【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~小児精神科医・脳神経科学者 内田舞さん~」

23/09/15まで
高橋源一郎の飛ぶ教室
放送日:2023/09/08
#著者インタビュー#文学#読書
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23/09/15まで
「きょうのセンセイ」は、小児精神科医で脳神経科学者の内田舞さん。1コマ目の「ヒミツの本棚」で紹介した『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』の著者で、アメリカ在住です。放送の時間は、現地の時間で午前8時半ごろ。お子さんを送り出したあとのご自宅からのリモート出演でした、実は、ご自宅にいたのは内田さんだけではなく…
【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
内田:内田舞さん(小児精神科医・脳神経科学者)
磯野:
源一郎さん、2コマ目です。
高橋:
はい。今日のセンセイは、ホントの先生ですね。小児精神科医で脳神経科学者の、この方です!
内田:
こんばんは~、内田舞で~す!
高橋:
内田さん、おはようございます、ですよね? そっちは!
内田:
そうですね。おはようございま~す。
高橋:
いま何時ですか?
内田:
今ちょうど8時半になったところですね、朝の。
磯野:
朝からありがとうございます。
高橋:
すみません、仕事前に(笑)。
内田:
大丈夫です(笑)。
ちょうど今日は、番組前の音声チェックが7時だったので、チェックをして、子どもたちに朝ごはんとかをあげて、子どもたちを送り出して、ちょうどここにたどりついたっていう感じなので(笑)。
ばっちりのタイミングでした!
高橋:
子どもたちは送り出されて、今いないと。
内田:
今はいない状況です。
磯野:
朝早くから、ご協力ありがとうございます。
高橋:
朝ね~、大変ですよね。
内田:
いえいえ、ありがとうございます。
高橋:
内田さんのお部屋が見えるんですけど、後ろにあるのはチェロとバイオリン? 違う?
内田:
これはですね、ガンバとヴィオールっていう古典楽器なんですね。
高橋:
古楽器!
内田:
そうなんですよ! 私の夫がチェリストなので、うちにはたくさん楽器があるんですけれども、その中のいくつかが、後ろに見えます~。
高橋:
「ヴィオラ・ダ・ガンバ」っていうやつですね!
内田:
そうです、まさに!
磯野:
今日はすてきなお部屋から、お話を伺います。リスナーさんからメールをいただいています。ご紹介しますね。ラジオネーム「柴犬母さん」、東京の女性です。
先ほど今夜のゲストは内田先生と知り、「大好きな源一郎さんの番組に、大好きな内田舞先生が出演されるなんて、なんという巡り合わせかしら!」と、鳥肌が立ち、初めて投稿しました。先生のお話からは、女性として、1人の人間として、とても学ぶことが多いので、楽しみにしております。
高橋:
ということで、内田さん、今日はよろしくお願いします!
内田:
よろしくお願いしま~す。
高橋:
僕も大変楽しみにしていまして、番組に出ていただくようリクエストしたら、「大丈夫かな、断られないかな?」と思って。
内田:
あはははは(笑)。
(※ここで、内田さんの愛犬の鳴き声が聞こえてきて…)
高橋:
あっ! 犬が吠えてる。犬が鳴きましたね。
磯野:
犬の鳴き声がね、聞こえました。
内田:
犬、そうなんですよ(笑)。子どもたちはいないけど、犬が「ワン、ワン、ワン!」と。
高橋:
ちなみに、すみません、種類はなんですか?
(※再び「ワン!」)
内田:
この子はですね、子犬の時にレスキューした子なので、どんな犬種かわからないんですけど、恐らくゴールデンレトリーバーとか、ジャーマンシェパードとか、チャウチャウなんかが入ってるんじゃないかって。
高橋:
かわいい~感じの! あはははははっ(笑)。
内田:
けっこう大きいんですけれども!
高橋:
あ~、いいですね~。犬の話になりそうなんで、やめます。はい(笑)。
内田:
あはははっ(笑)。
1コマ目の感想 ~ことばの力~
高橋:
今日は番組前半から、内田さんの著書『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診(み)る』についてのお話をしたんですが、聞いていて感想はいかがでした?
