【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~ノンフィクション作家 片野ゆかさん~」

23/09/22まで
高橋源一郎の飛ぶ教室
放送日:2023/09/15
#文学#読書
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23/09/22まで
「きょうのセンセイ」は、ノンフィクション作家の片野ゆかさん。1コマ目の「ヒミツの本棚」で紹介したのは、日本初という日本犬専門雑誌を立ち上げた編集部を取材した片野さんの著書、『平成犬バカ編集部』でした。犬と日本人の平成史が見える、というこちらの本を出した片野さんも、もちろん犬が大好き!
番組史上初めての「ゲスト犬」を迎えておおくりした2コマ目、どんなお話が展開されたのか、お楽しみください。
【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
片野:片野ゆかさん(ノンフィクション作家)
マド:マド(片野さんの愛犬)
礒野:
源一郎さん、2コマ目です。
高橋:
はい。今日のセンセイは、ノンフィクション作家のこの方です。
片野:
こんばんは。片野ゆかです。
高橋:
よろしくお願いしま~す。
礒野:
よろしくお願いいたしま~す。
今夜のゲストは、お2人というか…
高橋:
実はですね、もうひと方というか…? いらっしゃるんですね! そちらの方のご紹介も…。
片野:
あっ、はい。え~っと本日ですね、我が家の愛犬であり広報部長でもある、犬のマドが一緒に来てます。
高橋:
あっ、どうも。マドちゃん、ちょっとこっち向いて!
礒野:
マドさ~ん、よろしくお願いしま~す!
高橋:
マドちゃんの前にもマイクがあるので、もしかしたら何かしゃべっていただけるかも。
マド:
……。
礒野:
お話したくなったらね。片野さんのお隣に、本当にお利口に座って…。
高橋:
あっ、座っちゃった。あはっ(笑)。かわいい~!
礒野:
黒い目がぱっちりして、お耳がピンと立った黒い小型犬? 中型ぐらいでしょうか?
高橋:
小型ですよね?
片野:
小型ですね。5キロぐらいなので。
高橋:
種類は何ということに?
片野:
種類はミックスなんですけど、甲斐犬が入ってるんじゃないかなって。毛の色が…。
礒野:
甲斐犬。山梨県の犬ですね。
片野:
そうですね。なので甲斐犬を飼ってる方には「甲斐犬が入ってますよね!」って、いろんな方に言われるので、きっとそうなんだろうなって、判断しています。
高橋:
超かわいいですね~!
片野:
かわいいでしょ~。
高橋:
小顔で。
礒野:
ええ!
高橋:
さっき聞いたら「オードリー・ヘプバーンに似てる」っていう(微笑)。
片野:
なんでいきなり、そういう話になってるんですか(笑)。
そうですね、クールビューティーで、美しい犬なので(笑)。
我が家でいちばん美しいお姫様です。
高橋:
いや、いや、いや…、お姫様ですよね。でもラジオだからわからないもんね(笑)。
片野:
うふふっ(笑)。
礒野:
片野さん宛てにメッセージをいただいています。
ラジオネーム「犬好きブルホ」さん。東京都にお住まいの60代の方です。
片野さんにお礼をお伝えしたくてメールしました。私は盲導犬ユーザーです。8月は、私と盲導犬は、朝4時台の散歩以外、ほとんど外出できず、9月になってやっといろいろ出かけられるようになりました。散歩のとき、片野さんがSNSで紹介されていた「犬の足元を霧吹きで湿らせる方法」がとても役に立ちました。蒸し暑い中、時々、足元をシュッシュッとすると、歩みが遅くなっていた犬が、またスタスタと歩きだします。そして、しばらくすると自分で止まって「シュッシュッしないの?」と聞いてくるようになりました。盲導犬ユーザーの仲間にもシェアしました。
片野・高橋:
すごい。
片野:
うれしいです~! この方法、実は私も今年は猛暑で、初めて気づいて、うちのマドにも実施してたんですね。
高橋:
シュッシュッですね!
