“夫婦の壁” 乗り越えるコツは「会話の三角形」と「沈黙」

23/09/08まで
ふんわり
放送日:2023/09/01
#著者インタビュー#読書#家族
<ふんわり>は、毎週月曜日から金曜日<NHKラジオ第1>8時30分~11時50分で放送中♪パーソナリティの温かいトークがリスナーの生活をふんわりと包み込むような番組です。
金曜パーソナリティは黒川伊保子さん。
放送後1週間は、「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでもお楽しみいただけます!
【いほこの引き出し~OUTPUT!~】
「ふんわり」金曜パーソナリティ・黒川伊保子さんの新しい著書『夫婦の壁』から、【夫婦の時間が増えて顕在化した「在宅の壁」】についてお話を伺っていきます。
【出演者】
伊保子:黒川伊保子さん(人工知能研究者)
稲垣:稲垣秀人アナウンサー
稲垣:
黒川伊保子さんの著書『夫婦の壁』。
在宅勤務などが多くなって出てきたお悩みに、伊保子さんが回答するという内容になっています。
実際に、本に掲載されているお悩みに沿って、お話をうかがっていきます。
まずは、夫婦の会話がないという問題について、55歳の専業主婦の方のお悩みです。
もともと夫婦の会話は少なく業務連絡程度でしたが、コロナ禍以前は夫の帰宅時間が遅かったこともあり、あまり気にしていませんでした。
しかし、夫が在宅勤務になって一緒にいる時間が増えたにもかかわらず、会話は全く増えません。
このまま一生一緒に過ごすことを考えたら、ゾッとします。
結婚して25年以上たつのでお互いに新鮮さはありませんが、夫婦の会話やコミュニケーションを復活させるにはどうしたらよいでしょうか。
伊保子:
相談者さんのご家庭は分からないけど、私の夫は「対話クラッシャー」なの。
例えば、テレビ見ていて「これって面白くない?」って言ったら、「そうかな」とか。
「あなたって本当に対話クラッシャーよね」って言ったら「いや、君もそうだよね」と言うんです。
私も同じようなことしているんですね…。
着眼点が違うので、相手の言ったことに共感して乗れない。
そういうことが続いていると、話をしてもしょうがないとお互いにわかって話をしなくなるんですよ。
子育てをしている間は、子どもに関する話題があって、話しているような気がするんだけど、子育てが終わると共通の話題がなくなって、がく然とするというご夫婦がたくさんいらっしゃると思います。
子育て中になぜ話題があるかというと、お互いの意見をストレートにぶつけず、子供という対象を挟んで「三角形の対話」をしているんですね。私はそれをおすすめしています。
自分の話を相手にストレートにぶつけると、お互いの意見の相違が明らかになりすぎるので、お互いにお互いを見るのではなく、同じ方向を見て、「三角形の対話関係」にして、対象物について話す。
共通の趣味とかね。
稲垣:
共通の話題を持つような感じですね。
伊保子:
お互いの気持ちとか事情を語り合うのではなく、例えば、カフェ巡りとか、何か「シリーズもの」になれる趣味の話題がおすすめですね。
札所(ふだしょ)巡りなんかもいいですけど…。
1個ずつ増やしていけるものだと、過去に積み重ねてきたものの思い出や、これからどこに行くか語れるじゃないですか。
そういう2人でできることを1つ探して、過去を思い出し、未来を語れる何か。
だから、子どもってそういう意味ではとてもいい話題のテーマですね。
子どもがいらっしゃらないご夫婦、あるいは子育てが終わったご夫婦、ぜひ「シリーズもの」になれる2人の趣味を1つお持ちになって、それを「三角形」で、お互いにそれを見る形で会話をすると会話が生まれてきます。
そうすると意見の相違もまた楽しいということになっていくと思います。
稲垣:
共通の話題という話もありましたが、例えば子育て。
なかには子育ての方針の違いもあって、けんかの種になる、なんてことも…。
今、自分自身を振り返って考えた時に、ちょっとそんな事が頭をよぎりましたけれども…。
伊保子:
子育てに関しては、主従を決めなきゃだめなんですよ。
稲垣:
主従を決める?
伊保子:
優先順位が拮抗していることは、脳にとってジャッジがもっとも難しい。
だから、わたしたちはすべてのことに優先順位が決まっている。
転んだ時に左ひじをつくのか、右ひじをつくのかもみんな決まっているんですよ。
それが利き手ですからね。転んだ時に自分の重心を乗せる側っていうのをみんな決めている。
脳は絶対にきっ抗させないようにしているんです。
2人の間でも、子育ての決定権がどちらにあるのか、最初に決めておいた方がいいかも。
稲垣:
なるほど。決め方を決めておく、ということですね。
伊保子:
例えば、「女の子の子育てに関しては女性である君が決めていい」けど、「男の子に関しては僕にして」とか。
わけ方はいろいろあるかもしれませんね。
稲垣:
そもそも会話をしなければいけないのですかね。
この相談者さんは会話がないということを、すごく気にされていますけど。
伊保子:
私は夫婦のいちばんのだいご味は、「黙って一緒にいても気にならない関係」だと思うんですよね。
特に旅する夫婦は寡黙な方が安全かも…。
稲垣:
旅する夫婦は寡黙な方が安全…。
伊保子:
ある時、名古屋へ行くために新幹線に乗ったんですけれども、原稿をひとつ片づけなきゃいけなくてね。
仕事しようと思って、ふと顔をあげたら、私以外全員ツアー客だったんです。
みなさんビールでも飲んで大騒ぎかなと思って、集中して早めに終わらせちゃおうと思ったら、小田原を過ぎても静かだったんです。
なんでだろう、と思って。
みなさん、定年退職後の夫婦2人旅の方が20組ぐらいのツアーだったんです。
あんまりおしゃべりしないけど、富士山が見えたら「富士山だよ」「ほんとだね」とか。
お昼どきに二段弁当が配られたんですね。
見ていたらみなさん「あうんの呼吸」で、片方が風呂敷をといたら、もう片方が弁当をスッと引いて、片方がふたを取ったら、もう片方が自分のふたと重ねて…。
奥様がやっていたり、旦那様がやっていたりだけど、あうんの呼吸と少ない言葉数で寄り添うのが、理想の姿なのかなと思いました。
稲垣:
言葉を多く交わさなくても、理解し合えるような関係…。
伊保子:
そういうゴールもあるかなと思いますね。
話し合えて共感し合えるから素敵っていうのもあるけど、一緒にいて沈黙でいいっていうのもいいかなと思います。
詳しくは、9時台「聴き逃し」で♪
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23/09/08まで
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