【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ」鈴木俊貴さん(動物言語学者)

24/04/26まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2024/04/19

#文学#読書#いきもの#どうぶつ

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24/04/26まで

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作家・高橋源一郎さんをセンセイに、あなたの好奇心を呼び覚ます夜の学校「高橋源一郎の飛ぶ教室」。後半(2コマ目)は、さまざまな分野のスペシャリストを「きょうのセンセイ」としてお迎えし、源一郎さんが心の赴くままに語り合います。今回は、動物言語学者で東京大学先端科学技術研究センター准教授の鈴木俊貴さんです。

【出演者】
鈴木:鈴木俊貴さん(動物言語学者、東京大学先端科学技術研究センター准教授)
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー

きょうのセンセイは「鳥の言葉が分かる人!」

礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。きょうのセンセイは、鳥の言葉が分かる人! 動物言語学者のこの方です。

鈴木:
よろしくお願いします。鈴木俊貴です。

高橋:
よろしくお願いしま~す(拍手)。

礒野:
よろしくお願いします!

高橋:
本当は4月10日が「シジュウカラの日」だったそうですけど…!?

鈴木:
あっ、そうなんですよ。実はこれ、僕がSNSの「X」上で、勝手に制定したんですけど…。

高橋:
あっ!! そうなんですか!

礒野:
あははははは(笑)。鈴木さんが!

鈴木:
いつの間にか、X上でけっこう広まっちゃって…。

礒野:
語呂合わせですか! シ(4)ジュウ(10)で。

鈴木:
そうです、そうです!

高橋:
そうなんだ~。

礒野:
おもしろい…。まずは、鈴木さんのプロフィールをご紹介します。
1983年、東京都のお生まれです。東邦大学理学部生物学科を卒業後、立教大学大学院理学研究科博士後期課程修了。京都大学白眉センター特定助教などを経て、去年2023年からは東京大学先端科学技術研究センターの准教授を務めていらっしゃいます。世界で初めて「動物言語学」の研究室を東京大学に立ち上げました。
今年1月には「未来を面白くする活動やアイデアを持っている人」が表彰される国際賞、第10回World OMOSIROI Awardに選ばれています。

高橋:
そんなおもしろい賞があるんですね(笑)。

鈴木:
あるんですよ。

礒野:
おめでとうございます。

鈴木:
ありがとうございます。

動物言語学って、な~に?

高橋:
それでね、僕も一応、言語を扱う専門家なので「動物言語学ってなんだよ!?」っていう(笑)。世界で初めてなので例がないっていうことで、どんな学問なのか、ちょっと説明していただけるでしょうか。

鈴木:
はい。まず、なんで例がないのか、と言うと、これまで「言語っていうのは人間のものだ」っていうふうに決めつけられてきたんですよ。要するに、人間だけが持っている特別な力が言語であると。だから動物に言語があるなんて誰も考えてなかった。だけどよくよく観察してみると、実はシジュウカラもいろんな鳴き声を言葉として使ってることが分かってきて、「これはひょっとしたら他の動物も調べてみれば、いろんなしぐさとか鳴き声を使ってコミュニケーションをしてるんじゃないか? 意味を伝えてるんじゃないか?」(と考えて)、とすると「動物の言葉を解き明かす学問があってもいいよね」って思って、僕が「動物言語学」って名づけて。
最初はですね、スウェーデンで開かれた国際学会があったんですけども、その国際学会で基調講演をさせていただいて…。

高橋:
なんの学会だったんですか?

鈴木:
動物行動学者が集う学会があって、そこで自分の研究を、基調講演なのでプレゼンテーションするんですけれども、そこで「この学問、みんなでやろうよ!」って言って呼びかけたら、かなり賛同を得ることができまして。

高橋:
動物行動学は僕らでも知ってますけど、「動物言語学」っていうのはなかったわけで。最初に「こういうの、どうですか!?」っていうふうにプレゼンした時の、反応はどうでした?

鈴木:
何回も学会で発表することはあったんですけども、これまでで1番ウケがよかったです。

高橋:
へぇ~。

鈴木:
もちろん最初に「動物の言葉を解き明かしましょう」っていうふうな切り口で話を始めるので、最初は「人間だけだろう」ってみんな思ってるんですけども、僕がシジュウカラの研究を紹介して、どうやったら分かるのか、その説明をしていくうちに聴衆が僕側に来てくれて。気づいたら、講演が終わったあとに目の前に長蛇の列ができていて。

高橋・礒野:
へぇ~!

鈴木:
講演はだいたい1時間ぐらいだったんですけども、そのあと1時間、その場を離れることができずに。

高橋:
学会だから学者さんですよね、来てるのは。

鈴木:
そう。みんな僕に「すごい発表だった」とひと言かけたいがために、1時間並んでくださったんですよね。

礒野:
大反響!