礒野:
霧吹きを持ち歩いて?
片野:
うちの場合は器に水を入れて、じゃぶじゃぶさせて…。
高橋:
あ~、なるほどね~。
片野:
本当に朝早くても暑かったので。
高橋:
暑かったよね。
礒野:
大変な夏でしたね~。
片野:
お役に立ててよかったです~!
高橋:
っていうかさ、目の前にいるマドちゃん、超かわいいんですけど(笑)。保護犬ということなんですね?
片野:
そうなんです、はい。もともと茨城のどこかで放浪していて、愛護センターから、ある団体さんを経由して、我が家に。
高橋:
何歳ぐらいですかね?
片野:
2011年に来たんですけど。
高橋:
あっ、じゃあ、けっこう…。
片野:
そうなんです。推定年齢ですけど、今12歳ですね。
高橋:
あ~、ということは70ぐらいですかね、人間で。
片野:
人間に換算すると、そうなんですけど。
運動神経もよくて、我が家でいちばん運動神経がいいです(笑)。
高橋・礒野:
あははははっ(笑)。
片野:
ホントに(笑)。
礒野:
初めての場所なのに、とっても落ち着いて…
片野:
落ち着いてますね。
高橋:
かわいい~。なんかね、自分がきれいだってわかってるタイプ。
礒野:
あっははははははっ(大笑)。リラックスしてます。
マド:
……。
高橋:
あの~、今回、片野さんをお招きしたのはですね、ちょっと僕、諸般の事情で今、犬の研究をしておりまして、ずっと。
片野:
あっ、はい。
高橋:
それで、片野さんをぜひお呼びしたいと思って、本棚を見てたら、この『ゼロ』っていう本を読んでて。(片野ゆか著『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』)
片野:
あぁ、そうだったんですね。うれしいです~。
高橋:
熊本市の動物愛護センターが、いわゆる、殺すのをゼロにしたっていう。
片野:
はい。殺処分をゼロに…。
高橋:
ゼロにした話で、すごい印象に残ってて。
『愛犬王 平岩米吉伝』
高橋:
で、今回お招きするということで、片野さんの本をまとめて読んでて、1コマ目で言いましたね、『愛犬王 平岩米吉伝』って。
片野:
そうですね~。
高橋:
この話は是非したいんですけど、時間がないかもしれない(笑)。
片野:
はい(笑)。
高橋:
それで、読んでて、読みながらね、ず~っとね、なんかね、この人知ってるような気がするなと思って。
片野:
はい。
高橋:
ず~っと思ってて、パッと見たら、目の前に平岩米吉の本があったんです。おおかみの本。
片野:
あっ! もう読まれてたんですね。すでに?
高橋:
そう! 片野さんの本を読む前に。
さっき、犬の研究って言いましたけど、おおかみの小説も今、書いてるんですよ。
礒野:
そうなんですか~!
高橋:
来年出ますけど。その資料をいっぱい集めてたときに、たくさん集めたおおかみの本の中でいちばんよかったのが、平岩米吉で!
片野:
あっ、名著だと思います。
高橋:
ですよね!
片野:
ホントに、いい本です。
高橋:
なので、いろいろ関わりがあった、という。
片野:
そうですね。なんか、つながっていましたね。
高橋:
ね~。
礒野:
お会いするのは?
片野:
実は今回が初めてなんです。
礒野:
初めてなんですか~!
高橋:
ホントに、今日はよろしくお願いします。
片野:
よろしくお願いしま~す。
パートナーもノンフィクション作家
高橋:
片野さんのパートナーが、ノンフィクション作家の高野秀行さん。
片野:
はい、そうですね。番組でもお世話になったと思うんですけど。
高橋:
いや~、なかなか、すごい組み合わせですね!
片野:
うふふふっ(笑)。
高橋:
あの~、ちなみにお二人ともノンフィクション作家っていうことなんですけども。お互いに読み合ったり、感想を言ったりとか、アドバイスしたりするんですか?
