【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん
2022年10月2日(日)放送の<DJ日本史>は、シリーズ企画『ふるさとを救った人々』第1回。
荒れ果てた不毛の地を豊かなふるさとに生まれ変わらせた郷土の偉人たち。彼らはどうやって郷土をよみがえらせたのか? 民衆のために力を尽くした彼らの姿に迫りました。
江戸時代の半ばごろ、秋田の日本海沿岸の村々は砂の被害に苦しんでいました。
シベリアから吹く強い季節風が大量の砂を巻き上げ、田畑や家が度々砂に埋まってしまったのです。
そこで砂浜に松の木を植え防砂林をつくりあげたのが、栗田定之丞(くりた・さだのじょう)という秋田藩の武士でした。
しかし砂浜に植えた松の苗は、根付く前に砂に埋もれてしまいます。
長い海岸線に防砂林を築くには気の遠くなる作業を要しました。
ですが、定之丞は作業を始めてから8年間、誰からも協力を得られず、なんとこの作業をたった1人で行ったというのです。
栗田定之丞は、なぜめげなかったのか?
それには、彼が持つ気質と挫折の人生が関係していたようです。
栗田定之丞は幼い頃から、意志の強い子どもでした。
こんなエピソードがあります。
定之丞が生まれたのは、とても貧しい下級武士の家。
幼い頃、口減らしで城の掃除をする坊主にさせられそうになりました。
このとき定之丞は、こう言ってはねつけます。
「人に使われる一生は嫌だ!禄が少なくても、武士として生きていきたい」
ところが、彼の人生は挫折続き。
努力を重ねて念願のお城勤めがかなうも、病のために辞職。
その後ありついた仕事は、海の見張り番という閑職でした。
普通ならここでがっくりしますが、定之丞は違いました。
見張り台で海風による砂の被害を目の当たりにした定之丞は、一躍奮起。
「よし! この自分が、砂の被害から村を救おう!」
そして藩から「砂留役(すなどめやく)」という役職をもらいます。
栗田定之丞にとって、それはまさに人生の再起をかけた挑戦!
ところが「砂留役」の役人は自分一人だけ。しかも予算はゼロ。
それでも、あきらめません。
寒風が吹きさらす砂浜に泊まり込んで、植林の仕方を研究。
そして8年を費やして、砂地に黒松の苗を植えることに成功!
こうした姿にふれた農民たちは、次第に定之丞に協力。
植林事業は栗田定之丞が亡くなったあとも続けられ、江戸時代の終わりには全長120キロにも及ぶ防砂林ができたのです。