【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~フリーランスライター 畠山理仁さん~」

23/08/04まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2023/07/28

#文学#読書

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23/08/04まで

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「きょうのセンセイ」は、フリーランスライターの畠山理仁さん。1コマ目「ヒミツの本棚」のテキスト、「コロナ時代の選挙漫遊記」の著者で、20年以上、各地の選挙を取材してこられました。選挙とはどういうものなのか、一票を投じるということはどういうことなのかを丁寧に語ってきた畠山さん。源一郎センセイとはもう何年も前からの知り合い、ということなんですが、実はちゃんとしゃべった機会がなかったとか。そんな話から始まって、畠山さんがこれまで取材された「無頼系独立候補」のお話にぐいぐいひきこまれ…

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
畠山:畠山理仁さん(フリーランスライター)


礒野:
源一郎さん、2コマ目です。

高橋:
はい。今日のセンセイは、フリーランスライターの、この方です。

畠山:
畠山理仁です。よろしくお願いします!

高橋:
わ~い(拍手)。

礒野:
よろしくお願いします(拍手)。

高橋:
ふだんは「畠山くん」って、呼んでるんですけど、年下だからね。今日は「畠山さん」で!

畠山:
ちょっと、さっき、気持ち悪いなって思いました(笑)。

高橋:
「だれ?」って感じだよね。自分で言ってて、なんかゾクッとした(笑)。

礒野:
お2人はどういう関係でいらっしゃるんですか?

高橋:
それがですね~、実はもう、最初に会ってから10年以上…。

畠山:
11年、ですかね。

高橋:
11年…。あまり詳しくは言えないんですけど。そんなヤバイことではないんですけど(笑)。共通の知人がいて、だいたいその知人と3人で…。

畠山:
そうなんですよ。3人でお会いすることが…。

高橋:
もう何十回も、お会いしてるんですけど…。
その知人が、やたらとしゃべるんで!

畠山:
めちゃくちゃしゃべるんですよ。

高橋:
僕ら、しゃべったことないよね?!

礒野:
え~~?

畠山:
そう、そう! 僕と源一郎さんで…。

高橋:
会話した覚えがないでしょ?

畠山:
しっかりしゃべったことって無くて。

高橋:
11年で何十回も会ってるのに、しゃべったことが無いんです。

畠山:
そうなんです。「元気?」とか、それぐらいの…。

高橋:
そう、そう。「元気?」って言うと、その知人がさ「畠山!」って言ってるからね(笑)。

礒野:
よほど、その方がお話の主導権を?

高橋:
99%ぐらい。

畠山:
マシンガンのように。

礒野:
じゃあ、ゆっくり話すのは、今日が初めて!

高橋:
ドキドキしますね。

畠山:
あははっ(笑)。

高橋:
いや本当に、僕、畠山さんの本は読んで、すごく…。感想さえ言えなかったんだから(笑)。

畠山:
そうです。聞いたことなくて。

礒野:
お会いしても!?

畠山:
僕自身も大学生の時に、高橋源一郎さんの本を読んで「なんて面白い!」というか、「うわ~、すっげぇ自由なんだな~」っていうことを思ってたんですけど、初めて会った時に、そのこと言おうかなと思ってたんですけど、言えずに11年がたちましたね(笑)。

礒野:
たちすぎですね(笑)。

高橋:
たちすぎだよね~(笑)。いや~。

畠山:
1度もそんな話ししたことないんですよね。

礒野:
今日は存分にしゃべってください!

【畠山さんのプロフィール】

高橋:
まぁ、そういう個人的なことは、置いときまして。ということで、まずプロフィール。

礒野:
ご紹介させていただきます。1973年、愛知県のお生まれで、現在50歳です。

高橋:
50歳なの? あははは(笑)。もう「くん」じゃないよね(笑)。

畠山:
50歳という文字になってると、すごくショックですね(笑)。

高橋:
ということは、最初会った時は、まだ30代だったんだ!

礒野:
30代の後半ぐらいですね。

畠山:
そうですね~。

礒野:
愛知県で生まれ育って、高校まで過ごされたそうです。

畠山:
高校と、浪人1年までですね。

礒野:
お子さん2人の、お父さんでいらっしゃる。日曜日は息子と剣道教室に通って対戦もされている、と。

畠山:
はい。まだ子どもには勝てますね。

礒野:
息子さん、けっこう大きいんですよね?

畠山:
大きいですね。

礒野:
おいくつでいらっしゃいますか?