片野:
うちはけっこう、あの~、同じノンフィクションの部門でも、私は完全に動物寄りで、高野のほうは、海外・辺境寄りなので。
高橋:
辺境寄りですよね(笑)。
片野:
ある意味、世界が違うんですね。なので、かえって新鮮な読者として、「1回これ読んでみて!」とか。
礒野:
あぁ!
片野:
「事情は『こう』なんだけど、どうやってまとめたらいいか」とかっていうのは、けっこう相談しています。
高橋:
信用できる読者、ってことですね。
片野:
まぁ、あの~、家庭内会議を(微笑)。
高橋:
あははっ(笑)。家庭内の…。
片野:
実施してます。飲みながら、みたいな感じで(笑)。
高橋:
あ~、飲みながら!
犬を通して見えてくる人間社会の変化
高橋:
で、え~と今回、『平成犬バカ編集部』(1コマ目の「ヒミツの本棚」でご紹介した片野さんの著書)は、たぶんね、予定の4分の1ぐらいしか、説明できてないんですが…。
ホントに面白いというか、胸を打つ話ですよね。あははっ(笑)。
片野:
朗読していただいて光栄なんですけど、私もあの~、自分で書いてて何なんですけど、本当にこの本は面白いですよね~(笑)。
高橋:
面白い(笑)。
礒野:
最高です! 片野さんが編集部を取材した日本犬専門雑誌の最新号もね、スタジオの中に!
片野:
あ~!
礒野:
あの川柳も、ありますよね~。
片野:
そうですね。今…。
高橋:
僕、100号記念の号も買いましたけど(笑)いや~面白いんですが…。
片野:
そうなんです~。
高橋:
さっき僕、強引にまとめちゃったんですけど、やっぱり、この本の中にも書かれたと思いますが「犬を飼うっていうこと自体は、特異なことではない」はずなのに、そこから日本っていうか…、日本が見えてきますよね!?
片野:
そうなんですよね。やっぱりこの時代って、平成の前期と後期にかけて、すごくこう、なんでしょう…、「日本の犬文化」っていうのが、ある意味プライベート・個人の生活と、あとパブリック・社会の状況っていうのが、すごく大きく変わった時代だったんですよね。
高橋:
うんうん。
片野:
なので、犬を通して、人間のライフスタイルとか社会がすごく見えてくるっていう。
高橋:
番犬に置くとかね。いや、家父長的ですよね(笑)。
片野:
そうですね(笑)。
高橋:
なんか、お父さんが偉くて、いちばん下のものは外へ行けっていう。
片野:
そういう時代、ありましたね。
高橋:
で、だんだん家に入るようになって。今はなんか対等? あははは(笑)。
片野:
そうですね。対等か…。
高橋:
もしかすると…。
片野:
もっと上の、おうちのね…。
高橋:
どっちかっていうと、みんな「お犬様」みたいに。
片野:
そうですね。
礒野:
かわいくしてますよね~。
片野:
あと、みんな、深夜に仕事で疲れて帰ってきた時に、誰も起きてくれないけど、ワンちゃんだけがお迎えしてくれるとか!
なので、心をつかまれてるっていう家族の方は多いと思います。
高橋:
そう、そう。だからそれは、令和になって平成になって、社会とか家族関係も変わりましたよね。
片野:
そうだと思います、はい。
高橋:
それをやっぱりすごく反映…。やっぱりもしかすると、ある意味、ペットだからこそ、いちばん反映してるのかも…、しれないですね。
片野:
そうですね。大きい変化ですし、やっぱりその、十数年前まで、愛犬のことを「家族です」って、まだあんまり堂々と言えなかったかな~って…。
高橋:
あ~っ!
