東日本大震災の津波で、畠山の養殖場は壊滅的な被害を受けた。中でも、畠山の養殖にとって命ともいえる舞根(もうね)湾の海中には、瓦礫(がれき)や泥が降り積もった。そうした状況にもかかわらず、畠山は、養殖を再開させることを決めた。根底には、半世紀にわたり海と共に生きてきた男の「海を、信じる」という信念がある。
昭和35年に三陸を襲ったチリ地震津波。畠山は地震後、驚異的な早さで成長するカキを見た。昭和40年代以降、赤潮が頻発するようになった気仙沼の海が、長い時間をかけて元の姿を取り戻していくのを経験した。
「海を恨んではいない。海は必ず戻ってくるから。」
あらがいがたい自然と向き合う時、立ち向かうのではなく、受け入れ信じること。そして、自分が今できることを精一杯やることが大切だと畠山は考えている。