【飛ぶ教室】「きょうのセンセイ~日比野克彦さん~」

23/01/20まで
高橋源一郎の飛ぶ教室
放送日:2023/01/13
#文学#読書
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23/01/20まで
2コマ目「きょうのセンセイ」、今回は現代美術家、東京藝術大学長の日比野克彦さんでした。去年10月以来のご登場。
年末に会う予定だった大学時代の友人Tさんのこと(源一郎さんの「今夜のコトバ」で出てきたTさんとは別の方)、1コマ目でご紹介した藤原辰史著『植物考』を受けて“アサガオ”のプロジェクトのお話など、多岐に渡りました。日比野さんのトークにひきこまれ、気がつけば、またまた時間が足りなくなってしまいました(笑)。
【出演者】
高橋:高橋源一郎さん(作家)
礒野:礒野佑子アナウンサー
日比野:日比野克彦さん(現代美術家、東京藝術大学長)
『多様性を目指す社会の基盤にアートの特性を活用』
高橋: |
さっきのね植物の話もそうなんですけど「普段どれぐらい常識」っていうか、「なにかの価値に縛られてる」感じがするんだよね。 |
日比野: |
ホントそう。だから集団で行動するときの協調性とか、人の気持ちをちゃんと思ってリアクションするとかっていうのは、いいことだっていうふうな見方もあるけれども、でもなんかこう、地球上に70数億人いたら70数億人の個性を、いわゆるハンディも個性ね。というふうなことが拒絶せずに、よくいま「誰ひとり取り残さない」って言い方するけども、それを目指す多様性のある社会を築くんだったら、もう、ひとりひとりの個性を、すごく認め合うことができるアートの特性を、意識の基盤にしたほうが早いんじゃないか? いいんじゃないか? アートの活用の仕方が、だからさっき言った根源的なところのね。 |
礒野: |
ええ。 |
日比野: |
トップ・アーティストの育成っていうだけじゃなくて、アートもひとりひとり違ってていいよね! 「違ってて当たり前だよね」っていうところの考え方こそが、アートのもう1個の、というか1つの特性なので、それをこう多様性を目指す社会の基盤に…。 |
高橋: |
日比野さんが学長になったのはちょっと謎だったんだけど、話を聞いてると、全部つながってるよね。 |
日比野: |
そうね。 |
高橋: |
あの、もともとは個人で、個人でつくる、アーティストはみんな個人主義だったけども、なんかそれだとどっか壁みたいなのが、囲まれているところがあって、そこから出るっていうことと、その学長になったりプロジェクトをやったり、その「種のように飛んでいく?!」みたいになるっていうのは必然だったかもしれないね。 |
日比野: |
う~ん。源一郎さんは82年デビューでしょ。 |
高橋: |
そうそうそう。 |
日比野: |
その頃のね、なんか「多様なものがあっていい」っていうね。「どんどん出てこい、若者ども!」みたいな。「違うもの大歓迎!」みたいな、そういうの、ちょっとあったじゃない?! |
高橋: |
あった、あった。若い人が歓迎されてたよね。 |
日比野: |
歓迎されてた。 |
礒野: |
時代の雰囲気的にですね。 |
高橋: |
そうそう。「なにをやってもOK」っていう雰囲気があったけど、いまはさ、なにやっても怒られそうじゃない?!(笑) |
礒野: |
どうなんですか? アーティストを目指す学生さんにとっては、いまのこの時代って。 |
日比野: |
僕が例えば「なにをやってもOK」みたいな、より違うものを出そうっていうときに、僕が段ボールを使い始めたきっかけも、その頃、それを意識してたかどうかは怪しいけど、いまから振り返ると、なんか画材屋に売ってる画材で、さっきの色鉛筆の使い方と同じで、「なんで、画材屋にあるもので絵を描くんだろう?」と、そこに対するクエスチョンで、画材屋に行かずに、横にあった廃材置き場に行って、段ボールを引っ張ってきたんだけれども。なんかちょっとこう、「同じ姿じゃないものに対しての価値を見つけたい」っていう、そんなところから、いまの自分が出来上がっているので、まぁ。 |
高橋: |
そっか。そういうことを、いまの若い学生たちにも、みんなにも味わってもらえるような場所! 必要だよね! |
日比野: |
やっぱりね「共にいられる場所」「競争」。いま、またね、芸大でいま一生懸命やろうとしているのは「場」を。いわゆるね研究…こもって発表する作品、出来た作品だけを発表するんじゃなくて、「考えてる段階から共にいる」っていうね。「場づくり、競争の場」っていうところを、それを専門性の芸術だけじゃなくて、他領域も含めてね。なるだけ違う価値観の、遠い価値観の人たちと出会えるような場を作って、芸術がそれをつなげていくっていうことをやっていきたいなと思っています。 |
礒野: |
ありがとうございます。残り20秒になってしまいました! |
高橋: |
あぁ、もう! |
礒野: |
東京藝術大学の学長、日比野克彦さんでした。 |
高橋: |
日比野さん、いろいろやりたいことがあったんですが。 |
日比野: |
やりたいこと、打ち合わせで言ってたの1個もやってないじゃないですか! |
礒野: |
1個もできず! |
高橋: |
ねぇ。じゃあね、次にやりましょうか。今度はね。いや、こんなことになるとは、いやはや…。 |
【放送】
2023/01/13 高橋源一郎の飛ぶ教室 「きょうのセンセイ」
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23/01/20まで