礒野:
堂々とね、う~ん。
片野:
って感じですけど。今は皆さんかえって「え? 家族じゃないの?」って言うぐらいで~。
高橋:
うん(微笑)。
片野:
ホントそのへんも、感覚が変わりましたよね。
高橋:
う~ん。それで思ったんですけど、例えば、ペット業界の闇の話が、この中に出てきますよね。
片野:
ええ。
高橋:
ものすごく勝手に生産してって、で、いらない物は捨てちゃう。
片野:
そうですね~。
高橋:
殺しちゃう、っていうようなものも…。それ自体はペット業界の話なんだけど「今、僕たちの社会はこうなってるよ!」と。で、やっぱり、いちばん弱いところ。犬は声を出せないですもんね。
片野:
そうですね。自ら社会に向かって声を上げたりとかできないので。本当にペット流通業界っていうのは、ある1つの社会の縮図になってますね。
「犬バカ」になったきっかけ
高橋:
そもそも片野さんは、なぜ、ずっと犬なのか(笑)。
そもそもそれを聞かなきゃ(笑)。
礒野:
猫ではなく犬なのか、ということ?
高橋:
っていうか、動物でもいろいろいるし~。
片野:
でもやっぱり、犬と一緒に生まれて育ったっていうところもあって。
実家でも犬を飼っていて、私もほとんど、3歳か4歳ぐらいから、グレイハウンドを父が飼い始めて。
高橋:
グレイハウンドなんだ!
片野:
すごい運動神経がいい犬なんですけど、すごいおとなしくて優しいので、小学校の低学年から散歩して…、1人で散歩して歩けたぐらい。なんかすごい穏やかな子だったんですね~。
高橋:
まだ片野さんがちっちゃいころだと、今みたいじゃないですよね? 犬の環境は。
片野:
まだ番犬です。なので、グレイハウンドもお庭で飼ってました。
高橋:
あ~。で、実家を出てからも、基本的には飼っていらしたんですか?
片野:
そうですね。大人になって、20代後半ぐらいで。自分の責任で初めて犬を飼うっていうので、この子の前の、先代犬がダックスで。その子は17歳9か月まで生きて、一緒に生活して。
高橋:
長生きですね~。
片野:
まぁ、長生きになりましたね。
高橋:
本の中にも書かれてたと思うんですけど、僕も知らなかった…、いわゆる番犬時代って平均寿命が3歳?
片野:
そうですね。3歳、4歳ぐらい…。
礒野:
短いんですね。
高橋:
今は、フィラリアの予防薬ができたんで、寿命が一気に伸びて、14~15歳。
礒野:
たくさん一緒に過ごせる時間が!
片野:
そうですね、伸びましたね。
犬バカの流儀
高橋:
で、どうなんですかね? 犬を飼うというか、犬と暮らすいちばんの楽しみって…。この本に「犬バカ」が出てくるんですけどね(笑)。犬の面白さって、どこにあると? 猫も…、僕、猫は飼ってたことがあるんですけど。
片野:
そうなんですね。あの~、犬のだいご味って、やっぱりいちばんは「一緒にお出かけができる」っていうので。
高橋:
なるほど~。
片野:
やっぱり一緒の、同じ体験を共有できるっていう部分では、いちばん大きいなと思いますね。
高橋:
そうか。猫は散歩してくれないもんね。
片野:
そうですね。かえって迷惑だと思います。犬だと、ホントにお出かけ、散歩もそうですし。うちのマドも居酒屋に連れてって、飲みに行ったりとか。
高橋:
えっ? 飲むんですか? マド(笑)。
礒野:
まさか~(笑)。
高橋:
ごめん、ごめん。一緒に飲むのかと思っちゃって(笑)。
片野:
でも、焼き鳥は焼いてもらってます。
礒野:
へぇ~! 「ペットOKですよ~」ってお店、けっこう増えましたよね。
高橋:
増えましたね。
礒野:
宿とかもね~。
片野:
なので、旅行もたくさん行ってますし、はい。
高橋:
あの~、思ったんですけどね、「犬と暮らす」っていうことで「社会が浮かび上がってくる」。だから、いま言った話でいうと、まぁそういう開かれていくところもあるし、高齢化しちゃったんで…、「老犬介護」? 今ものすごくそういうのが増えてきて…。