鈴木:
で、「これでいける!」って思って。

高橋:
それは、いつです?

鈴木:
2022年の8月。

礒野:
わりと最近!

高橋:
じゃあ、まだ2年経ってないんだ。それで世界初の動物言語学者ということなんですが、とは言っても、あらゆる動物ではなく、鈴木さんはシジュウカラということなので。僕、本は山極壽一さんとの対談集を読んで…。

礒野:
『動物たちは何をしゃべっているのか?』ですね。

高橋:
驚がくしましたけど。

鈴木:
あっ! ありがとうございます!

高橋:
だいたい「動物に言葉があるの?」って、みんなね、まず疑いの目から…。鈴木さんは1個1個、実験を積み重ねて、証明していったんですよね。

鈴木:
はい、そうです。

高橋:
だからまず言葉、単語がある。それから、文法がある。

鈴木:
はい、そうです。

高橋:
ちょっと、そのプロセスを説明していただけるでしょうか。

シジュウカラの言葉を聴いてみよう♪

鈴木:
これまではですね、古代ギリシャの時代から、人間だけが言葉を持っていて、動物の、例えば鳴き声とかは、まぁ感情の表れにすぎない、と考えられてきたんですよ。

高橋:
「ピーピー」とか「ヒーヒー」とかね。なんか気持ちを表してるだけね。

鈴木:
「ワン、ワン」とか「チュン、チュン」とか。だけどよくよく観察してみると、シジュウカラって鳴き声を使い分けて、天敵の種類を示すことができたりする。例えば、上空を飛ぶタカに対しては…。

♪音源:実際の鳴き声「ヒヒヒヒヒ」

鈴木:
「ヒヒヒヒヒ」って。

礒野:
いま聞こえた鳴き声ですね! けっこう高い声ですね。

鈴木:
この声を聞くと、周りのシジュウカラはやぶに逃げていって、タカに襲われないようにする。

高橋:
「タカだ」っていう感じなんですかね?

鈴木:
これだけだと「タカだ」って言ってるのか、「怖い」って言ってるのか、よく分からない。じゃあ、ほかの天敵に出くわした時はどうか? 例えば、蛇に出会った時にはですね…。

♪音源:実際の鳴き声「ジャージャー」

高橋:
あっ、全然違う!

礒野:
えぇ~!

鈴木:
ね! これ最初に聞いた時、びっくりしたんですよね。こんな声をシジュウカラが出せるのか!

礒野:
低めの声でこう…。

鈴木:
「ジャージャージャージャー」って鳴くんですよ!

高橋:
これは蛇!?

鈴木:
これは蛇なんですよ。いろんな天敵の剝製とかを見せていって、タカには「ヒヒヒ」だし、蛇には「ジャージャー」だ!

高橋:
決まってるんですね!

鈴木:
決まってるんです。もっと一般的に、なんか危ないものがあった時に「警戒しろ」っていう声も持っていて、それが…。

♪音源:実際の鳴き声「ピーツピー」

鈴木:
ピーツピー!

高橋:
あっ、なんかきれいな声。

鈴木:
きれいなんだけど、シジュウカラとか僕からすると、すごい注意しなきゃって…。

高橋:
あははははははっ(笑)。

礒野:
危機迫る!?

鈴木:
そうなんです。

高橋:
鈴木さん、これ聞くとドキッとします?

鈴木:
「あっ、何が起きてるんだ?」って、周囲を見る。

高橋:
あはははっ(笑)。なるほどね~。

鈴木:
そうすると、やっぱりシジュウカラも周囲をきょろきょろして、どこに危険があるんだろうって探してるんですよね。で、ほかにもいろんな声があって、今までは天敵とか怖い時のお話をしましたけども、普通になんか「こっちおいでよ」みたいな、「集まれ」っていう声があって…。

♪音源:実際の鳴き声「ヂヂヂヂ」

鈴木:
この「ヂヂヂヂ」。こういう声がある。

高橋:
これだと集まるんですね、実際に。

鈴木:
はい。1つ1つの単語を解き明かすのは、すごい時間がかかるんですよね。

礒野:
ええ、ええ、ええ。

鈴木:
要するに、それが本当に感情じゃなくて、言葉に…。

高橋:
単語で言ってるのかどうかってね!

鈴木:
そう、そう、そう。それを解き明かすのに、数年とか10年かかったこともある。

礒野:
なるほど。感情と言葉のコミュニケーションというのは、やっぱり違うものなんですね?