畠山:
あっ、身長じゃなくて…。21歳と14歳ですね。

高橋:
2人とも男の子?

畠山:
はい。大学生と中学生ですね。

高橋:
いろいろと大変ですよね。

畠山:
大変ですよ、いろいろと。

礒野:
でも、まだ勝てる? 21歳の息子さんにも?

畠山:
今はまだ勝てる!

礒野:
あっ、強いんですね~。

高橋:
もともと剣道をやってたってこと?

畠山:
中学生までやってて、で、やめたんですよ。こんなつらいスポーツを、高校に入ってもやったら死んでしまうと思って、中学3年まではすごく一生懸命やってたんですけど、やめて。20年ぐらいブランクがあったんですけど、子どもが小学校に入るときに剣道をやりたいって言い出して、剣道教室に連れてったら、「お父さんも、ちょっと竹刀を持ってみませんか?」って言われて。で、竹刀を持って振ったら、やっぱり経験者なので、うまいわけですよ。

礒野:
そりゃ、そうですよね~。

畠山:
「うまい!」って、すごく褒めてもらって…。大人になって剣道をやると、こんなに褒めてもらえるんだと…。

高橋:
褒めてもらいたかったのね~(笑)。

畠山:
こんな気持ちいいスポーツはやるべきだと思って。で、一緒にやり始めました。

高橋:
ホントにね、子どもを溺愛してるしね。

畠山:
まぁ、でも、子どもからは愛されてないかもしれない(笑)。

高橋:
あっはっはっ(笑)。

礒野:
いや、いや、いや(笑)。

高橋:
それはね、あらゆる父親がそうなんですよね。
え~と、ところで、先ほど1コマ目で畠山さんの著書『コロナ時代の選挙漫遊記』をご紹介させていただいたんですが、ほとんどエピソードをご紹介できませんでした。申し訳ございませんでした。

畠山:
いえ、いえ、いえ。でも、自分が書いた原稿なんですけど、読んでいただくと、「いいこと言ってるな~、書いてるな~」って思いましたね~(笑)。

高橋:
いや、ホント!

畠山:
「誰が書いたんだ?」って。

高橋:
キミだよ(笑)。

畠山:
って思うくらいに、自分で書いてる時も、頭の中で読みながらリズムとかを考えて書いてるんですけど。
やっぱり違う人に読んでもらうと、「あっ、こんな味わいが違うんだ!」って、びっくりしました。

高橋:
「音にする」とね、けっこう違うと思うんですよね。1コマ目の紹介にもありましたけど、「泡沫(ほうまつ)候補」という言葉があるけれども、それはちょっと蔑称(べっしょう)なので、畠山さんは「無頼系独立候補」っていうふうに呼んでいます。そういう人たちの戦いを挙げた畠山さんの著書『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』を、僕は本当に感心して。実はこれを紹介しようと思ったんだけど、紹介すべき箇所が多すぎて!

礒野:
とてもとても…。

高橋:
とても無理なので。

畠山:
1回では終わらないですね。たぶんね。

高橋:
そう。放送を畠山さんのためだけに何回も使えないので(笑)。

畠山:
使ってもらっても僕は構わないですけど(笑)。

高橋:
選挙特集ね(笑)。なので、この本の話もちょっとしたいと思うんですけど。

選挙取材に熱中するようになったきっかけは?

高橋:
まず「畠山さんと言えば選挙。選挙と言えば畠山さん」なんですけど。

畠山:
うれしい!

高橋:
なんで、こんなに選挙に熱中するようになった、きっかけは?

畠山:
そもそも最初に、自分が選挙は面白いなとか、選挙すごいなと思ったのは、大学生の時からライターの仕事をやってるんですけど、そのライターの仕事をやり始めたころの知り合いが、選挙に出るっていうことで、「手伝いをしないか?」って言われたんですね。

高橋:
何年ぐらい前?

畠山:
大学生のとき…。

高橋:
あっ、そうか。じゃあ30年ぐらい前なんだね。

畠山:
そうですね。それぐらい前の、21歳とか20歳とか。

礒野:
じゃあ、やっぱり30年前ぐらいですね。

畠山:
そうですね。手伝ってみないかって言われて、選挙カーの運転と、選挙カーでアナウンスをする、男性の場合は「カラス」って言って、女性の場合だと「ウグイス」って。

礒野:
いわゆる「ウグイス嬢」と言われますね。

畠山:
あれをやったんですよ。街なかで大音量で、マイクで好きなことをしゃべっていいって…。

高橋:
好きなことじゃダメだよ(笑)。

畠山:
あっ、まぁ一応ね、台本があるんですけど。

高橋:
基本的には自由に?