片野:
問題というか。まぁ犬も人間も同じように年をとっていって…。
高橋:
そうそう。
片野:
そのためのケアをどうしたらいいか、っていう。けっこう飼い主さんが孤立してしまったりする場合があるので、そういう情報っていうのをもっとたくさんお互い共有しようよ、っていうので、割と犬雑誌でも、定番のテーマになってますね。
礒野:
日本犬専門誌の最新号で私が驚いたのが「犬と防災」とか、そういう専門的なテーマもあるんですね。
片野:
そうですね。災害大国、自然災害大国なので、いま環境省でも、もし地震が起きたときには必ず、一時避難のときには犬とか猫とか、ほかの鳥とかウサギもそうですけど、一緒に同行避難をしてください。なるべく置いて逃げないでくださいっていうのは推奨されてますね。
高橋:
なんかね、僕がこの本を読んでて思ったのは、さっきも言いましたけど、まぁペットなんですけど、テスター? あの~、つまり、自分が他人に優しいかとか、子どもをどうするかっていったときに、年老いた犬を介護できないような社会は、人間もダメだし。
片野:
そうですね~。
高橋:
「子どもの環境を守れないような社会は、犬の環境だって守れてない」っていうのは、けっこう並行関係にありますよね?
片野:
そうですね。だから逆に、犬と猫とかって社会でいちばん弱者ですよね。
高橋:
弱者。
片野:
当然、人間より下ですし。そういう子たちをちゃんと考えたり、社会の中でどうするかとか、個人的にちゃんとケアできるかっていうのは、結局そういうことをできる人だったり社会っていうのは、人間の他の弱者の方も、みんな弱者になりうる可能性もありますよね。
高橋:
そうそうそう。てか、なりますよ。みんな!
片野:
そうなんです。だからそういう人たちに優しい社会が確立できるっていうのが、やっぱりペット動物を大切にするっていうのを、私はすごく重視してますね~。
高橋:
みんなね、自分はね~、年とらないと思ってるんだけど、年とるんですよ。あはははっ(笑)。
礒野:
あはははは(笑)。
高橋:
それと僕が思ったのは、この『平成犬バカ編集部』は、井上編集長っていう方が中心だったんですけど、詳しく見れば、ほとんどみんな「犬バカ」なんですよね!
片野:
そうですね。編集部員の方はもうほぼ「犬バカ」じゃないと、井上編集長についていけないっていう(笑)。
礒野:
あはははは~っ(笑)。
片野:
そういう環境ですからね。
高橋:
だからそういう人たちが、自分が「面白い」と思って作ったものですよね。それが逆に、いろんな場所で苦しんでいる犬とかを見つけてきて、問題を解決していくっていう。だから、僕、よく言うんですけど、やっぱりね~「世界を救うのは『バカ』なんじゃないか?」って(笑)。
礒野:
いい意味のね! パッションがありますよね~。
片野:
そうだと思います(笑)。
高橋:
アレですよね?「フール・オン・ザ・ヒル」っていうね、ビートルズの曲にあります。あれはガリレオなんですよ。ガリレオ・ガリレイが、あいつはバカだって言われても、「それでも地球は回ってる」って! あれは「丘の上のバカ」っていう意味で、そういう存在が必要だっていうことなんですけど。
礒野:
へぇ~!
高橋:
で、さっき言った『愛犬王』の平岩米吉さんという人も、どっからどこまでも「大バカ」なんですけど。
片野:
そうですね~。
高橋:
そういう人が残したものが、すごく大きいものだと思いますね。
片野:
そうだと思います。さっき、犬の寿命が延びたって話で…。
高橋:
はいはいはい。
片野:
平岩米吉さんが、やっぱりフィラリア薬の研究を進めてほしいっていうので、専門家にかなり私財を投じて、研究を進めて。その結果、今はワンちゃんたちが長生きできてるっていう。
礒野:
そうなんですか~!
