【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ」森村泰昌さん(美術家)

24/05/17まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2024/05/10

#文学#読書#アート#ロボット・AI

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24/05/17まで

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作家・高橋源一郎さんをセンセイに、あなたの好奇心を呼び覚ます夜の学校「高橋源一郎の飛ぶ教室」。後半(2コマ目)は、さまざまな分野のスペシャリストを「きょうのセンセイ」としてお迎えし、源一郎さんが心の赴くままに語り合います。今回は、美術史上の名画や往年の映画女優、20世紀の偉人たちなどに扮(ふん)したセルフポートレート写真などの作品で知られる、美術家の森村泰昌さんです。

【出演者】
森村:森村泰昌さん(美術家)
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー

森村作品の基礎知識

礒野:
そもそも、どうして、このようにセルフポートレートを?

森村:
これがね、あの~「分かっていれば、もう終わってる」と思うんですけどね。

高橋:
あぁ、そうか。説明はできないんだよね~。

森村:
できないんですよ、これは。

礒野:
う~ん。

森村:
できないというか、作品づくりって、どうなんですかね? 「かくかくしかじかの訳があってこれを作ります」っていう感じじゃなくって…。大阪から今日来たんですけどね、「これや!」っていう(笑)。

高橋:
大阪弁なんだよね、基本ね(笑)。

森村:
はい(笑)。「これだ~!」っていうね、直感から始まりますよね、どうしても。その「これだ~!」って思って、やるんですけどね、そのあとで、徐々に何年かたって、「なんで、これや!」「これだ!」だったんだろうって、考えていく中で、いろんな、まぁ理由づけというか、そういうのが生まれてくるんですけどね。

高橋:
おもしろいのはですね、もともと最初の作品がゴッホの…。

森村:
そうですね。1985年なので、もう、かれこれ40年前ですね。

高橋:
40年ほど前ですね。僕がデビューしたぐらいですけど…。あの~しかも、有名な包帯をしたゴッホ。
要するにゴーギャンと喧嘩して、耳を切って…。

森村:
そうですね。

高橋:
そう、自分で耳を切った直後に、包帯をして、その肖像を平気で描いている。しかもパイプをくわえてね。

森村:
そうです、そうです。はい。

高橋:
だから、何でそもそもそれが第1号だったんですかね?

森村:
ねぇ!?

高橋:
あはははははっ(笑)。

森村:
でも本当にそれ…、あの~、まず、セルフポートレートというか自画像的な作品を作ろうと、まず思ったんですね。

高橋:
そのとき思いついたんですね。

森村:
まず思いついて、それからそのあとは、まぁ…美術作品なので(笑)。

高橋:
うん(笑)。

森村:
なんか美術をテーマにしないと、単なる人の顔だな~って思ったんですよ。それでいろいろこう画集とか、あらためてザ~ッと見てたんですよ。

高橋:
うん。

森村:
んで、「目が合った」の。

高橋:
うん…。あっ、ゴッホの絵と!? 目が合った(笑)。

礒野:
あはははっ(笑)。

森村:
ゴッホと目が合って…。合ったっていうことは、まぁ恐れ多くもというか、なんだかよく分かんないですけど、目が合うっていうことは、まぁ「鏡みたいなもん」ですよね。

高橋:
縁があったというか、向こうが見てるってことですよね。

森村:
まぁ、目と目が合うわけですから、鏡を見たら、自分と目が合いますよね。それと同じ感じで…。

高橋:
なるほどね。

森村:
だから、その鏡に映ってるのがゴッホなんですよ。

高橋:
あぁ。目の前にゴッホがいたんじゃなくて、自分がいたっていうか…。

森村:
自分としてのゴッホの絵…。それで、鏡のほうに感染したんですよ、僕が…。

高橋:
あぁ、映ってる向こうのゴッホに…!

森村:
僕が合わせてしまったっていう感覚ですね。

礒野:
へぇ~~。

高橋:
作り方としては、写真に油を塗って、いろんなものをつけてった?

森村:
いや、全然そんなことしてないです。

高橋:
してないですか。

森村:
あれは全部、写真に油じゃなくって、顔に油を塗って…(笑)。

高橋:
それで写真を撮ったのね!

森村:
だから衣装とかも全部作って…。バカなことやってるんですね~(笑)。

高橋・礒野:
あははははっ(笑)。

森村:
そのバカなことやってるなって…。やりながらね、普通にきれいにメイクするなら別ですけどね。ゴッホの絵でしょ!

礒野:
…になるためですもんね~。

高橋:
絵になるんだもんね!

森村:
そうなんですよ。ゴッホになるんじゃなくて、ゴッホの絵になるんで。顔にいっぱい、ドーランですけども、色をいっぱいつけていくとね、もう大変情けないんですよ。で、その情けなさが、ゴッホのその時の情けなさとですね…。

高橋:
あ~! リンクしてるのね!?