畠山:
そうです。基本的に台本に書かれていることの節回しとかも、自分のオリジナルの節回しで言ってもいいっていうので「なんだ、これは!?」「こんな楽しいことがあるんだ!」。しかも、バイト代ももらえて、というのを経験して、面白いなって。

高橋:
それがきっかけだったんだ!

畠山:
それで、選挙事務所に行くと、大学生のときってあんまりいろんな幅の年齢の、幅の人と会わないんだけど、事務所に行くと、ふだん何やってるか分かんないような、ジャージにサンダル履きのおじさんが、いちばん偉い席に座ってたりするんですよ。

高橋:
「あの人、誰?」みたいな。あははは(笑)。

畠山:
そう、そう、そう。そういう人とか、事務所に来る人たちも、本当に幅広い人が来て。で、対立候補のね、悪口とかを言ってたりするわけですよ、面白おかしく。「あいつは本当はね、あんなね、格好よくしてるけど、本当はこうなんだよ!」みたいな話とかをしているのを、大学生で初めて、いろんな幅の人から「こんな口汚くののしるんだ」みたいなことを目にして…。

高橋:
一種のエンターテインメントの空間のような?

畠山:
「すごい劇場だな~!」と思って。しかもお金までもらえて。

礒野:
法律で定められたアルバイト代ですね。

畠山:
「そういうところだ」って気がついて、「選挙は面白いな」と思って、それで雑誌の仕事をして、いろんなニュースの現場で取材をしたりとか。

高橋:
それは学校を出てから?

畠山:
いや、学校をですね、結局…。もともと記者というか何か取材して書く仕事をしたいと思って大学に入ったんですけど、大学2年生の時から、もう今の仕事をしはじめちゃったんで。

高橋:
大学にいる理由が無くなったのね?

畠山:
そうなんですよ~。そうなんですよ、って言うか(笑)。本当は卒業しようと思ってたし、親も卒業してほしいと思ってたと思うんですけど。仕事のほうに傾倒してしまって。

高橋:
大学どころじゃなくなったんだね。

畠山:
卒業できないなっていうことが分かって、もう卒業しないで、そのまま「やりたいことやってんだから、このままでいいじゃないか」ということで、やって。で、雑誌の仕事をやってるときも「選挙のテーマ」っていうのを毎週ね、会議で出してたんです。

高橋:
あ~! そのころ、最初からだよね!

畠山:
会議で、めちゃくちゃウケるんですよ。

高橋:
えっ? そうなの?

畠山:
結構ね、面白い…。例えば、選挙に発明家の人が出てる、と。

高橋:
はい、はい。あの有名な発明家ね。

畠山:
そうです、そうです。「発明家の人が出てる。じゃあ何で、その人は当選する発明をしないんですか?」っていうことを聞きに行きたいってのをテーマに出したんですよ。そしたら、それが企画として通って。

高橋:
通ったの?

畠山:
通ったの!

礒野:
へぇ~!

畠山:
で、聞きに行ったら、「いや、もちろん発明はしている!」って、言われて。

高橋:
あはははっ(笑)。そうなんだ~。

畠山:
え~っ!? で、どういう発明かって言うと、「ヒョウクル」っていうと。

高橋:
あ~、票が来るから?!

畠山:
「票が来るから、ヒョウクルっていう発明をしてる」っていうことを聞いたりして、面白いねっていうので。その後も、いろんな選挙のテーマを毎週出してって、会議ではウケるけど、選挙って期間が短いので週刊誌だと間に合わないんですよ。

高橋:
あぁ~! もう終わっちゃったとか。

畠山:
ネタが古くなっちゃう。特に日本の選挙で、1週間とかで終わっちゃうやつだと、テーマを出して原稿を書いたときに、もう結果が分かってて、結果は分かってるんだけど、結果が分かる前に記事書かなきゃいけない、みたいなので。だからニュースの商品としては、扱うのがすごく難しい。だけど、そのテーマをずっと出してたら、政治の連載をやるっていうのが週刊誌の中で…。
大川興業の創設者・大川豊さんという方の『日本インディーズ候補列伝』という本のお手伝いさせてもらって。で、その選挙の面白さ…。大川さんも、やっぱり選挙にお出になっている方っていうのはすごく面白いから全員に会いたい、っていう方だったんで。

高橋:
そういうスタンスは、そこから始まってるんだね?