内田:
もう本当に、まずは(番組の冒頭で紹介されていた)源一郎さんの育児体験のお話から、もう早速、朝から涙してしまって。
高橋:
ありがとうございます(照れ笑い)。
内田:
その様子も、保育園に走っている様子とか。
高橋:
走ってね!
内田:
そう、それも本当に想像できて。私が今、同じような状況なんですけれども。それからやっぱり「ことばの力」ですよね。私が『ソーシャルジャスティス』を読んでくださった方からの感想でお聞きした話なんですけれども、格闘技ではどうも、相手からかけてくる技に名前が付いていると、それに対応できる確率が上がって…。
高橋:
あ~! なるほど。
内田:
「名前が付いていないものだと、対応できないことが多い」というふうに言われているそうなんですね。
やっぱり「コレがコレ!」っていうふうに名前が付くと、それに対応できるっていうのは、格闘技でも日常生活でも同じなんだろうなって思いましたし、あとやっぱり、1回名前が付いてクリアに見えると、まさに「しずかちゃん」* のこともそうですけど、ムズムズしていたことが1回クリアに見えてしまうと、もう見えなくなることはない、というか…。
(*:内田さんの著書『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』で、「「しずかちゃん」に気づかされた日本の女性観」という節があります)
高橋:
うんうん。
内田:
見えずには…、見えずにはいられない、というか(笑)、そんな感じになるもので。
1回誰かが言ってくれると「あっ、そうだよね」と気付くことが、なかなか気付けないっていうのが、面白いものだなって思っています。
高橋:
面白いと思います~!
内田さんの仕事は、あの~、僕はこの本と『天才たちの未来予測図』を読ませていただいたんですけど、あれはほとんど、Q&Aでできてるんですが。
内田:
そうなんですよね。
高橋:
お仕事としては、ずいぶん、僕の個人的な感想ですが「すごく作家っぽいな」と。
内田:
あっ、ありがとうございます!
高橋:
要するに、この本で、もちろん現実のことがいろいろ書かれて、現実の問題についてね、深く書かれているんですけども、でも必ず「ことばの問題」ですよね? 出てくるのは。
内田:
そうなんです。
高橋:
きちんと「ことばをクリアにする」っていうことから、1歩前へ進む、と。
内田:
本当にその通りです。
高橋:
それがやっぱり、なかなかすてきだと思いました。
内田:
ありがとうございます。
小学校だけで、3カ国、5回転校
高橋:
じゃあちょっと、いくつか質問をしていきますが、プロフィールをお聞きしたいんですけど、1コマ目で東京生まれとご紹介しましたが…、育ちは?
内田:
育ちは本当にいろいろなんですよね。生まれは東京で、今、実家は横浜なんですけれども、小学校時代は特に、うちの家族は両親の仕事の関係で引っ越しが多くって。
私はアメリカ、スイス、日本の3カ国で、5回転校したんですね、小学校だけで。なので、育ちはと聞かれると、なかなかひと言で答えられないような生い立ちでした。
高橋:
僕もね、引っ越しとかしょっちゅうしてるんで、転校すると、転校するだけで、なんかイジメられてる感じしますよね!? そもそも。
なんかね、環境が激変してね…。
内田:
そうですよね。もちろん、何ていうか、まぁあの~、つらいこともあったんですけど、でもやっぱりその多様な環境で育ったから、国が変われば求められるものも違って、自分に向けられる視線も違う、みたいな。そしてマイノリティーの立場を経験することもできましたし、やっぱりそういうことを考えると、その経験がたぶん今の私につながっているんだろうなと思うので、悪いことばっかりじゃ、全然なかったですね~!
高橋:
そうだと思います!
この番組で、準レギュラー化している方たちが、実は何人かいましてですね。
内田:
はい、はい。ええ。
高橋:
詩人の伊藤比呂美さん。それから漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリさん。それからライターで作家のブレイディみかこさん。
内田:
はい、はい、はい!
高橋:
みんな共通してて、「日本人で、外国人の夫がいて、外国に住んでいて、子どもがいる」という(笑)。
内田:
あっ、なるほど!