高橋:
彼が研究者に、いろいろ私財を投じてね。
片野:
そうですね。情報提供したりとか。
礒野:
じゃあ恩恵を受けているわけですね。
片野:
そうなんです。
高橋:
別に、国がやったとかね、そういうわけじゃないんだよね。個人なんですよ。
片野:
もともとはそういう個人の研究から。
礒野:
すご~い。本当に大好きなんですね!
片野:
そうなんです(笑)。
高橋:
「この人は、変わってる」って話。ということで、犬の話をいくらでも、まだしたいんですが、実は最新作ですかね、片野さんの。『着物の国のはてな』という着物の本が、これも面白かった。
礒野:
ガラッと、犬から話題が変わりましたね。
高橋:
そうそうそう(笑)。
礒野:
着物もお好きなんですね?!
片野:
そうですね。着物も初めて書いた本なんですけど。
高橋:
僕は読んだんですけど、どういう本ですか?
片野:
私自身があまり着物を実は好きではなくって、でもまぁ、ちょっと母のものがあるから着てみようと思ったら、意外と似合わなくって。
高橋:
あっははっ(笑)。
礒野:
そうですか(笑)。
片野:
なんでこんなに「似合わないんだろう?」と思ったら、着方が違うとか、そういうことがいろいろわかってきて、わかってくるといろいろ疑問も…。「着物って堅苦しい」、「なんかルールがある」、「これは何が原因なんだろう?」とか、「何が原点なんだろう?」っていうのを、ノンフィクションの視線でいろいろ調べて、書いてます。
高橋:
だからどこに行けば買えるのかとか、どこに行けば着付けを教えてもらえるのかとか、どういう着付けがOKなのかとか、実はわかんないですよね、全然!
片野:
わからないですよね。正解がわからなくて、でも何かいろんな人に何か言われそう、っていう。
高橋:
そう、そう、そう!
礒野:
詳しい方がいる分野だから…
片野:
そうなんですよね。
礒野:
何か言われてしまうんじゃないかとか、ドキドキしますよね。
高橋:
着物警察!?
片野:
あっ、はい(笑)。
礒野:
なんですか? 着物警察って(笑)。
高橋:
「それは、ちょっと違うわよ」って。
礒野:
あ~!
片野:
親切な方もいらっしゃるんですけど。あの~、ちょっと言われるほうはプレッシャーだなっていう。
「着付けが違う」とか、「ちょっと帯が崩れてますよ」とか。
高橋:
でもそれも、「じゃあ、そういう決まりはいつできたの?」っていうふうに考えていくと…。
片野:
調べると意外と最近だったっていうのがわかっていて(笑)。
礒野:
ふぅ~~ん!
高橋:
だからけっこう、僕らはその偏見の中で、これもでも、そういう意味では犬と一緒ですよね? 犬は番犬で置いときゃいいって。
片野:
あっ、そうですね~。
高橋:
よく考えないでそういうふうにしてたけど、でも調べてみると、そうじゃない。
片野:
ええ、そうですね。
高橋:
自分の目で見てみたり、調べてみると、そこには違うものがある。
片野:
そうですね。思い込みの中で、割と皆さんが、そこを信じちゃってるっていうところはありますね。
礒野:
犬に、着物に、ということでしたが、お隣の、マドさ~ん!
マド:
……。
礒野:
マドさん、今日はおとなしくしてくれてましたね。
片野:
寝て…、寝てます(笑)。
高橋:
寝てる(笑)。
礒野:
すみません、夜遅くまでね。ありがとうございました~。
高橋:
あっ、起きましたね…。
マド:
(※目を開けて、ゆっくり起き上がる)
礒野:
今日のセンセイはノンフィクション作家の片野ゆかさんと、愛犬のマドさんでした。
ありがとうございました~。
高橋:
ありがとうございました!
片野:
ありがとうございました~!
【放送】
2023/09/15 「高橋源一郎の飛ぶ教室」
放送を聴く
23/09/22まで