畠山:
そうなんです! 僕の選挙取材の原点は、大川興業の大川総裁が「本当に選挙に出ている人はエネルギッシュで、面白いし。時代の先を行き過ぎてるアイディアなんだけど」「だけど、それは、のちに当選した人が、10年後とか20年後に、実現することもあるんだよ」と。

高橋:
あまりにも早く来すぎて、そのアイディアが。あとで、当選者が…、ね!

畠山:
「当選者が実現するってことがけっこうあるんだよ」って話を教えてもらって。で、話を聞きに行くと、やっぱり本当に皆さんパワフルで。っていうか、パワフルじゃないと選挙に出られないんですよ。日本の選挙は。

礒野:
ええ、ええ。

畠山:
選挙制度のハードルの高さがあって。供託金もそうですし。周りからの目ですよね。家族からも「立候補する」って言ったら、本当に「離婚する」って言われたりとか。

高橋:
『黙殺』とか読んでも、こういう「無頼系独立候補」でいちばんの問題は、家族の反対ですよね。

畠山:
そうですね。

高橋:
「そんな恥ずかしいことを、なぜするの?」って。

畠山:
そう、そう!
だから、届け出に行こうと思ったら、戸籍謄本とか準備していた書類を隠されたり、燃やされたり…。

高橋:
あははっ(笑)。

畠山:
車で行こうと思ってたら、車をパンクさせられたり!

高橋・礒野:
あはははっ(笑)。

礒野:
え~? そこまで!?

畠山:
そこまでして、立候補を止めようとするっていう。

礒野:
周りが!

畠山:
周りが! そう、そう、そう。

礒野:
それだけ大変なこと、ハードルが高いっていうことですよね。

高橋:
それはちょっと…。

畠山:
小説みたいな話でも、全部ね、実話なんですよ。

礒野:
事実なんですね~。

畠山:
事実なんです。

高橋:
へぇ~。それでまぁ始めたんですよね。

畠山:
はい、そう、そう。それで選挙取材っていうのは面白いっていうことで、ずっとやってて。やっぱり本当に面白くって。自分の頭で考えている常識っていうものが、毎回、裏切られるわけですよ。本当に“人間百科事典”みたいな現場で。先ほどもね、紹介していただきましたけど、選挙の現場は本当に、取材の現場として、ハズレが本当に全くなくて。だって、ねぇ、「私は超能力者です」って言う方とか。

礒野:
ええ、ええ。

高橋:
例えば『黙殺』の中にもけっこう出てて、ご紹介が今回はできなかったんだけど。強烈な印象を受けた候補者って、例えばどんな方ですかね?

畠山:
そうですね。やっぱりいろいろいらっしゃって。え~、いきなりね「170kmの速球を打つところを見てほしい」っていう…。

高橋:
候補者(笑)。

畠山:
候補者。

畠山:
第一声の演説が終わったあとに、「いや~、すごいですね。これから、どういうことをやっていこうと思いますか?」って聞いたら、「170kmをね、打てるようになったんですよ。ぜひ見てほしい」って。

礒野:
野球経験者?

畠山:
いや、「野球経験者じゃない私が頑張って、打とうと思って努力したら、打てるようになった。小学校、中学、高校と、体育の成績「3」。野球も1度もやったことはない。その私が一念発起して、60歳を超えてから、170kmの速球を打とうと思って、通い始めたら…。独学でね。打てるようになった! それを見てほしい!」「努力すれば、人間できるんだ!、っていうことを、知ってほしい!」

高橋:
それを証明してる、っていうね。

礒野:
そこにつながる!

畠山:
でも、ドラフトじゃなくて選挙…。

高橋:
あははは(笑)。ドラフトじゃなくて…。

畠山:
ドラフトじゃなくて選挙だからね~(笑)。

高橋:
170kmを打ててもね~。

礒野:
なかなかね~。

畠山:
初めはその人が、嘘をついてると思っちゃったんですね。

礒野:
あ~。

畠山:
そもそも「170kmのバッティング・センターってあるのか?」と思ったんですけど、調べたらあって。で、その方は落選しちゃったんですけど、そのあとね、偶然、渋谷で再会しまして。
けっこうね、僕、そういう引きが強くって。

高橋:
よく偶然、会ってるよね?

