【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~詩人 伊藤比呂美さん~」

23/07/28まで

高橋源一郎の飛ぶ教室

放送日:2023/07/21

#文学#読書

放送を聴く
23/07/28まで

放送を聴く
23/07/28まで

2コマ目は月に一度の比呂美庵!ということで、「きょうのセンセイ」は、詩人の伊藤比呂美さん。1コマ目で紹介した源一郎センセイの著作の感想でまず盛り上がりました…

【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
伊藤:伊藤比呂美さん(詩人)


礒野:
2コマ目です、源一郎さん!

高橋:
はい。今日のセンセイは詩人の、この方です。

伊藤:
伊藤比呂美です。

高橋:
わ~い。今日もよろしくお願いしま~す(拍手)。

伊藤:
よろしくお願いいたします。

高橋:
いつ見ても元気そうですね。

伊藤:
いつも元気ですよ(笑)。

比呂美庵の前に…、1コマ目「ヒミツの本棚」の感想

伊藤:
「これも、アレだな」(1コマ目でとりあげた源一郎センセイの著書)の話をしましょうよ。いや~、何か面白かった~! そうそう、さっきの「ヘアとヘア」の話。

高橋:
はい、はい、はい。

伊藤:
むか~し子どものころに、ナッちゃんとチャコちゃんの『パックインミュージック』ってのを聞いてたんですよ。

高橋:
懐かし~!

礒野:
な、な、なんですか?

伊藤:
知らないの?

高橋:
深夜放送。

伊藤:
深夜放送。ここの局じゃない。

高橋:
ラジオ、ラジオ!

礒野:
深夜ラジオ?

高橋:
深夜ラジオ。深夜放送。

伊藤:
そしたらね、必ず『金瓶梅』をね、ナッちゃんがね、あの声で読んでたのね。あれをね、ホントに、「うわ~っ!」って思い出して、「これも、アレだな」みたいになった。

高橋:
あぁ~。エロチックなシーンがあるんで。

伊藤:
そう。

高橋:
深夜に朗読するんだよね。

伊藤:
するんです。毎週、毎週。

礒野:
へぇ~!

高橋:
ホントやっぱり、ラジオも自由でしたよね。

伊藤:
そうですね~。

高橋:
なかなかね、今は難しいんじゃないですか。

伊藤:
ねぇ! 「どこの、どの章が良かった?」って聞いて!

高橋:
どの章が良かった…。あははっ(笑)。

礒野:
うふふふふっ(笑)。

高橋:
どの章が良かった?

伊藤:
「ぼくらの仏教なんだぜ」(編集担当注:1コマ目のテキストの中で、伊藤さんの著書について書かれている章です)

高橋:
は~い、そうですね。じゃあこれはちょっと特別に。どういう章かっていうと、僕はもともと仏教と縁がなかったって話から始まってるんですよ。どうしてかって言うと、これね、木魚を叩きながら「ハンニャーハーラーミーター」って、これはみんな経験がある…、あっ、もうそういう経験もないかもしれないけどさ。お坊さんが言っている言葉って意味がわかんないじゃない?

礒野:
ええ、ええ。

高橋:
何か言ってんな~って感じで。でも僕、ミッション系の大学で先生やってたから、聖書の言葉はわかるんだよね。「人はパンのみにて生くるにあらず」とか。「求めよ、さらば与えられん」とか。「1粒の麦地に落ちて死なずば、ただ1つにてあらん、もし死なば多くの実を結ぶべし」とか。

伊藤:
文語訳の聖書で読んでたんですね?

高橋:
そうですね。あはははっ(笑)。考えたら。
でもね、「カッコいいこと言ってるな~!」って。やっぱりさすがね、西洋の人たちがみんな読んでるだけあるわ! まぁ、みんなじゃないんだけどね。と思ってたら、伊藤比呂美さんが『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』で、たくさんのお経の一節を現代語に訳してくれたの。僕はこれがもう「最高」って書いてある。

伊藤:
ありがとうございます。

高橋:
いや…。

伊藤:
伊藤比呂美さんて、どなた?

高橋:
まぁ、あんただよ(笑)。

伊藤:
あはっ(笑)。

礒野:
目の前にいらっしゃる~。

高橋:
でもホントにね~。

伊藤:
2冊目なんですよ。
その前に『読み解き「般若心経」』っていうのをやって。で、ハマったハマった、お経にハマった。

高橋:
でも、なんでハマったの? これ、前にも言ったよね? 詩に近い…。

伊藤:
そう、そう。それでね、上野さんが…。

高橋:
上野千鶴子さんね。

伊藤:
『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』の解説で「編集者が仕掛けた」って書いてあるんだけど、あれは違うの。もう本当に自分でね、何か「お経」っていうのにハマって、もう「お経」をホント…、何から何まで、読もうとした!

