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第341回 2017年11月20日

過労死と闘い、命を守る 労働弁護士・川人博



“心の救済”

川人は遺族から相談を受けると、証拠や証言をつぶさに集め、過酷な労働実態をあぶり出し、労災認定を積み重ねてきた。川人のもとには、毎日のように遺族が相談に来る。彼らと向き合うとき、川人には一つの信念がある。それは、労災申請は“心の救済”につながるということだ。
「『あなたの子どもさん、もう亡くなったんだから生き返るわけじゃないんだよ。これからの新しい将来を考えて生きていこう』と言う人がいる。ところが、ご遺族の感情としては、亡くなった原因とかあいまいにされて、『前を見て生きよう』と言われても納得できないというか、気持ちがそうならない。亡くなった方は戻ってこないけども、(労災申請は)亡くなった方に対する“供養”として、とても大事なことであると思います」。

写真労基署で労災申請する川人


亡き人になりかわる

川人の実績を支えるのは、地道かつ徹底的な調査。そのとき、大切にしていることがある。それは亡き人になりかわること。
「自分が亡くなられた人と同じような状況で動いているというか、亡くなった方の心境みたいなものが自然な形で自分の中に入ってくるというか。論理的に分析して、この人はこういう理由で苦しかったんだっていう話ではなくて、『ああ、苦しかっただろうな』『大変だったんだろうな』っていう感情が自然と出てくるっていうか、自分の中に生まれてくるような、ある程度感じとれるところまでいくのが調査の理想ではありますよね」。

写真パソコンに向かう川人


壁は高くとも 挑み続けよ

川人は、開業医だった父の影響を受け、「命と健康を守る仕事がしたい」と弁護士を志した。当時、労災認定基準は今よりさらに厳しく、認定率はわずか5%前後。多くの遺族が泣き寝入りを余儀なくされていた。川人は、企業への直接訴訟や行政訴訟で結果を積み重ねることで、認定基準の緩和を実現してきた。しかし、今も年間2,000人以上が過労死で命を失っているという現実がある。
大事なのは成果が出ないという事に甘んじてはいけないということ。弁護士たるものは、どんなに壁が厚くても、壁が高くても、最大限の努力をする。最大限の知恵を絞って壁を突破していくというのが弁護士の仕事」。

写真厚労省へ要望に向かう川人


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

責任感と柔軟性を合わせもつ人。心のゆとりをもつことによって、柔軟な発想、あるいは柔軟な知恵を生み出していくことができる人だと思います。

労働弁護士・川人博