畠山:
そう。いろんな人と偶然。「こんな!」って思うぐらい、会うことがあって。で、会った時に「170kmのバッティング・センターありました。ごめんなさい。疑ってたんです」って言ったら、「今から打ちにいきます。見にきますか?」って言われて、見に行ったんですよ。今年に入ってね。

礒野:
けっこう最近ですね。

畠山:
最近です(笑)。
最初は自信満々だったんですけど、電車で、山手線でだんだんバッティング・センターに近づくにつれて、その人が、(小声で)「打てるかなぁ~」って。

高橋・礒野:
あははははは(笑)。

畠山:
急に自信がなくなって、大丈夫かなと思ったんですけど、行ったら「カキーン!」。

高橋:
あてたの? 170kmに…?

畠山:
「ボコッ!」って。

礒野:
うわ~っ!

畠山:
「すご~い!」って、拍手して、じゃあ僕、打てるかな~と思って、「僕も頑張って打ってみま~す!」って言ったら…。

高橋:
かすりもしないでしょ?

畠山:
打てちゃったんです。

高橋:
あはははははっ(笑)。

礒野:
打てちゃいましたか。

畠山:
僕も打てちゃって。でも「やる気になる」とかね「挑戦をすれば、やっぱり打てる可能性がある」っていうことを、教えてくれたり。

高橋:
でも一般有権者には、なかなか伝わらないね。

畠山:
伝わらないと思いますね。でも本当にいろんな方がいて、取材に行くと、じゃあ、君の話は聞くから、取材を受けるから、「まず横になろう」と言われて。

高橋:
ちょ、ちょ。ちょっと待って(笑)。

畠山:
「なんでですか?」って言ったら、「いや、俺は横になりながら話すのがいちばん自然体だから…」。

高橋・礒野:
あ~!

畠山:
「お前も横になってインタビューしろ」っていう。

高橋:
候補者と(笑)。

礒野:
初対面で?

畠山:
その前に1回会ってるんですけど、家に行って…。

高橋:
1対1で?

畠山:
1対1で、横になりながら(笑)。

高橋:
インタビューしたの?

畠山:
インタビューしました。

礒野:
ユニークな方が多いですね~。源一郎さんは、この本の中で気になった方が、何人かいらっしゃるんですよね?

高橋:
僕、何人かいてね。例えば、いちばんびっくりしたのは、この『黙殺』の中に、スーパークレイジー君さんていう、東京都知事選にも出て、いろんな選挙に出て、埼玉県の戸田市議選で当選無効になって、宮崎市の…。

畠山:
その前に宮崎県知事選挙に出て、で、今年に宮崎市議会議員選挙で、2番目の得票で当選。

高橋:
そう、そう、そう、そう。

礒野:
今年の4月の選挙で当選したんですね。宮崎市議会議員。

高橋:
経歴も含めて、最初は「キワモノ」的に見えてたじゃないですか。

畠山:
そうですね。

高橋:
ちょっと、畠山さんから紹介してもらえますか? スーパークレイジー君さんが、どんな人なのか。

畠山:
最初は、もともと歌手をやっていて。

高橋:
あぁ、それが名前、芸名だ。

畠山:
そうですね。「スーパークレイジー君」という芸名の歌手だったんですけれども、銀座の高級クラブのお店で、雇われ社長をやっていて、政治家の方とかも、よくいらっしゃるお店なんだ、と。
で、政治家の人たちを見ていて「僕も、僕が政治家をやってみたほうがいいんじゃないか」と。ご自身は少年院とかにも長く入っていた経験があって、そういう「更生を手伝いたい」とか、「更生してほしいと思うような人たちの気持ちが分かるのは自分だから、そういう人も議員になったほうが、いいんじゃないか」ということで、最初は東京都知事選に出たんですよね。で、まぁ「売名行為です!」って、最初は言い切って、出てたんですよ。

高橋:
うん。

畠山:
ところがその選挙運動をやっていくに従って、見てくれてる人たちが「君のような若者は、やっぱり政治の世界にいくのは、とてもいいことだから、頑張ってくれ」っていう声を聞いて、直接声をかけられたら、「俺、売名行為で出ているつもりだったのに、そんなに一生懸命応援してくれる人がいるんだったら、これはふざけて出られないぞ」ということで、真剣に取り組んで、当選するまではやろうということで、いろんな選挙に出て、挑戦をし続けて。

