動物園で死んだゾウ。そのあと、どうするの?

質問者はるきくん

放送日2020年8月23日(日)

ざっくり言うと
いわまつはるきくん(小学1年生・愛知県)からの質問に「動物」の小菅正夫先生が答えます
すみからすみまで大きさを測り、内臓も全部見せてもらって、生きたすべてを記録。骨は標本に
「動物の死から学ぶことはたくさんある。おじさんたちはそうやって、動物たちに育てられてきたんだ」

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動物 小菅正夫先生

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2020年8月23日(日)放送より

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放送日時:2020年8月23日(日)午前9時41分ごろ~午前9時55分ごろ

石井アナ:石井かおるアナウンサー
小菅先生:小菅正夫先生(札幌市円山動物園参与)
はるきくん:質問者


石井アナ: お名前を教えてください。
はるきくん: はるきです。
石井アナ: はるきくんは、どんなことを聞きたいですか?
はるきくん: この前、動物園のゾウが死んでしまいました。死んでしまったゾウはどうするんですか?
石井アナ: はるきくんのおうちの近くの動物園で、ゾウが死んでしまったんですね……。小菅先生、お願いします。
小菅先生: はるきくん、おはよう!
はるきくん: おはようございます。
小菅先生: どこの動物園?
はるきくん: 東山動物園(名古屋市)です。
小菅先生: あぁ、ついこの前だったねぇ。おじさんたちみたいに動物園にいる人にとっては、ゾウはものすごく気になる動物なの。なかなか上手に飼えなくてね……。名古屋の動物園で死んだのはアフリカゾウだと思うんだけど、おじさんは今、札幌市円山(まるやま)動物園というところにいて、そこではアジアゾウを4頭飼っています。前にいた旭山動物園(旭川市)でもゾウを飼ってたんだけど、ものすごく難しくてなかなかうまく飼えなかったの。
今、日本にゾウがどのくらいいてどういう感じなのか、動物園にいる人間はだいたい分かっているんだ。だから名古屋でアフリカゾウが死んだときもすぐに教えてもらって、どういう状況かは聞いています。50歳近かったのかなぁ。
石井アナ: 推定で46歳とニュースではいわれていましたね。
小菅先生: もうちょっといってたと思うんだ。45年飼育していましたので、日本に1歳で来ることはないから、実際はもう少し長いと思いますね。
死んだあとどうするか、っていうのが、はるきくんの質問だったね。まず、おじさんたち、何を考えるかっていうと、その動物が動物園にやって来て、どういうふうに生きて、どういうことをやって死んでしまったかっていう記録を、全部残さなきゃいけない。そのためには、来たときも体重やなんかみんな測っていたんだけれども、死んだときもまず最初にやることは、体の大きさを全部測ります。足の裏の大きさ、鼻の長さ、頭、背中、尻尾の長さ、足の太さ……、測れるところは全部、測るの。まずそれをやります。
それが終わったら、今度は体の中も見せてもらう。どういう状態か教えてもらうために、体を開けて、肺とか心臓とか、胃、腸、腎臓……、全部見せてもらう。そしてそれも全部大きさや重さを測って記録する。そういうことをやるんだよ。
はるきくん: はい。
小菅先生: 名古屋のゾウの場合は確か、ずっと具合が悪かったんじゃなくて急に悪くなって死んだんじゃなかったかな。そういうのって、結構あるの。「ここが悪いよ」っていうんでいろんな治療ができていたら、おじさんたちにとってはまだそのほうがいいんだけど、動物はね、苦しみとか痛みっていうのを伝えようとしないんだよ、動物園でも。あんなに親しくしていた飼育係にも、「ちょっとおなかが痛いんだ」とか、「ちょっと熱がありそう」とか、言ってくんないの。おじさんたちは、それをなんとかして見つけなきゃいけないんだけど、そういうことがなんにも分からないまま、死んでしまうことがあるんだよ。そのときは、解剖して全部1つ1つ調べて記録して写真も撮って、一部は組織そのものも保存してあとで調べたりして、死因を特定していきます。
名古屋の場合はね、腹膜炎だったと思うんだ。そういうことを、“死んでから”教えてくれるんだよ。もう、たえられないんだよ、そういうの……。