森村:
そう、つながって…。

礒野:
へぇ~!

高橋:
見てると、あの~、ゴッホの元の絵も変なんですけど、森村さんの絵を見ると、もっと変じゃないですか! で、その変さが、要するにゴッホの変さに繋がってるよね?

森村:
なってきた…ということでしょうね。

高橋:
そこからまぁ始まって、ものすごく無数のものになって…。

礒野:
いろんな人になってますよね~。

森村:
そうですね。そのほかに映画女優とか、20世紀のいろいろな人物とかね。いろいろなものに、だんだんと広がってきましたね。

源一郎さんは森村さんの作品に「AI味」を感じた!?

高橋:
今回、『森村泰昌 楽しい五重人格』っていう…。

礒野:
現在、開催中の個展ですね。

高橋:
はい、今されているので、「魯迅(ろじん)」になったり、「カフカ」になったり、

礒野:
カフカ、かっこよかったですね~!

高橋:
かっこいいですね~。実物のカフカより、かっこいいかもしれないっていう感じなんですけども。
もう1つ、『甲斐庄幻想(かいのしょうげんそう)』というのがあって、これは、えっと~、芸者さんですかね?

森村:
テーマがね! そうです、そうです、ええ。

高橋:
その人になってるんですが…これは写真…?

森村:
写真ですね~。はい。

礒野:
これが絵なのか、写真なのか…?

森村:
これはこの前、源一郎さんが来られて、その作品の前でずいぶんと立ち話をしてました。

高橋:
そう、そう、そう。

森村:
最初に源一郎さんが言ったのが、「おいおい、AIだ~!」って。

高橋:
覚えてます(笑)。

森村:
「AIだ!」っていうのは、ちょっとびっくりしたんですよ。そういうふうに言う人は、なかったのでね。
で、「それは、なんだろう?」とかね…ずっと考えてるんですよ。

高橋:
あのね、AIが作る絵って、今はすごい自動生成でね、流行ってて…。もちろん言葉のほうもAIがどんどん作ってるけど、まだね「AI風」なんですよね。
うまく説明できないんだけど、この森村さんの『甲斐庄幻想』の絵って、めっちゃ「AI味(み)」があって…。

森村:
う~ん。

高橋:
つまり、なんて言ったらいいんだろうな~。AIって、CGでもないんですよね!

森村:
うん、うん。はい。そうですね。

高橋:
なんか変なクセがあって、人間にはなんか出せないような、不思議な、いびつな感じ…。

森村:
うん、うん。

高橋:
『甲斐庄幻想』の絵は…絵っていうか写真なんですけど、さっき言ったように写真なのか絵なのか…。絵みたいな写真? 自分で言ってて、分かんなくなってきた(笑)。
AIは絵みたいな写真だったり、写真みたいな…。だから、もしかしたら、AIは区別してないのかもしれない? AIさんは。

森村:
う~ん。

高橋:
僕らは最初から区別してるけど、その彼らというか彼は、区別なくてね、単なるこの…何? 物体っていうか、そういう非人間な感じ?

森村:
あの、その時におっしゃってたのが、「これは絵じゃない。それから写真じゃない。CGじゃない」。その「じゃない、が3拍子そろってる」感じが、この絵にはあるって…。

高橋:
AIっぽいんだよね。

森村:
…っていうのを、「なるほどな」と思って。そんなこと考えてないんですよ、一生懸命作ってるだけなんで(笑)。まさに「これだ~!」と思ってやってるだけなんですけど、なるほどと思って…。
それで、それがAIだとしたら、僕の制作のプロセスは、全くAIと対極なんですよ。

高橋:
あぁ~!

森村:
メイクをしたりとか、衣装を作ったりとか…。

高橋:
ものすごくアナログな…。

森村:
アナログ。手作りの味なんですよ。

礒野:
はい、はい。

森村:
それで、その時に話したのが、対極にあるがゆえに…。

高橋:
似てる。

AIになる、とは?

森村:
「似てるんだ!」ということを、おっしゃってた。で、それにちょっとヒントを得て、「そうか!」と思って、あの~、ものすごいこと、考えたんですよ!

礒野:
えっ!!!

高橋:
えっ!? なにか?

森村:
それは今まで「いろいろなものになる」っていうのをやってましたでしょう。ゴッホになるとか、マリリン・モンローになるとか、いろいろやってたんですけど、たぶんセルフポートレートっていうか、自画像の時代っていうのは、そろそろ終わりかなとは思ってたの。

高橋:
そうなんだ。

森村:
はい。人間の時代が終わるのと共に、自画像の時代も終わるかな~!?
「私って何?」みたいな時代は終わるかなと思ってたんですけど、「あっ、この手があるな!」と思ったのは…「AIになる」っていう。

高橋:
あぁ。

礒野:
逆に!

