灘 孝史役 金子ノブアキ・インタビュー

個性的な人物が絡み合う、濃密なドラマだと思う。
いい人を演じるのは難しい。

僕は、これまで嫌なヤツを演じることが多くて、灘のようないい人は初めてでした。灘は、とことんいい人で、誰に対しても偏見のない中立な人。嫌なキャラクターは振り切って演じられるけれど、誰が見てもいい人を演じるのは意外と難しい。相手へのちょっとした対応の仕方や何気ない仕草で、すぐにほころびが出ますから。
ドラマは、鈴音と水絵のピーンと張りつめた緊張感とともに展開していきますが、そこにポーンと灘のようなユルーい男が放り込まれて、もらい事故のようにいろいろなことに巻き込まれていく。そういう滑稽さがおもしろいなと思いました。日常に潜む恐怖を描いたヒリヒリするような場面が多いので、ほのぼのとした恋愛ドラマのような匂いがある鈴音と灘のシーンは、とてもいいメリハリになっていると思います。

灘が鈴音に惹かれたのは、自分があきらめてしまった夢みたいなものを彼女がもっているからだと思います。灘はドロップアウトした人間です。バンドをやっていたけど鳴かず飛ばずで、そんなときに古書店をやっていた父親が倒れて、店を引き継いだ。ですから、今は自分がやりたいことをやっているわけではない。もしかすると、バンドも本当にやりたかったことではなかったのかもしれない。そんな自分と比べて鈴音は、脚本家という仕事にまい進しているし、才能もある。それが同じ男だったら嫉妬するかもしれないけれど、女性の鈴音には素直に「すごいな」という気持ちになり、惹かれたのではないでしょうか。
一方、鈴音は灘と一緒にいると、水絵のプレッシャーを忘れてホッとできる。それが心地いいのだと思います。そういう意味では、お互いおぎない合っている関係なのかもしれません。

キスとミット打ち。

灘古書店のシーンは、東京の神保町にある店をお借りして撮影しました。そこは将棋や囲碁に関する貴重な古書がたくさん置いてあることで有名な店で、撮影の合間に何気なく手に取った本が何と20万円。そっと本棚に戻しました(笑)。昔は遠方からのお客さんも多かったようですが、今はインターネットで注文が入ると、店のレジがジリンジリンと鳴って注文書を吐き出します。本番中にその音が鳴ってしまいやり直すことも・・・長いシーンの最後の最後にレジが鳴ったこともありました(笑)。

この古書店の撮影で印象に残っているのは、ダンカンさん演じる曽我とのシーン(第5話)ですね。水絵を脅す曽我に灘が30万円を渡して、念書を書かせる。曽我は朱肉をつけて母印を押し、その朱肉がついた指をベローンとなめます。そのときの狂気をはらんだ曽我というか、ダンカンさんの顔が今も忘れられません。
あと印象的だったのは、鈴音と灘が公園でキスするシーン(第5話)。これは、シーンというより撮影がおもしろかった。ロケは浅草にある公園でやりましたが、公園のすぐ前がボクシングジムだったんです。窓が開いていて、ミット打ちするバシーン!バシーン!という音が聞こえてくる。本番のときはスタッフさんがお願いして窓を閉めてもらいましたが、大量の汗をかきながらミット打ちしているボクサーのかたわらで、鈴音と灘はキスをしました(笑)。

悲しいけど、美しいラストに向かって。

このドラマは登場人物が少ないけど、それぞれのキャラクターがめちゃくちゃ個性的で、それぞれがお互い複雑に絡み合っています。しかも演じている、内田有紀さん、池脇千鶴さん、尾美としのりさんなど、みなさん百戦練磨のすごい役者ばかり。だから、一つ一つのシーンが引き締まっていて濃密です。僕は、みなさんに引っ張っていただいた感じで、経験値の高い役者さんたちと共演できて本当に勉強になりました。
ドラマは、第6話以降も不気味でイライラするような感じが続きます。でもそれは、美しいエンディングを迎えるためです。もちろん勧善懲悪のドラマではないので、ラストでみんながハッピーになるわけではないけど、そこはやはり最後までリアル。だけど、僕は美しいエンディングだと思います。悲しいけど、美しい。切ないけど、清々しい。ぜひ、楽しみにしてください。



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