そういうときにね、ゾウを担当している近くの人は、みんな集まるんだ。おじさんは北海道だから名古屋までは行けなかったけど、動物園の獣医さんとか大学の獣医学の先生方も集まって、それぞれの専門の目で、体の中の様子を全部調べるんです。記録して、保存して、そして最後にどうするかっていうと、肉も全部きれいにして大事な骨を骨格標本にして、動物園に置くこともあるし、大学で学生たちが勉強するために保存することもある。そして、このゾウが日本にやってきて暮らしていた記録を全部とって、死んでもなおすべてを教えてもらって、そしてゾウは骨として残って、子どもたちや学生たちに学ぶ機会を与えてくれるんだ。
そういうふうにすることが、おじさんたちの義務だと思ってるんだ。そういうふうにして、最後はもちろん、お祈りして、それで終わりという感じなんだけどね。

実はゾウは長生きする生き物でね。はるきくん、ゾウって何歳くらいまで生きると思う?
はるきくん: ……。
小菅先生: 60歳くらいまで生きるんだよ。
はるきくん: 60歳……。
小菅先生: うん。はるきくんのおじいちゃんおばあちゃんくらいまで長生きするの。ことし3月だったかな、おびひろ動物園(帯広市)でアジアゾウが亡くなったんだ。推定59歳っていってたけど、そのときも北海道中の獣医さんや大学の獣医学の先生や学生が集まって、みんなでしっかり解剖して、冥福を祈ってお別れしたんだ。動物が死ぬのは大変なことだけど、そこから学べることは、たっくさん、ある。おじさんたちはそうやってね、動物たちに育てられてきたんだ……。だから死んで「はい、さよなら」っていう感じじゃないんだよね。そういうことなんです。はるきくん、いいですか。
はるきくん: はい……。
石井アナ: 私も東山動物園にはよく行きました。ケニーというメスのアフリカゾウでしたね。50年近く一生懸命生きて、死んだあとも、いろんなことを教えてくれるということですよね。はるきくん、分かりましたか?
はるきくん: 分かりました。
石井アナ: はるきくん、質問をどうもありがとうございました。さよなら~。
はるきくん: ありがとうございました。さよなら~。
石井アナ: 小菅先生、動物が亡くなるということは、子どもにとっても大きな衝撃だと思います。動物は人間の言葉を話しませんけれども、いろんなことを教えてくれますね。
小菅先生: いやぁ……、僕はね、動物はいろいろ出していると思うんだよ。われわれがね、分からないんだ、きっと。情けないことに。そこなんだよね。絶対に何か発していると思うんだよ。ゾウ同士だったら、「どうしたの?」「おなか痛いの」なんて分かってると思うんだ。ヒトとゾウだから、ゾウがどういう信号を発しているのかがまだまだ分からない。ゾウだけじゃなくて、あらゆる動物がそうなんだ。いかにして僕たちが、動物の気持ちどころか動物そのものになってその動物を見ていかないと、やっぱり分からないと思うんだなぁ。
いつも「分からない」ということを痛感させられて、「次に飼うときは……」って、一歩一歩進めているのが動物園の世界です。彼らの死を常に教訓にして、次に生かそう、生かそうとやってきました。日本にはアフリカゾウは30頭くらい、アジアゾウも80数頭くらいしかいないんです。ゾウは今どういう気持ちでいるのか、子どものほうが分かるかもしれないよね。先入観もないから。
石井アナ: 動物園で新しい命が誕生すると喜んで話題にしますけれども、命を終えた動物たちにも想像力豊かに向かわなければと、はるきくんの質問で考えされられました。ありがとうございました。

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2020年8月23日(日)放送より

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