森村:
その「AIになる」はね、ものすごい難しいです。単にAI風にやったからといって、「AIになる」ことにはならないんで。じゃあ「AIになるって、どういうことなんだろう?」って考えると、めちゃくちゃおもしろいんです。

高橋:
あのね、僕もちょっと「AIになる」っていうのがテーマなんですよ。

森村:
ふ~ん。

高橋:
僕、一時期、ChatGPTなんかのAIの文章を、しばらく分析してたんですよ。

森村:
はい。

高橋:
で、おもしろいの! まず人間には書けないっていうのと、でね~、実は個性があるんですよ。AI独特の…。

森村:
あ~、なるほど。

高橋:
個性があって、これはね人間が出せない…。何かちょっとね、パロディーっぽい文章なんですね。つまり彼らはオリジナルがないので、必ずどこかから拾ってくるでしょ。

森村:
なるほど。うん、うん。

高橋:
だから拾って拾って拾いまくってくる、悲しさみたいな…。

礒野:
パロディーっぽくなってるわけですね。

高橋:
どんなに真面目なのを書いてもね、なんかおかしいんですよ! で、人間は普通に真面目に書けるけど…っていうのが、もしかしたら、僕たちにとってね、新しい経験?!

森村:
う~ん。

高橋:
…っていうふうになってくると、あの~僕ちょっとね、AIにも学習させて、書かせたりしてるんですけど、このね~、不思議な感じ! それは人間じゃないし、でもね、人間じゃないっていうわけでもない。

森村:
う~ん、う~ん、うん、うん。

高橋:
それはやっぱり、もうちょっと、新しいルール…。この『甲斐庄幻想』が、気味が悪いんですよ。なんでかっていったら、ちょっと人間離れしてるよね?

礒野:
人間離れしてるけど、ちょっと生々しさも、あったりして。

高橋:
そう、そう、そう。AIって距離が分かんないんですよ。距離感が!

森村:
う~ん。

高橋:
その距離感みたいなものが、すごい出てるかなって…。

森村さんがこれからやりたいこと

高橋:
これからやりたいことや、予定ってあるんですか?

森村:
予定ね~、けっこうあるんですけどね。まだちょっとね、オフレコなんで。

高橋:
じゃあ言えるやつは? やりたいことでも!

森村:
やっぱり、先ほどの「AI」ですよ~。AI。

礒野:
あ~!

森村:
AIがものすごい気になってるんですよ、いま。僕、高橋源一郎さんにたきつけられて(笑)。

高橋:
具体的には、どういう? 共作とかは考えられますよね。

森村:
いや、じゃないと思う…。

高橋:
じゃない感じがする!?

森村:
僕は、その、ヒントをいただいた…。意識してないのに、何かつながるところが…。

高橋:
あぁ、そうか、そちらですよね。

森村:
出てくるので、難しいんですよ。その「付き合い方」が…。

高橋:
じゃあ、全く今までと違う新しいものになる可能性があるっていうことですね。

森村:
というのがセルフポートレートの…。最後のセルフポートレートって言えるか、セルフポートレートを超えるセルフポートレートか…。なんかその辺のところに、触れるんじゃないかな~っていう…その感触ですかね。

高橋:
でもさ、AIのセルフポートレートって、おもしろいよね。

礒野:
どうなっちゃうんでしょう!

高橋:
どうなっちゃうの? 彼らの自画像っていうのがあったらね!

森村:
無いはずなんですよ。

高橋:
無いはずですよね。もし、あるとしたら、何になるんでしょう?

森村:
う~ん。

高橋:
っていうのが1つ…。

礒野:
楽しみにしております。あっという間でしたが…。

高橋:
あ~、もう時間がない。

礒野:
2コマ目の先生は、美術家の森村泰昌さんでした。どうもありがとうございました~!

高橋:
ありがとうございました!

森村:
ありがとうございました。

次回の課題図書とセンセイは…

次回、5月17日(金)放送の「飛ぶ教室」の内容です。
1コマ目「ヒミツの本棚」は、岩城宏之著『森のうた:山本直純との藝大青春記』を取り上げます。
2コマ目「きょうのセンセイ」は、お笑い芸人の鈴木ジェロニモさんをお迎えします。

番組では、リスナーの皆さまからのメッセージを募集しています。番組のご感想、源一郎さんやゲストへのメッセージ、月イチ恒例の「比呂美庵」で相談したいことなど、ぜひお送りください。

高橋源一郎の飛ぶ教室

ラジオ第1
毎週金曜 午後9時05分

メッセージはこちら


【放送】
2024/05/10 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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