高橋:
内田さん、4人目ですよ。あははは(笑)。
内田:
私も準レギュラーを目指して、がんばりたいと思います(笑)。
磯野:
あははは(笑)。
高橋:
僕ね~、共通するものがやっぱりあるなっていうふうに、皆さん。
いちばんわかりやすい違いは、物事を考えるフレームが、普通の日本人とぜんぜん違いますよね、やっぱ。あははっ(笑)。
内田:
あ~、なるほどなるほど。いや、そうですよね。
こうやって『ソーシャルジャスティス』の本の中にも書いたんですけれども、これもちょっと脳科学的に説明できるところもあって、私たちは習慣というか、毎日いろんな同じようなものを目にしてたりとか同じものにしか触れてないと、そこの部分って脳の中で「オートパイロット化」されるところがあって、「オートパイロット化」されたものというのは、“これについては考えなくていいよ”って、脳の考える部分が抑制されちゃうんですね。
なので、それが固定観念だったりとか…。
高橋:
偏見になったりするわけですよね。
内田:
そうそう! 偏見になったりとかするわけで。
その中でちょっと違うものを見たりとか、ちょっと違う経験をするっていうだけで、考える部分の脳が活性化されるので、そこでその「オートパイロット化」されたものがちょっと緩くなるというか、ちょっとフレキシブルになってくるんですよね。
だからまぁ、何て言うんでしょうね…、その経験ってすごく重要なんだろうなと思いますね。
高橋:
と思いますね。
だから放っておくと、要するに僕らは固定観念と偏見にとらわれて、動きが取れなくなっちゃうんですよね?
内田:
そうなんですよね。
高橋:
それが普通だと考えると、そういうのをぶち壊しにやってくる、なんか…、何かですよね(笑)。
内田:
うふふふっ(笑)。
子どもの「共育て」
高橋:
さっきちょっと、子育ての話をしました。あっ、今は「共育て」で(笑)。
(源一郎さんの番組冒頭のコトバで、誰かとともに育て、育てられる、ということから、子育てを「共育て」と言いたい、という話をしていました。)
内田:
共育て、共育て! うん、うん!
高橋:
共育てで、びっくりしたのは、子どもって全く予測不可能じゃないですか?!
内田:
そうですよね~。
高橋:
他者というか、他人で。
もうね、最初から「子育てをこうやろう!」っていうのも、途中で諦めちゃって。全部受け入れるしかないでしょう!?
内田:
最初の2週間ぐらいで、ええ、そうですよ(笑)。
高橋:
ああいうのが、やっぱり偏見っていうか、子育てをこうやろうと思って始めても、だいたい1週間で全部崩壊するでしょう(笑)。
内田:
本当にそうなんですよね。うちは今、子どもが8歳、6歳、2歳なんですけれども、もう三者三様で、1人目のときにこれがうまくいったから、うまくいくだろうと思って2人目にやってみたら…。
高橋:
ぜんぜん違う。
内田:
ぜんぜん違う反応だったとか。やっぱりね、子どもは個人なんですよね。なので自分の持っている慣習だったり、自分の持ってる「こうなるよね」っていう感覚で臨むと、それはもうガラガラと打ち壊されてしまうものですよね。
高橋:
しかし、3人でしょ!?
2人でも死にそうだったのにね…。まぁ世の中には3人、4人、5人と育てていらっしゃる方もいるんで、言えないんですけど。でも本当に大変ですけど、まぁあの~、そのうち大きくなりますからね(笑)。
内田:
そうですね。ありがとうございます(笑)。
すっごく大変です。
小児精神科医のお仕事って?
磯野:
育てながら小児精神科医のお仕事をされていて…。
高橋:
そう! それで、小児科の先生はよく会う、精神科の先生も…。
「小児精神科」って比較的珍しいと思うんですけど、普通の精神科医とどこが違って、何が大切なのかっていうのをちょっと教えていただけますか?
