NHKラジオブログ
ラジオの魅力をお伝えします

ブログトップ > N響 10月定期公演 指揮者紹介(2)トゥガン・ソヒエフ【18日 (金)、23日(水)】

N響 10月定期公演 指揮者紹介(2)トゥガン・ソヒエフ【18日 (金)、23日(水)】

番組スタッフ

投稿日時:10月 7日 (月) 午前10時00分

5シーズン連続の定期公演登場
マエストロとN響、両者のなす特別な化学反応

 

トゥガン・ソヒエフ

トゥガン・ソヒエフ



推進力も自由自在
色彩感豊かで華麗な音楽

トゥガン・ソヒエフはN響と最も相性の良い指揮者のひとりといえるだろう。2015/16年以降は毎シーズン出演しており、今期で5期連続となる。「本番ではリハーサル以上の化学反応が起こります。N響は私のアイデアを消化して、一瞬にしてそれ以上のものを投げ返してくれる。これは特別なことなのです」─今や世界中で引っ張りだこの人気指揮者にこう言わしめる信頼関係は、東京の聴衆の財産だろう。2008年の初共演当時、ソヒエフはまだ30代に入ったばかりの若手だった。
指導者として名高いイリヤ・ムーシン、さらにユーリ・テミルカーノフに学んだ、いわばロシア音楽の懐から現れた才能だ。トゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団の音楽監督として、フランス音楽も幅広くレパートリーに組み込んでいる。現在はボリショイ劇場の音楽監督も兼務するが、音で情景を喚起する力はシンフォニックな作品でも十二分に発揮されている。
ソヒエフの魅力は何をおいても音楽を色彩感豊かに、華麗に響かせる技にある。スタイルはあくまで正攻法。力業で鳴らすのでなく、ツボを(つか)んで引っ張っていくことで作品や楽団の持ち味を無理なく立たせていく。だからオーケストラも俄然(がぜん)積極的になる。心地よいボリューム感に包まれ歌われる旋律はエレガントに上気し、サウンドは美しく香る。テンポやリズムに対するセンスも抜群で、大地に根を張るような安定感から体がふわっと浮かび上がるような軽やかさまで、推進力も自由自在だ。

フランス音楽とロシア音楽で固めた
マエストロらしさが表れたプログラム

さて、今月の定期公演ではBプロをフランス物、Cプロをロシア物で固めた。選曲にもソヒエフらしさが表れている。
近代フランスの管弦楽曲をたどるBプロを、ベルリオーズ《ファウストのごう罰》からの〈鬼火のメヌエット〉〈ハンガリー行進曲〉で始めるのは、描写的な小品で聴き手を自らの世界にぐっと引き寄せるソヒエフお得意の手法。ビゼーの《交響曲第1番》では、そのテンポ感や歌い回しの妙がダイレクトに味わえるだろう。現代への扉を開いた《牧神の午後への前奏曲》を経て、最後は再びベルリオーズのドラマチックな交響曲《ロメオとジュリエット》(抜粋)で結ぶ。前回披露した《イタリアのハロルド》の、息の長い音楽を見通しよくまとめる手腕はここでも発揮されるはずだ。
Cプログラムはエキゾチックで華やかな《イスラメイ》を冒頭に置き、濃厚で骨太な2曲を組み合わせた。ラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》ではニコラ・アンゲリッシュの精緻(せいち)なピアニズムをどう演出するか。運命の悲劇が、哀切に満ちたメロディ、はじけるようなピチカートを経て、輝かしいフィナーレとなだれ込むチャイコフスキーの《交響曲第4番》では、交響楽の醍醐味(だいごみ)を満喫したい。

[江藤光紀/音楽評論家]

<プロフィール>
トゥガン・ソヒエフ

1977年北オセチアに生まれ、サンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシン、続いてユーリ・テミルカーノフに師事した。
2002年のウェールズ・ナショナル・オペラをはじめとして、メトロポリタン歌劇場、エクサン・プロヴァンス音楽祭と次々に国際的なデビューを果たした。2005年にはトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団の首席客演指揮者、さらに2008年には音楽監督に就任。加えて2014年からはボリショイ劇場の音楽監督兼首席指揮者の任にあり、2012年から2016年にかけてはベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督も務めた。近年はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、世界各地の名門オーケストラに定期的に客演しており、21世紀になって頭角を現した世代でもっとも注目を集める指揮者である。
NHK交響楽団とは2008年に初共演して以来、たびたび客演を重ねている。2016年以降は毎シーズン指揮台に立ち、ロシア、フランスもののレパートリーを中心に、色彩感豊かなサウンドを導き絶賛を博している。
[江藤光紀]

放送予定

Cプロ10月18(金)午後7時00分〜9時10分【生放送】
NHK-FM「ベストオブクラシック」

【放送内容】
バラキレフ(リャプノーフ編 )/東洋風の幻想曲「イスラメイ」
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*
チャイコフスキー/交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

指揮:トゥガン・ソヒエフ
ピアノ:ニコラ・アンゲリッシュ*

Bプロ10月23(水)午後7時00分〜9時10分【生放送】
NHK-FM「ベストオブクラシック」

【放送内容】
ベルリオーズ/劇的物語「ファウストのごう罰」から「鬼火のメヌエット」「ハンガリー(ラコッツィ)行進曲」
ビゼー/交響曲 第1番 ハ長調
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ベルリオーズ/劇的交響曲「ロメオとジュリエット」作品17(抜粋)

指揮:トゥガン・ソヒエフ

NHK交響楽団オフィシャルホームページはこちら
(クリックするとNHKサイトを離れます)