高橋:
あぁ~。

伊藤:
全部は読みきれてないけど、面白かったな~。

高橋:
何がいちばん面白かったの?

伊藤:
法華経。

礒野:
へぇ~!

伊藤:
あとは、阿弥陀経も面白いし、そのうちに鳩摩羅什って人にハマったんですよ。

高橋:
あっ、著者ね。

伊藤:
この人が、訳したの。

高橋:
あっ、そうか。翻訳者なんだ。

伊藤:
そう、そう、そう。サンスクリットとか、そういうのから中国語に訳して。で、彼はネイティブスピーカーじゃなかったの。

高橋:
あぁ、そうか。

伊藤:
そう。そこにすごいハマって、漢文を読んでいくと、読めるじゃん。漢文は適当に。で、それを直していって、そのうちに、私は詩人だから、もう「あらゆるわからない言葉は、全部私の言葉にしたい」っていう欲望が渦巻いて。

高橋:
それで日本語っていうか、伊藤比呂美「訳」になって。
じゃあ、せっかくだからさ、伊藤さんに読んでもらおうか。2か所ほどあるので。

礒野:
ぜひ、ぜひ。現代語訳にしたお経を。

伊藤:
どっちやりますか?

高橋:
いいよ、まず最初のやつ。

伊藤:
問いはこうだ。
この骨はおれなのか、おれでないのか。
答えはこうだ。
おれでないとしたところで、この肉体から離れてない。
おれもあいつもみんな白骨。
死んですべてがおれから離れたならば
野辺には白骨だけがしろじろと残る。

高橋:
カッコいい。

礒野:
(拍手)

高橋:
これ、お経だよね?

伊藤:
「ホラホラ、これが僕の骨だ、」

高橋:
あっ、何か、中原中也の…。

伊藤:
だから中原中也はむしろ、こういうのを読み、あるいは知り尽くして、「ホラホラ、これが」って書いたような気がする。

高橋:
そっか!

伊藤:
つまり日本の文学に、すべてまんべんなくお経とかそういうのが行き渡っているんだと思いたいんですよ。

高橋:
あ~、でもさ、仏教の知識を持ってる人は多かったよね。

伊藤:
ね!

礒野:
あっ、当時?

高橋:
当時! 宮沢賢治だってそうだし、まぁ武田泰淳とか。

伊藤:
例えば、ほら、「能」ね。三島由紀夫、さっき出てきましたけど。『近代能楽集』って、やったでしょ。

高橋:
うん。

伊藤:
「能」なんて、よ~く読んでいくと、もう本当にお経の知識がなければ読めない。

高橋:
また三島由紀夫が出てきたよ(笑)。

伊藤:
そう。三島由紀夫。

礒野:
今日のテーマですね~(編集担当注:1コマ目で、三島由紀夫がウルトラマンにつながっている、という話をしています)

高橋:
SFも書けば、お経もいく!

伊藤:
そう、そう。

高橋:
やっぱ、すごいよな~。

伊藤:
そういうところに仏教って…。
ほら、外国の小説を読んでると、聖書を知らないと読めないっていうでしょ。同じようなものの気がするの。

高橋:
あ~、それはそうかもしれないね。せっかくだから、もう1コ読んで、ここ。となり。

伊藤:
悩むな。悲しむな。
私がどれだけ生きようとも、
いつか死ぬ、それまで生きる。
別れは来る。それまで出会う。
私はきみたちに教えた。
自分を救う方法、人を救う方法はぜんぶ教えた。
……
世は常ならぬもの。出会いに別れの来ぬことはない。
悩むな。悲しむな。
死ぬまで生きる。そういうものだ。
励め。脱け出せ。見きわめる力を持て。
その力をかがやかし、何も見えない闇を照らせ。

高橋:
ヤバい。感動しちゃったよ、ちょっと。

伊藤:
カッコいいでしょ!?

礒野:
うわぁ~。カッコいい!
これもお経なんですか?

高橋:
お経。お経ですよね。

伊藤:
「仏遺教経」という、仏陀の最期の説教っていう。

高橋:
だからさ~、僕思うんだけど、これを実際には、まぁ一般の人たちはこういうふうには読めないわけだよね?

