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第338回 2017年10月23日

歩くしあわせを、もう一度 整形外科医・杉本和隆



夢を、支える

日本人の5人に1人が抱えるというヒザ関節の痛み。その解決法として注目を集めるのが、人工関節移植だ。その手術において杉本は全国でもトップレベルの症例数を持ち、さらには日本人の体格や生活習慣に合わせた人工関節の開発にも携わってきた。従来の半分ほどの切開で人工関節を移植する画期的な手術法、“MIS”を用いることで術後の回復を格段に早め、3週間ほどの入院で、ほとんどの患者が再び歩くことができるまでに回復、退院をしていく。
その中で杉本のこだわりは、ひとりひとりの患者の“夢”に耳を傾け、それに応える人工関節の手術を行うことにある。70代の患者の、長年バレーボールのチームに所属し、今後も続けたいという声を聞けば、高く跳び上がることはかなわずとも、柔軟性と安定感を追求した人工関節の移植にこだわり、退院から1か月半でチームの練習に復帰させることを実現した。

写真
写真症状に合わせ、さまざまな形状の人工関節を駆使
写真柔軟性と安定感にこだわった人工関節を設計


「ヤブ医者になれ」

東大病院で内科医を務めた祖父が、当時医大生だった杉本に伝えたのが「“壁医者”になるな。“ヤブ医者”になれ」という言葉だった。そこには、「壁は先を見通せない。でもヤブはよく見れば、その先に光が見える。だからヤブの先に光を見る努力をする、“ヤブ医者”になれ」という意味が込められていた。難しい手術や、治療法の見つからない症状など、大きな壁にぶつかるたびに杉本はこの言葉を思い出し、あきらめずに改善策を模索し続ける力に変えている。

写真祖父・新太郎さんと若き日の杉本


寄り添い、ともに歩く

ある日、杉本の耳に届いたのは、移植手術を終えた患者からの「痛みがおさまらない」という悲痛の声。検査の結果、発覚したのは手術直後には見られなかった大腿骨のヒビ割れだった。これまでに一度も経験のない異変により、杉本は再手術を願い出た。手術後、杉本は、再度のリハビリを躊躇する患者のもとに足しげく通い、勇気づける。患者とともに、狭いヤブの中から光を見つけ出したい。杉本はとことん、寄り添い、ともに歩いて行く。

写真発覚した大腿骨のヒビ割れ
写真再手術後も発生する不測の事態!


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

医学の歴史を引き継ぎ、その志を未来につなげていく。失敗を恐れずに半歩前を進み、それを次の世代へと引き継ぐことが私にとってのプロフェッショナル

整形外科医・杉本和隆