内田:
そうですね。子どもの精神科医ということで、私のやっていることは、子どもの感情だったり行動だったりでお困りの方を診察する医師の仕事ですよね。具体的には本当に「うつ病」だったり「双極性障害」だったり「不安症」「ADHD(注意欠如・多動症)」などの症状のあるお子さんの症状がよくなるように、カウンセリングだったりとかお薬を使って治療する仕事なんですけれども、大人と違うという点に関しては、やっぱり子どもの脳っていうのは発達している段階なので、大人の脳もまだまだ発達しているんですけれども、完成って、「なにをもって完成っていうの?」っていう感じではありますが、特に本当に成長段階の脳であるので、その場その場で必要になる介入だったりとか、その場その場でお困りになってることっていうのが、どんどんどんどん変わっていくっていうところがあるんですね。
そして、ちょっとした介入でも、ものすごくよくなるっていうお子さんも本当にたくさんいましたし、長く症状を抱えられている方に関しても、もちろんご家族、みんなも心配されていて、一緒に手を取り合いながら歩んでいかなければならない関係、っていうことも多いですね。
もう1つは、やっぱり精神科全体に関して社会的な偏見っていうのがあるとは思うんですけれども、特に子どもの精神疾患っていうのは、例えば、長年言われていた、子どもに対して母親がすごく冷たいから自閉症の子になる、とかね。
磯野:
印象論とかね。
内田:
そうなんですよ。本当に科学的に、全く根拠がないどころか、全くそれは間違いだっていう事が、科学的に何度も何度も証明されているにも関わらず、いまだにそういった言説っていうのが、社会の中で語られたりとか、それを信じてはないんだけれども、「私のせいなのかな」って思って罪悪感を感じられてしまってる親御さんとか、その方々とやっぱり話す中で、科学っていうことの大切さも感じますし、先ほどお話しした「ことばの大切さ」ということも、とても感じます。
高橋:
1コマ目で言った「中道の誤謬」ですよね? そういう説もあるって…。
(中道の誤謬(ごびゅう):極論と極論の中間地点が正しい位置だという論理の間違い)
内田:
まさにそうなんですよ。そうそうそうそう!
高橋:
そういうことでは救われないですよね? お母さんたちがね。
内田:
うん、そうなんですよ。
全く科学的な根拠がないことに「そういう説もあるよね」って言ったところで、これから何をやったらいいのかっていうことを知りたい方々にとっては、何も役に立たないどころか、本当に効果のある介入方法だったりとか、本当に効果があるいろんなものに出会う確率を下げてしまうっていうか、ハードルになってるようなものになってしまうので、本当に残念だなと思います。
小児精神科医が、診る社会
高橋:
で、え~っと、僕が今回いちばん聞きたかったことの1つなんですけど、この本はサブタイトルが「小児精神科医、社会を診る」というふうになっています。
内田:
ええ。うん、うん。
高橋:
つまりこれは、内田舞さん個人っていう、小児精神科医という職業を持っている内田さんが社会を診て、それを発信するということですけど、「小児精神科医が診る社会っていうのは、どういう見え方がするんだろうか?」っていうのが、どうですか、そこらへんは?
内田:
そうですね、私のこの本のプロローグにも書いたとおり、私は本当に小さいころから人間が大好きで、こうやって初めてお会いするお2人とお話しするのもすごく楽しんでおります。人っていうものが、本当に大好きなんですよね。そしてそれと、科学が好き。
そして、ソーシャルジャスティス…、本のタイトルにもした「ソーシャルジャスティス」ってものが、本当に私が小さいころから、心の声にあったなと思うんですね。もしかしたら、先ほどお話しした多様な環境の中で育って、人種差別を受けることもあったりとか、女性としてマイノリティーを経験することもあって、私にはコントロールできないような人種だったり性別っていうような要素を理由に敬意が示されないような状況、権利や機会が奪われるっていうような状況っていうのも経験したわけで。その中からすごく学ぶことっていうのは、もちろんそれは嫌な経験ではあるんですけど、その中から気付くこと、学ぶことっていうのがあって、まぁ1つには、社会が私をどう見るかとか、社会から求められてるのが何かっていうことよりも、自分自身、私が何になりたいかっていうほうが、ずっと大切だなっていうのも考えさせられたんですね。
磯野:
う~ん。
内田:
なかなか、そういうことをしっかり考える機会がないと、やっぱり世の中にはびこる偏見とか、誰かの尊厳がないがしろにされているような状況とかを気付けない。自分自身に起きていたとしても気付けないような事が多いんですけど、その中で私が、何ていうか、自分でやっぱり経験から気付くことができる要素が、もしかしたらほかの人よりは多いのかもしれないということと、やっぱり人間が好き、サイエンスが好きってこともあって、人が生物として、脳機能っていうものを使って、どうしてこういう反応をするんだろうとか、どうして、そういう反応が合わさった時に社会が動くんだろうとか、その1個1個を考えることっていうのが、私の趣味のようなもので、まぁなんか好きなんですよね~。
磯野:
すごく生き生きとお話ししてくださって、ありがとうございます~。
内田:
ありがとうございます~!