礒野:
なに言ってんのかな~と。

高橋:
そう、そう、そう。

伊藤:
まぁこれね、訳はね、出てる。でもね、その訳がね、難しい~日本語の訳なんですよ。「漢文読み下し文」みたいな。

高橋:
もったいないよね。

伊藤:
ね! ここまでいいことを言ってるんだから。

礒野:
すごく胸に、ダイレクトに。

高橋:
そう、そう。

伊藤:
死のうとしている80歳ぐらいのおじいさんが言ってるんですよ。

伊藤:
ホント、ホント。

礒野:
あはははは(笑)。

高橋:
最後のメッセージだよね。
僕はこうやって生きたから、「君たちはどう生きるか」って言ってるんじゃない?(編集担当注:この日は、冒頭の「今夜のコトバ」で、源一郎センセイが、宮﨑駿さんの新作「君たちはどう生きるか」について触れています)

伊藤:
そう、そう、そう、そう。カッコいいでしょう!

礒野:
カッコいい…。

高橋:
80いくつ?

伊藤:
80ぐらいじゃないかな。

高橋:
宮﨑駿と一緒だよ(笑)。

伊藤:
そうですよ~。

礒野:
今日はもう、一貫したテーマが~! ありますね。こんなはずじゃ…(笑)。

高橋:
「これは、アレだな」って、そういうことなんだよね。

伊藤:
そう、そう。「あれは、アレだな」「それは、コレだな」。

高橋:
これも、アレかな?

礒野:
どっちも、どっちかな(笑)。

高橋:
いや、でもね、たぶんね、たどり着くところって、同じじゃないかと思うんだよね。

伊藤:
と思うんですよ。人間がさ、脈々と考えてきたさ、意識の…

伊藤・高橋
流れ~~~!

伊藤:
みたいなもののところに、こう、行くの。

高橋:
だから、そうやって考えると、人間も繰り返しなんだけども。今、考えたんじゃなくて、100年前も…。

伊藤:
300年前も。

高橋:
300年前も。

伊藤:
2,000年前も。

高橋:
同じことを考えた人がいて。

礒野:
ええ、ええ。

高橋:
同じことを言っているっていう感じがするんだよね~。

伊藤:
それを違う言語で、違う表現で、表現していく。

高橋:
すてきですよね。

伊藤:
すてきですね~。

毎月恒例・人生相談のコーナー「比呂美庵」

礒野:
では、源一郎さん、比呂美さん、そろそろ恒例のコーナーにまいりましょう!

高橋:
はい、それでは。え~と、伊藤さん、ここは?

伊藤:
ようこそ、「比呂美庵」へ。

礒野:
まずは、ラジオネーム「こけしりとり」さん。40代の女性の、このお悩みです。

子どもがもうすぐ5歳になりますが、絵本を読み聞かせながらモヤモヤしてしまうことが、最近の悩みです。『シンデレラ』にしても『白雪姫』にしても、「お姫様がかわいかったから幸せになったんだよね? それってルッキズムじゃん」と思ってしまいます。子どものころ好きだった絵本のシリーズも、「お嫁さんに来る」とか、「え? まず女の子の親に求婚してる?」などの考えが頭に渦巻いてしまいます。読み聞かせの時は割り切って読んだほうがいいんでしょうか。モヤモヤして素直に読めません。

高橋:
ん~。

伊藤:
むっちゃ、わかる。むっちゃ、わかる。むっちゃ、わかる。

高橋:
なので、これは伊藤さんがたぶん、きちんとお話していただけるので、僕は簡単に。えっとね、僕も、ものすごくいっぱい読んだ。

伊藤:
うん。

礒野:
お子さんにね、読み聞かせを。

高橋:
この前、古い絵本をしまうので、数えたらね、780冊。

伊藤:
おぉ~!

礒野:
すごい数。

高橋:
だけどね、そんなにモヤモヤしたことがないっていうのは、『シンデレラ』も『白雪姫』も…。こういうお話を選んでないね~。

伊藤:
『かもさん おとおり』(ロバート・マックロスキー 文・絵 / わたなべ しげお 訳)は?

高橋:
選んでないね。

伊藤:
まあっ。

礒野:
えっ、何ですか?

伊藤:
『もりのなか』(マリー・ホール・エッツ 文・絵 / まさき るりこ 訳)は?

高橋:
あぁ、選んでない。

伊藤:
名作なのに!

高橋:
ごめん。僕ちょっと、かなりいびつな選び方をしたかもしれない。

伊藤:
何を選んだの?

高橋:
よく覚えてないんだよね。

伊藤:
じゃあ、いちばんおすすめの絵本は?

高橋:
『めっきらもっきら どおん どん』(長谷川 摂子 作 / ふりや なな 画)って、言ったじゃん。

礒野:
前も、おっしゃってましたね。

伊藤:
(登場人物の)子どもは男、女?

