村山由佳

ラジオは、
魔法の
糸電話。

村山由佳:
FM50周年という事で、おめでとうございます。 
 
ーーラジオについて、ご自身で、いつぐらいに聞き始めて、どんな番組が好きでっていうような事をちょっと教えて欲しいんですけども。

村山由佳:
そうですね。ラジオを初めて聴いたのは多分、あの英語の番組ですね。中学生の時に教育番組でラジオを聴いて、それで勉強するようになって自分のラジオを買ってもらったのが最初でした。ラジオを買ってもらうと他の番組も聴くようになっていって、民放の深夜番組なんかも勉強しながら聴くようになりましたねぇ。

ーーその後勉強しながら聴くようになったラジオっていうのは、何か思い出に残るような事はありますか?

村山由佳:
中学生の頃っていうとアニメが大好きだったので、声優さんがやってる番組を聴いて。今でも覚えているのは、そこで初めてイルカの「なごり雪」を知ったんですね。声だけで聴くと「イルカさんは男の人なんだ、少年なんだ」と思っていたら女性で、初めてポップスで自分から好きになった曲だったかもしれません。

それまでは兄がギターで弾く下手くそなフォークしか聞いた事が無かったんだけれども「あぁ、こんなに歌っていうのは人の気持ちに染み込むものなんだな」って景色まで見えるような気がして。それがまず、感動的でしたね。

ーーAMラジオがあって、FMラジオの時期っていうのはどうですか?ございましたか?

村山由佳:
FMは・・FMは主に、映画音楽特集とかクラシックの好きな時代の特集とかそういう番組を、カセットテープの時代でしたけれども、番組が始まると同時に録音ボタンを押して、それを自分で小さいレコーダーみたいなもので聴いてるっていうのが、随分長く続きましたね。

ーー「この番組はよく聴いた」とか、「これで好きになったクラシックがある」とか・・

村山由佳:
番組名は覚えてないんですけど、西部劇が大好きだったので、西部劇音楽特集とか映画音楽特集とか、あとクラシックもロシアの国民楽派が好きになったのは、FMのクラシックの特集からでした。ラフマニノフとか本当に演奏する人によって全然違って聞こえるので、「ラジオが世界を広げてくれたな」っていう気持ちがしますね。

ーーラジオの関わりがお仕事になってきた事で、変わって見えてきた事ってございますか?

村山由佳:
あぁ、どうだろうなぁ。普段小説を書く仕事なので、本当に一人きりの仕事なんですね。でもラジオって、ある意味テレビよりはずっと小説の世界に近いというか、リスナーの方と1対1で繋がる事ができるという意味では近いんですけど、それでありながら、みんなの作業じゃないですか?みんなの力で一つの番組を作るというのが、自分の日常の仕事とは、また全然違って物凄くエキサイティングです。

ーー実際にされている番組が、「誰にも言えない心の秘密をそっと打ち明けてみませんか」と始まりますので、タイトルも「眠れない貴女へ」で、しかも時間が日曜の23時。あの・・何ていうか、大人のラジオですよね?

村山由佳:
そうですね。特に女性の為の音楽番組です、と謳ってますので、女性からの、本当の深夜の女子会でしか聞けないようなお悩み相談があったり、秘密の打ち明け話があったりという事で、なんだか、なんでしょう。その「一人じゃないんだな」って思える番組っていうか、夜中に魔法の糸電話で繋がってるみたいな。そんな風な良い番組になっていってるんじゃなかろうかと、思うんですけど(笑)。

実は男性のリスナーが、隠れリスナーがすごく多いというのが、この番組の特色みたいです(笑)。
男性にとってみたら、立ち聞きというかね、秘密で聞いてるみたいな所もあるのかも知れないけど、なんか叱られたい人が多いみたいで。女性の本音を聞いて「あんた達、それじゃダメなのよ」とか「こういうとこに気が付いてないのよ」みたいな事を言われたいみたいです(笑)。

ーーイルカの歌を聴いて、国民楽派のラフマニノフを聴いて、そして「コーヒーのいれ方」っていうね、素晴らしいシリーズがずっと続いてますけども、あれはやっぱり、小説世界が一つ、ラジオ世界として歩き始めてる感じがありますよね?

村山由佳:
そうですね。ラジオの方からシリーズを聴いて、小説をお読みになった。またその小説を入り口にして他の私の作品とか、或いは他の人の作品とか好きになったっていう方もいらっしゃいますし、それに「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズは一つ一つがサブタイトルで昔の洋楽のタイトルを付けてるので、そこから洋楽を聴くようになったとか、色んな方へ世界が派生していくというのが、すごく面白いし嬉しいですよね。

ーー村山さんにとって「私にとってラジオはナニです」「ナントカのようなものです」っておっしゃって頂くとしたら?

村山由佳:
さっきと重なっちゃいますけど、ラジオは魔法の糸電話だと思ってます。聴いている人が一人で大抵聴くものですから、そうした時にリスナーの方とこちら側で伝えたい思いが一本の糸でぴーんと繋がったら良いな、と。深いところで届くと良いなっていつも思いながら話してます。