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2018年3月5日放送

再戦へ 秘めた決意 プロボクサー・山中慎介



戦いたい相手がいる、それだけ

プロボクサー山中慎介(35)。
山中は「神の左」と言われる左ストレートを武器に強い挑戦者を選び、5年以上も防衛を重ねてきた。去年8月、具志堅用高の大記録に並ぶ13回目の防衛戦でメキシコのルイス・ネリと対戦。
4ラウンド、山中はネリの強打でバランスを崩し、連打を浴びた。反撃できるチャンスを狙っていた時にタオルが投入された。山中は「まだやれると思っていたが周りを心配させた。」とタオルを投げたトレーナーをかばった。
試合後、対戦相手ネリのドーピング疑惑が発覚し、さらに後味の悪い結果に・・・。
一度でも負けたら引退を公言してきた山中だが「納得できない終わり方で終われば、数十年後悔する。あの負けでは終われない。」と現役続行を決意。
そして、「相手がドーピングだとしても一度KOで負けた。よくないことかもしれないけど負けは負け。素直な思いです。もう一度ネリとやりたい。」
元王者と現王者の戦いは、勝った現王者の方が自信につながり、有利と言われる。ボクサーとしては決して若くない35歳。山中はネリに借りを返したい一心でボクシング人生の全てを賭けて再戦に臨んだ。

写真走り込みキャンプ


自分を変える

山中は相手のパンチが届かない所を見極め、その遠い間合いから鋭く踏み込んで強烈な左ストレートでKO劇を量産してきた。
練習のほとんどの時間をその左に費やす。それは長所を伸ばすことが幅を広げ、短所を補うという考えからだ。
前回ネリは山中の距離を強引に潰し、接近戦で連打を放った。
山中はその対策のためにディフェンスを徹底的に強化し、接近戦で放つショートパンチの練習に取り組んだ。人の話を聞き、一生懸命考えて試合までの日々を過ごした。「なんだかんだで、今まで勝ってきたので、自分のスタイルを貫き通すことしか考えてなかった。ピンチの場面でもなんとか左が当たれば、倒せるやろうという感覚もありましたし、また同じことを繰り返すために再起したわけではないですから、自分をどこかで変えなければいけない。」
敗北を知り、山中は覚悟を決めた。

写真再戦に向けデイフェンス強化とショートパンチを磨いた
写真一日一日を大事に一生懸命考えながら過ごす


再戦は2ラウンド1分3秒TKOで山中は敗れた。
番組では試合2日後、山中に最後のインタビューをした。
約束の場所に山中は、晴れ晴れしい顔で現れた。
計量後、体重を2キロ以上もオーバーしたネリのボクシングへの冒とく、自分の費やしてきた日々を思い、涙が止まらなかった。心をかき乱されたが、山中は当日には集中できたので試合には影響はなかったと言った。
子供の頃に強い男に憧れ、ボクシングを始めた。
強さを追い求めてきた山中に、「山中慎介は強いですか?」と聞いた。
山中は「いまは胸を張って強いですと言えます」と答えた。その訳は自分が納得できるまで戦い続け、逃げ出しそうになる自分に勝つことができたからだという。

写真最後のインタビュー
写真「神の左」を最後まで信じた
写真リングを降りれば穏やかな表情


朝目が覚めた時、ボクサーの日課のロードワークをもう走らなくていいことに寂しさを感じる。もう一度生まれ変わったらまたボクシングを始めるかの問いに山中は「たぶん、やりますね。ただ今度はオーソドックス(右構え)でやります。もう左は磨き切ったから。」と答えた。

写真今年正月、子どもたちに初めて練習を見せた