一般的なネジは、らせん構造ゆえに振動や衝撃によって、必然的に「ゆるみ」が発生してしまう。それは、克服出来ない「永遠の課題」だった。道脇はそこにブレークスルーをもたらす。らせんの構造そのものを見直すことで、右回りと、左回り、両方のナットが締まる「ゆるまないネジ」を発明した。有史以来、誰も成しえなかった偉業。その裏には、ひとつの流儀がある。
『不可能って証明されてないのに、勝手に決めるのって、ちょっとおかしいですよね。物理法則や、社会の状況と比して、不可能じゃないんであれば、可能性があるわけです。それをイメージで軽々しく不可能を使うっていうのは、問題がある。不可能の証明をしてから、不可能であると言うべきでだと思うんです。』(道脇)
革新的な発明を生み出すには、時に、不可能といわれる事柄にも挑まなければならない。どんな時も道脇は、問う。「不可能を、証明したか。」
どんな難題にも必ず答えを出す、「分かるまで考える、できるまでやる」それが道脇の信条だ
道脇の発明した「ゆるまないネジ」
電車に乗っていても、街を歩いていても、常に頭のなかは新たな発想であふれている。その根っこにあるのは、他者への思いやりだ。道脇は、社会にあるさまざまな課題を解決するために、自らの頭脳を最大限に使いたいと考えてきた。道脇は言う。
『愛情が大事ですね。僕の場合は、頭で何か考えたり、発明するっていうことの原動力、指図しているのは常に自分の心なんです。心が頭を使っている。つまり、頭っていうのは心の道具であるっていうのが僕のとらえかたなんです。』(道脇)
「誰かのため、何かのために。」その“心”が、今日も、道脇を突き動かしている。
エンドユーザーだけでなく、それを設置する作業者のことまで考える
作業効率を格段にアップする専用のパーツを発明
握力ゼロでもペットボトルの蓋が開けられる器具の発明
高度経済成長から50年あまり。日本の産業全体が大きな曲がり角を迎えるなか、企業は次の時代を切り開くためのイノベーションを求めている。道脇のもとには、そうした企業からの依頼がひっきりなしに舞い込んでいる。激動の時代に生きる者として、自分のなすべきことはなにか。道脇はひとつの信念のもとに、生きる。
『今やらなかったら、明日がなくなってしまいますよね。時代の転換点を、僕らの世代が担っているわけですから。しっかりそこに解決策を見いだしていくということは、非常に重要な、僕ら世代、あるいは僕個人の使命であると思うんです。あの世に何も持っていくことができないわけですから、生きている間に、出せるものをみんな出して、未来のために置いていきたいというのが僕の思いなんです。』(道脇)
自分の人生の中で、どれだけのものを後生に残していけるか。道脇の未来に向けた闘いは続いている。
大手プラントメーカーからの難題に立ち向かう