長野県伊那市の高遠城址公園、東京都台東区の隅田公園など全国の70か所以上の桜の名所で、満開の花が咲くように陰で支えてきたのが樹木医・和田博幸だ。樹木医といっても木と向きあうだけではない。押し寄せる花見客と桜をどう共存させるか。数十年先まで桜をどう健康に保つか。和田は知恵をしぼって公園全体のプランニングを行っていく。人々が絶景を存分に楽しみながらも、木の周囲の土壌を守るための園路の配置。花の位置を人の目の高さにするか、見上げるようにするかまで気を配りながらの木のせんてい。桜の名所を作り上げ、守っていくための和田の心配りはじつに細かい。全国の自治体などが和田を頼り、そのプランを元に桜の名所が守られている。和田は、桜に関する高度な専門性を持つばかりでなく、限られた予算内でどう進めていくかまで真摯(しんし)に突き詰める。その姿勢が、全国の桜守から厚い信頼を集めている。