高橋:
結局、当選しちゃったんです。しかも上位での当選だからね。

畠山:
そうですね。

高橋:
そういう意味では、僕らはね、いわゆる「無頼系独立候補」って言うと、「そんなのどうせ、当選しないよ」と、思いがちなんだけれども、実際には彼以外にもね、当選して。つまり何か、そういう意味では、決して可能性がないわけじゃないんですよね。

畠山:
そうですね。当選する人の特徴としては、当選するまで立候補し続けるっていう人は、やっぱり当選しますね(笑)。ただやっぱり、日本の場合、選挙に出て落選すると、すごくダメージが大きいですよね。社会的にも、周りから「落選した人」なんて言われるんじゃないかっていうおそれがあって出ない、ということとか。経済的にも供託金を没収されたり、選挙費用が公費でまかなえないので、自分で、自腹で払わなきゃいけなかったりっていうことで。

高橋:
そうね。今おっしゃったけど、日本の選挙制度ね。これは本の中にも書いてあるんですけど、供託金は、ものすごく高いですね。ほとんどの国は、無いか、ものすごく安いか。

畠山:
そうですね。だから「何百万円単位」というところは、ほとんど無いですね。韓国と日本くらいですね。

高橋:
選挙期間も短くて。だから結局、出るハードルがものすごく限られてしまっている中で、僕らは何か、もう諦めちゃってるっていうところがあると思うんで、畠山さんはそれに対して、「決して諦めてはいけない」と。

畠山:
そうですね。

高橋:
先ほどの感動的な。あははは(笑)。

礒野:
「自分が出てみよう!」とか。「自分が出ないなら、誰かに投票してみよう」っていうメッセージをね。

畠山:
そうですね。

高橋:
実は畠山さん、今日はニュースがあるんじゃなかったですか?!

畠山:
ニュース。あぁ、あります、あります。実はこうやって選挙の取材を続けているとですね、僕のような無名の…。

高橋:
フリーランスライター。

畠山:
泡沫ライター。

高橋:
あはははっ(笑)。無頼系独立ライター!

畠山:
無頼系独立ライターに注目してくれる方がいらして。なんと、僕の選挙取材を追いかけたドキュメンタリー映画が、今年の11月に全国ロードショーで(笑)。

高橋・礒野:
え~~~!!!

畠山:
ウソのような…。

高橋:
それ、だまされてるんじゃないだろうな(笑)。

畠山:
僕もね、だまされてるんじゃないかと思って、何回か聞いたんですけど、どうやら本当らしいと。

高橋:
タイトルは?

畠山:
『NO 選挙,NO LIFE』っていう。

礒野:
ご本人が、じゃあ、お出になって…。ドキュメンタリーなので。

畠山:
そうですね。芝居じゃなくて、普通に僕が選挙取材をしているのを、後ろから、肩越しに追いかけてくれたっていう。

高橋:
一部はもう既にテレビで?

畠山:
そうですね。1度テレビでやってもらったんですけど、それじゃとてもじゃないけど尺が足りないということで、もっと詰め込みたいことがあるということで、もうちょっと長くなって、やってくれるという。

高橋:
取材をする側から、される側になった感想はいかがですか? 畠山さん。

畠山:
いや~…。

高橋:
変な感じ?

畠山:
変な感じですね。いやもう「ホントいつも、皆さん取材に応じてくださって、ありがとうございます」って。

高橋:
取材風景も、もちろん一緒に映ってるっていうことですね。

畠山:
そうですね。僕自身を、後ろからですけれども、当然、選挙に立候補している方が主役だと僕は思っているので、その方々なしにはできなかった映画だし、やっぱりその人たちの訴えとか、生き方っていうのが一緒に見えたらいいんじゃないかなっていうふうに思いますね。

高橋:
あのちょっと気になることがあるんですけど、ギャラはもらったの?

畠山:
いや、もらってないですね。「払いますよ」って言われたんですけど、「いや、いいです~」って。

高橋:
なんで?

畠山:
ねぇ~(笑)。

礒野:
それをもとに取材費とか、思っちゃいますけど。

高橋:
でも、やっぱり「もらえない」ってこと?

畠山:
もらったら、何かこう、演技しちゃうんじゃないかなって、思って。

高橋:
あぁ~。

礒野:
なるほど~。

畠山:
いい映画を撮ってもらうためには、もう…。
お断りして…、しまいました(笑)。

高橋:
次のときはもらって(笑)。取材費にするためにね。

礒野:
2コマ目のセンセイ。今日はフリーランスライターの畠山理仁さんでした。ありがとうございました。

高橋:
ありがとうございました~。

畠山:
ありがとうございました!


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