高橋:
男の子。

伊藤:
なんで男の子なんですか?

高橋:
うちの子ども男の子だから。

伊藤:
だからね、そういうところからね、いちいちムカついてたんですよ。

高橋:
はい! すいません(笑)。

礒野:
あはははっ(笑)。

高橋:
あはははは(笑)。

礒野:
主人公が男の子っていうことに!

高橋:
そう、そう、そう。

伊藤:
すっごい当たり前のように「男の子」なの。でね、外に出ていく絵本っていうのは、だいたい男の子なんですよ。

高橋:
そうですね。

伊藤:
例えば、マリー・ホール・エッツって、すばらしい作家がいて、もう「最名作」なんですよ。『もりのなか』。

高橋:
はい。

伊藤:
『わたしとあそんで』っていう作品もマリー・ホール・エッツで。
『もりのなか』は、(男の子が)どんどん森の中に行くと、動物たちが後ろからついてきて、そのうちに動物たちがパッと消えて、ハッと気がつくと、誰もいなくなってて、お父さんが迎えに来たっていう、そういう話なのね。

高橋:
いい話だね。

伊藤:
で、『わたしとあそんで』は、(女の子の)私がどっか遊びに行って、みんな逃げちゃうんですよ、動物たちが。で、私が静か~にしてると、だんだんみんながそばに寄ってきてくれて、うれしいのっていうふうな絵本なんですよ。すばらしい絵本なんですけど、ここから私たちが子どもに読んだときに、子どもが得られる教訓というのは、「男の子はどんどん先に行っていいんだ。」

高橋:
あぁ。

伊藤:
「森の中に行っていいんだ」「1人で行っていいんだ」「女の子は、黙って待ってろ」っていうことなんですよね。

高橋:
それはね、よくないね。

伊藤:
まったまた、なんですぐ、そう手のひらを返したように(笑)。

高橋:
あはっ(笑)。

伊藤:
でもね、ホント、そう思うでしょ。

高橋:
うん、思う、思う。

伊藤:
うちなんて、3人女の子だから、ムカつくんですよ。

高橋:
あぁ、なるほどね。

伊藤:
でもね、女の子って、またね自分をね、どっかでね、何て言うんだろう。自分を守るためにね、「僕ら」って書いてあるのは、私が子どもの時なんて、「私たち」の意味で読んでた。

高橋:
うん。

伊藤:
「僕ら」っていうのは、男も女も入った「We」だったのね。でも、それを今、変えたっていいんじゃないかなって。でもね、そういうの出てるんですよ。「女の子が元気になるような絵本」っていうのはね。

高橋:
うん、うん。

伊藤:
ただ「名作の絵本」と言われてるのは、まだまだそういうのが多いの。

高橋:
う~ん。

礒野:
う~ん。まぁその当時の時代背景とか、考え方とか。

高橋:
多数派のために描かれてるもんね。

伊藤:
でもさ、今の多数派ならいいんだけど、30年、40年、50年、60年前の多数派にとってね、その書かれている言葉づかいが…。『かもさん おとおり』なんて、すばらしい絵本なの。ロバート・マックロスキー作、わたなべしげお訳なんですけどね。

高橋:
うん。

伊藤:
お母さん鴨が、お父さん鴨に、敬語を使うのよ。

高橋:
あぁ~。

伊藤:
「サザエさん」の家みたいな。それは読みながら、わざわざ敬語をとって、「お父さん、やってね」とか(読み聞かせをしていた)ね。

高橋:
あはは(笑)。

伊藤:
「お母さん、頼んだよ」って、やさしく言ってみたりね。
だからそういうのをさ、今の状況に合わせたように、変えていくべきなんじゃないか。

高橋:
いいね~。伊藤さんの子どもだったらよかった(笑)。

礒野:
言い換えてくれてたんですね。比呂美さんが、こうしたほうが良いなっていうところは。

高橋:
僕ね~、どうやって読んでたか覚えてないんだよね~。正直言って。

伊藤:
うん。

高橋:
だから、さっき言った『シンデレラ』とか『白雪姫』とか、まぁ露骨にそういう、ルッキズムとかさ、そういうのが出てきそうなやつは、やっぱり「ちょっと無理」っていうことで。

礒野:
初めから、読まなかったと。

高橋:
そう、そう。だから別にポリティカル・コレクトネスを重視してるんじゃなくて、何かお話として、ゆがんでる感じがしたんで、割とフラットなものを読んでたと思うよ。やっぱり。

伊藤:
そうね。そうね~。

礒野:
ラジオネーム「こけしりとり」さん、いかがしょうか?