内田さんの「書くこと」への思い
高橋:
内田さんは、書くことが本業ではないと思うんですが、こうやって本を出して、書くことに至った理由っていうか、やっぱりちょっと違う…、小児精神科医の仕事は超えてますよね?
内田:
あはっ(笑)。そうですね。
高橋:
発信するっていうことは。
内田:
そうですよね~。でも、小児精神科医の仕事って、先ほど言った話の中で、実際に本当に不安を抱えていらっしゃる親御さんと、本当に苦しまされているお子さんと対話する事が私の毎日なんですよね。
その中で、その不安をキャッチして、それに共感しながら、科学でエビデンスを吟味して、で、それを提案して、介入方法を提案して、じゃあ一緒に選んで前に進んでいこうっていうのは、何て言うんでしょうね、それが私が日常的にやってることで、今はそれを社会に対して「1 対 多」のような感じであるんですけれども、やってるところもあるのかなと思って、私としてはすごくつながってるものがあるんですよね。
高橋:
なるほどね~。
炎上から見る、アメリカと日本の違い
高橋:
この本のやっぱり「炎上への処方箋」というのは大きいテーマになっていますが、アメリカと日本では炎上の仕方も違うし、内容も違うと思うんですよね。
内田:
ええ。うん、うん、うん。
高橋:
その違いと、それからアメリカにいる内田さんから見た日本っていうのは、どういうふうに見えるか?
ちょっとこれは番組の残り時間があまりないんですけど…、ぜひ聞きたいなと思って!
内田:
そうですよね。アメリカに関しては国自体が本当に分断をしている国なので、共和党と民主党という点でもそうですし、支持政党によって、何で全てにおいて、こんなにパッツリ分かれるのかな、っていうのが私もわからないようなことなんですよね。
例えば「大きな政府がいいですか、小さな政府がいいですか?」ということに意見が分かれるっていうのはわかるんですけれども、どうしてそれと同時に、例えば「コロナが存在する、存在しない」みたいなのが分かれるんだろうとか! 人工妊娠中絶に関して…。
高橋:
意見が分かれてますよね、完全にね。
内田:
そうなんですよ。
パッツリ分かれて、「中絶してはいけない」っていう州と「いや、それは女性の判断だ」っていう州にパッツリ分かれていて、そのような、住む地域だったりとか支持政党によってお互いが攻撃し合うっていうのが、アメリカの炎上なんですが、これはすごい悪いこともたくさんあるんですけれども、その分、ものすごくエネルギーが強くって。
高橋:
あ~、なるほどね。わかりやすいですよね!
内田:
そうなんですよね。大きなエネルギーが、ものすごくわかりやすいエネルギーがグワッと上がって、それによって社会が前進する…。
高橋:
ところもあるんだね!
内田:
その姿っていうのも私は見てきたので、それはいいなと思います。その点、日本は、何て言うんでしょうね…、何て…。
高橋:
同じようですよね!?
内田:
アメリカのような分断は少なくて、同じようなところがあって、なので、1つのものが攻撃され始めると、みんながこぞってそこに行ってしまう、っていうのを見ました。あと、やっぱりモヤモヤとしたものがずっと抱えられて、そのモヤモヤが発現される場所が、炎上っていうところなのかもしれないなって感じていますね。
高橋:
だからやっぱり「モヤモヤのまま、炎上していく」と。これが日本の社会なんだな、と。
僕も、内田さんがおっしゃったように、1つ1つ言語化していくっていうことで、何とか対処していく…。そういう意味では、作家も、僕なんかね~、医者みたいなもんですかね? 社会の(笑)。
内田:
そうですね、本当にそうですよ。
高橋:
これからも内田さんのお話を楽しみにしてますので!
内田:
ありがとうございます~! 準レギュラーを目指して(笑)。
磯野:
今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
高橋:
どうも、ありがとうございました。
磯野:
2コマ目の先生は、小児精神科医で脳神経科学者の内田舞さんでした。
【放送】
2023/09/08 「高橋源一郎の飛ぶ教室」
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23/09/15まで