鈴木:
違いますね。例えば笑い声と、「うれしい」っていう言葉とは、また違いますよね? 「うれしい」ってちゃんと概念につながっているし、だけど笑い声はその感情が伝わるだけだと。シジュウカラにも実は、単語、言葉があるってことが分かってきた。

礒野:
へぇ~!

鈴木:
調べていくうちに、なんかそれを組み合わせることがあるんですよ。

礒野:
組み合わせる?

高橋:
びっくりしたのではですね、単語はなんとなく、これに向かって言ってるって分かるんですけど、本の中にも書かれている「シジュウカラの言葉には文法がある」と。

鈴木:
はい!

高橋:
「人以外の動物で、初めて文法能力が確認された」という。

鈴木:
そうなんです。

高橋:
山極先生が、ゴリラには文法がないよっていう(笑)。

鈴木:
ないです。

礒野:
ゴリラの権威ですものね、山極先生。

高橋:
これはどうやって確認したんですか?

鈴木:
はい。まず、その声なんですけれども、こういう声なんですね。

♪音源:実際の鳴き声「ピーツピ・ヂヂヂヂ」

鈴木:
ピーツピ・ヂヂヂ。

高橋:
あ~! 2つ!

礒野:
長くなりましたね。

鈴木:
実はこの鳴き声の構成、「警戒しろ」っていう「ピーツピ」と、「集まれ」っていう「ヂヂヂ」。先ほどご紹介した2つが組み合わさった言葉になってる。これ、「違う鳴き声が組み合わさってるから、文章になってるんじゃないかな?」って思ったんですよね。

高橋:
うん。まず仮定ですよね。

鈴木:
はい。じゃあこれを、シジュウカラに聞かせてみよう。で、スピーカーから録音した「ピーツピ・ヂヂヂ(警戒、集まれ)」を聞かせると、キョロキョロしながら、スピーカーのほうに集まってくることが分かった。

礒野:
へぇ~! 2つの言葉を理解して行動に移すんですね!

鈴木:
うん。でも、ただ単に2つ連続で鳴いているだけなのかっていうと、実はそうじゃなくて、彼らは「ピーツピ・ヂヂヂ(警戒、集まれ)」って組み合わせる時は、必ずその語順にしか組み合わせない。

礒野:
「ヂヂヂ・ピーツピ」はないんですか!?

高橋:
逆だとダメなの? 集まらない?

鈴木:
そう。

礒野:
集まらないんだ!

鈴木:
パソコン上で単語をひっくり返した音を作ってですね…。

♪音源:実際の鳴き声「ヂヂヂヂ・ピーツピ」

鈴木:
シジュウカラは、絶対にこうは鳴かないんですよ。

礒野:
へぇ~。

鈴木:
これを聞かせてみると、どうなるかっていったら、ちゃんと反応しないんですよね。

高橋:
へぇ~。分かるってことだね!

鈴木:
分かる! これをどういう時に使うかっていうのも調べたんですよ。よくよく調べてみると、シジュウカラって、ふつう天敵を見つけたら逃げたりすればいいじゃないですか。だけどたまに、天敵に果敢に群れをなして襲いかかって、追い払うことがある。

礒野:
ああ!

鈴木:
例えば、モズってご存じですか? よく「早贄(はやにえ)」とかって言われる肉食性の鳥なんですけれども、モズがシジュウカラが住んでる森の中に来た時に、1羽だったら追い払うことができないんだけれども、仲間を呼び集めれば、モズをシジュウカラが住んでる森の中から…。

高橋:
追い出すことができるんだ!

鈴木:
そう、そう、そう。その時の号令が「ピーツピ・ヂヂヂ(警戒、集まれ)」に、見事になってる。そういうことも分かってきて、彼らはちゃんと言葉を、単語としてだけでなくて、文法のルールにのっとって言葉を組み合わせて文章を作ることができる。

高橋:
これを世界で初めて証明したんですよね。

鈴木:
はい、そうです。

礒野:
ちなみにどれぐらいの言葉がいまあるっていうか、分かってるんでしょうか。

鈴木:
僕の中で分かってるのは、200パターンぐらいあって…。

礒野:
200! そんなにあるんですか!?

鈴木:
いい感じに研究が積み重なってるのは、その中のひと握りなんですけれども。僕はもう分かりますね、彼らが何をしゃべってるのか、常に。

高橋:
聴いていると、何をしゃべってるか分かるわけだよね!

鈴木:
もちろん分かります。

礒野:
わぁ~!

高橋:
結構、複雑なことも言ってるんですか? 200もあるっていうことは…。

鈴木:
複雑なことも言っているし、別に警戒だけじゃなくて、「ここにいるよ」とか、あと、ちゃんと会話になってる。だから、ある言葉を言って、別の言葉で返すことをよくやっている。

高橋:
へぇ~! それって、誰が教えてるってことになるんですかね?

