クレーン船「富士」は、全長105メートル、つり重量
3,000トン。これまで、東京ゲートブリッジや築地大橋など、全国各地で難工事を成し遂げてきた。今回の仕事は、本州と気仙沼湾に浮かぶ大島を初めて結ぶ橋の架設。挑んだのは、船長の段野下定美をはじめ、特殊な技能資格を持った20代から50代の男たちだ。持ち場は、大きく3つに分かれる。「富士」の地下にある機関室を仕事場とする機関士。船外で活躍するのは、つり上げる物体にワイヤーをかける甲板員たち。そして、ブリッジと呼ばれる船の操縦室にいるのが、船長の段野下とクレーンの操縦士たちだ。
工事は、1か月をかけ、橋桁から段階的に行われた。そして最後が、中央にかかる橋の架設。その全長は228メートル、重さは2,700トンにも及ぶ。この巨大な橋を2.4キロ離れた現場へ持っていき、一気にかける。これまで数々の橋をかけてきた男たちだが、今回は勝手が違った。作業時間が限定的だった。日中は、湾内を連絡船のフェリーが運航しているため、富士は移動できない。フェリーが走っていない深夜に富士を移動させ、その後、翌日の夕方までに橋をかけ終えなければならない。深夜の作業は、困難を極めることになる。