伊藤:
今のお話から聞くとですよ、1つの例しか聞いてないけど。フラットに選んだ時に、主人公が男の子だったりするじゃん。

高橋:
だって、うちの子どもは男の子だから(笑)。

伊藤:
まぁまぁ、そうなんだよね~。で、そっちのほうが多いの。

高橋:
あっ、でもね、女の子だったら女の子のほうで選んだんじゃないかな。

高橋・伊藤:
う~ん。

高橋:
「モヤモヤして、素直に読めない」って、逆にさ「モヤモヤしてる」っていうのは、なかなか良いと思いますよ。

伊藤:
源一郎さんが言ったみたいにね、そういうのは読まない、とかね。好きなように読んで、選んでいいと思うんですよね。

高橋:
やっぱりね、読むほうもスッキリしないといけないからね。

礒野:
そうですね。気持ちよくね、親子の楽しい時間を過ごしてもらいたいですよね。
では、もう1通です。

最近、気付いた小さな絶望です。それは本を読むと、読み方がわからない漢字があまりに多くあることです。例えば、「供(きょう)する」「伍(ご)する」「溌剌(はつらつ)」「貶(けな)す」などです。
今まで読んだ本の内容は、ほとんど理解できてなかったんじゃないかと、ゾッとしています。
漢字というか語彙(い)を増やすためには、どうすればよいでしょう。

高橋:
いや別に、いいんじゃないですか。このままでも。

伊藤:
いいわよね。わかんなくても。

礒野:
あはははっ(笑)。いいですか?

高橋:
僕、ちっちゃいころから読むのが好きで。

礒野:
ええ。

高橋:
難しい漢字があるじゃない?  読めないじゃない。そしたら、飛ばして読んでたもん。

伊藤:
私もそうだった。

高橋:
それでね、想像するんだよ。「何て読むのかな~」って。まぁ後でね、調べるときもあるけど。突然、気がついたりするでしょ。それでいいんだよ。とにかく、読むときはいっさい調べない! まず。

礒野:
ちなみに、相談を送ってくださった方は、「わからなければスマートフォンで逐一調べるようにしています」って。

高橋:
あぁ~、それはね…。

礒野:
とっても真面目な方なんですね。

高橋:
面倒くさ~い。だって止まっちゃうもん。

伊藤:
面倒くさい…。私、英語ができなかったんですよ、昔…。ホント、ホント(笑)。

高橋:
今はできるよね?

伊藤:
今はほら、使わなくちゃしょうがないから。でね、そのときに何が嫌だったかって、調べるのが面倒くさくて。本を読むスピードが遅かったの。で、やっぱりね、本を読むスピードってあるから。

高橋:
大事なんですよ、スピードが!

礒野:
あぁ、そうか~。スピード感。

伊藤:
で、つまんないとこは読まない。これ、谷川俊太郎先生もおっしゃってました。

高橋:
あぁ~。

伊藤:
「わかんないとこは読まなくていいんだよ」って。

高橋:
みんなそう言いますよ。

礒野:
でも作家さんと詩人さんが、そうおっしゃるなら。

高橋:
あのね~、「わからないところは飛ばす」は、大基本!

礒野:
へぇ~!

高橋:
そのうちわかるようになるから!

伊藤:
そう、そう、そう。わかるところだけ、サ~っと読んでいけばいいような気がするな、私は(笑)。

高橋:
あと、補完してさ、わかるところを読んでいくと、何かわかんないところが、わかるような気がしてくるから!

礒野:
何となく、こんな意味かな~って?

伊藤:
はい、はい。(挙手)
特別、私のアドバイスです。えっと、白川 静っていう人に興味を持って…。

高橋:
あっ、漢字の!

伊藤:
漢字にハマる!

礒野:
どなたですか?

高橋:
大漢字学者!
あのね~、日本でいちばん有名な漢字の先生で。

伊藤:
面白いんですよ~。漢字がね、ホントね、何か生々しくね~、なるの。

礒野:
へぇ~!

高橋:
あのね、漢字がね、語源から書いてあるから、1個の字を読んでるだけで、だんだん楽しくなってくる。

伊藤:
全部、「知まみれ」。

礒野:
だそうです! お2人とも大絶賛!

高橋:
だから、これ苦痛じゃない?! 覚えるのは。白川さんの本を読んでると、楽しいもんね!

伊藤:
楽しい、楽しい。

高橋:
字を調べるのが!


【放送】
2023/07/21 「高橋源一郎の飛ぶ教室」

放送を聴く
23/07/28まで

放送を聴く
23/07/28まで

この記事をシェアする

※別ウィンドウで開きます