鈴木:
それがまだ分からない。例えば、動物行動学で1番有名な先生はコンラート・ローレンツっていう、『ソロモンの指環』っていう本を書いた…。で、その本の中でローレンツは「鳥たちの鳴き声は単なる本能で、遺伝的にプログラムされたものだ」って書いてる。

礒野:
ええ、ええ。

高橋:
それが定説になってましたよね。

鈴木:
違いますね。やっぱり、見てると違う。例えば、シジュウカラは方言があるし。

高橋:
違うの?

礒野:
違うんですか!?

鈴木:
違うんですよ。ってことは、個体同士で、言葉とその意味を伝え合っているから、方言が生まれてるわけですよね。

礒野:
環境によって、使う言語とか違いますよね、きっとね。

鈴木:
同じことを示すのでも、ちょっと違ったり。例えば、長野県で警戒している時は「ピーツピ」なんだけども、東京だと「ピーツピ、チー」っていうことが多い。

高橋:
さすが! あはっ(笑)。

礒野:
微妙に文末が違うんですね。

動物言語学の未来~本当の意味での共生とは?~

高橋:
こうやって世界で初めての動物言語学を研究されているんですけど、これからっていうのはどういうふうになっていくのか、あるいは、どうしたいのか。今はね、シジュウカラを研究されていますが…。

鈴木:
僕はシジュウカラが大好きでずっと見てたから、たぶん一生、シジュウカラをやってたほうが、いろんなことが分かってくると思う。

礒野:
ええ。

鈴木:
だけども、ほかにも例えば、チンパンジーがめっちゃ好きな人とか、山極先生みたいにゴリラが好きで詳しい人がたくさんいる、と。彼らにも動物言語学という枠組みの中で、各々の研究対象の動物の言葉を解き明かしてほしいな、って思ってるんですよ。

高橋:
うん、うん、うん。

鈴木:
犬を飼ってるんですけれども…。

高橋:
はい、はい、はい!

鈴木:
犬を見てても、やっぱり言葉って、鳴き声だけじゃないですね。

高橋:
犬も言語がありますかね?

鈴木:
あると思います。

高橋:
あぁ~(大感激)。

鈴木:
例えば、言葉だけじゃなくて、尻尾の振り方とか…。

高橋:
身体表現も言語の一種ですもんね。

鈴木:
例えば、興奮してる時って、尻尾をすごく速く振ります。

高橋:
振りますよね。

鈴木:
おびえてる時は、尻尾を下げますよね。で、よくよく見てみると、うれしいときと不安な時とで、尻尾の振る向きが違う。

高橋:
あ~!

鈴木:
うれしい時は右側に振るし…。

高橋:
あはははっ(笑)。

礒野:
方向が違う?

鈴木:
そう、そう。方向が違う。ちょっとおびえている時、不安な時は、左に振る。

高橋:
家に帰ったら見てみよう(笑)。

鈴木:
そう、そう、そう、そう。それはちゃんとね、研究されていて…。

高橋:
あるんですね。

鈴木:
例えば、そういうふうな犬のロボットを作って、他の犬に見せると、ちゃんと感情が伝わる。

高橋:
それは共通の言語になっているっていうこと?

鈴木:
なってるっていうこと。だからそういうのも、実は意思疎通に使っているわけだから、動物各々をちゃんとしっかり調べていくことで、彼らの言葉を理解するような未来が、将来来るんじゃないかと思うんですよね。

高橋:
それって、すばらしいですよね! 僕らはいつも一方的に話しかけているだけで、理解しようっていう気持ちはあまりないもんね。

鈴木:
そうなんですよ。だけど、動物は人間のことをとてもよく見ているので、ちゃんと人間も動物のことを見る世界が来たら、本当の意味での人間と自然の共生も実現できるかもしれないと、考えています。

次回の課題図書とセンセイは…

次回、4月26日(金)放送の「飛ぶ教室」の内容です。
1コマ目「ヒミツの本棚」は、須賀敦子 著『ミラノ霧の風景』を取り上げます。
2コマ目「きょうのセンセイ」は詩人の伊藤比呂美さんをお迎えして、毎月恒例の「比呂美庵」を開きます。

番組では、リスナーの皆さまからのメッセージを募集しています。番組のご感想、源一郎さんやゲストへのメッセージ、月イチ恒例の「比呂美庵」で相談したいことなど、ぜひお送りください。

高橋源一郎の飛ぶ教室

ラジオ第1
毎週金曜 午後9時05分

メッセージはこちら


【放送】
2024/04/19 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

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