界を切り分けて分類したりすることができるようにはなりましたが、言葉は「気持ち」を伝えることはできないんですね。

――「言葉」に偏りすぎのコミュニケーションにも問題があると考えてらっしゃいますよね。

山極: 現代は言葉によるコミュニケーションに固執しがちだと思っています。情報が多いため、言葉によって理解しよう、説明しようとし過ぎているように感じます。言葉で傷つくことはよくありますよね。言葉って信用してはいけないんですよ。本来、言葉は気持ちを伝えるための道具ではありません。だって言葉は裏腹でしょ。裏腹だから相手のことがわからないんですよ。「バカ」とか「おまえ殴ってやる」って言ったって、本当にそう思っているかどうかはわからないじゃないですか。本当は好きで好きで仕方ないのに、そういう言葉で相手をなじったりすることもあるじゃないですか。面と向かっていればわかるんですよ。言葉だけじゃなくて、表情や身振り手振りで表現されるわけだから。人間はそれを読み取る力を持っているわけだから。ネットでそういう言葉だけ流れてくると怖くなるけど、言葉は気持ちを伝える道具ではないんだと思って、相手にしない方が良いんです。本来のコミュニケーションは、言葉だけに頼らない部分が多いので「わかってもらえない」ではなく「わかろうとする」こと、「関心」や「共感」が大事ではないでしょうか。

――我々がこの社会で、本来のコミュニケーション力を身につけるには、どうすればいいのでしょうか。

山極: 頭を使わず身体を使えということですね。身体を共鳴・共感させてください。本来のコミュニケーションは、言葉の意味のやり取りだけでなく、個性や背景の違う者同士が、顔を合わせて違いを感じながら、分かろうとし合うことです。顔の見える関係の相手と時間をともにすることで社会的な時間を過ごすことができます。なかなか集まれない状況ですが、マスクをしたり、ソーシャルディスタンスを取ったりしつつ、いっしょに食事をすることは、信頼を作るうえで大切なものなんです。

【放送】
2021/09/08 「武内陶子のごごカフェ」

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