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スペシャル 2016年10月31日放送

世界が驚いた!ロボット開発者スペシャル ロボット研究開発・柴田崇徳、遠藤謙、堂前幸康



世界で激しい開発競争が進む中、ユニークな発想で「暮らしを支える」ロボットづくりに励むプロフェッショナルたちを描くスペシャル版!プロたちの挑戦に密着するVTRに加え、スタジオに劇団ひとりさん、市原悦子さん、大学でロボット工学を専攻したモデル・梨衣名(りいな)さんを迎える。「私、ロボットには疑り深いの」と語る市原さん、初めてロボットに接した驚きの感想とは!?

写真


ロボットには、ロボットにしかできないことがある

国立産業技術総合研究所の柴田崇徳(49)が開発するのは、国内外で4,500体が活躍するアザラシ型“癒やし”ロボット「パロ」。人工知能で相手の声を認識し、なでると全身に仕込まれた多種多様なセンサーが反応。喜怒哀楽を緻密に表現する技術が詰め込まれている。パロとふれあうことで、認知症による徘徊(はいかい)行動が抑えられ、抗精神病薬を減らすなどの効果が世界中から報告される。
柴田が常に心に留める言葉がある。“ロボットにはロボットにしかできないことがある”―
「人間が人間に対してだと、実は心を開けないときがあったりすると思うんです。だけど実は、ロボットが機械だからこそ、心を開けている場合がある。ロボットっていうのは、そういう“心の扉”をちょっと開けるきっかけになると思うんです」。
柴田がこの信念に確信を持つようになった背景には、ある男性との出会いがあった。男性の息子は白血病を患い、面会が制限される環境で闘病生活を送っていた。その中で救いになっていたのがパロとのふれあいだったのだという。介護や看護のような、人の心に寄り添うことが何よりも大切な分野にこそ、ロボットが役に立てる部分がある。確信を抱いた柴田は、研究が冷たい目で見られている中でも、“遠い未来”を心に思い描きながら奮闘。欧米など30か国以上の施設で使われるまでになった。さらに今、知的障害のある人たちや、脳に障害のある人たちのためにパロを改良するプロジェクトも始まっている。「人の心に寄り添うロボット」。その可能性を、これからも柴田は突き詰めていく。

写真国内外の施設を訪ね、改善点を探り続ける柴田
写真実際の鳴き声を再現、抱くと体温も感じられるパロ
写真ギネスブックでも「世界一癒やされるロボット」に認定


“あいつのために”そして“誰かのために”

「ロボット義足」の実用化を目指す気鋭のエンジニア、遠藤謙(38)。遠藤が作るのは、モーターと人工知能を搭載し、使う人の歩きに合わせて最適な動きをアシストする、最先端の義足だ。一般的な義足の6割程度の力で歩くことが可能なため、体への負担を大きく低減。また健常者と比較したときに、見た目も変わらず、走ったり階段を上ったりといった動きも同様に行えるようにしてくれる。自然な動きを実現すれば、装着している人はもはや身体障害者と呼ばれなくなるのではないか―それが、遠藤の思い描く到達地点だ。
もともと、二足歩行ロボットの開発を夢見る研究者だった遠藤を、ロボット義足開発に向かわせたのは、親友との“約束”だった。高校の後輩・吉川さんの左ひざにがんが見つかり、最悪切断もありうると診断されたのだ。「本当にあいつの役に立つロボットを作ろう」―心の中で約束を誓った遠藤は、最先端のロボット義足の研究を行うアメリカ・マサチューセッツ工科大学に留学。しかし、世界最高レベルの内容についていけず、難聴を患うほどのプレッシャーを背負い込んだ。そんな時、遠藤を支えたのは、懸命に前を向いて生きる親友・吉川さんの姿だった。
帰国して2年後、開発に成功した試作機を、遠藤は世界に披露した。その晴れの場でロボット義足を笑顔で装着したのは、あの吉川さんだった。
この夏、遠藤はさらなる実用化に向け、研究に取り組んでいた。課題であった重量を解消するために遠藤は小型のセンサーを開発し、部品をぎりぎりまで軽量化。新たなロボット義足を試すために、遠藤の元を訪れたのは、吉川さん。調整を続ける中、吉川さんは次第にスムーズに動くようになったロボット義足に手応えを感じ、「ぜひ階段を上りたいです」という言葉を発した。身近な人物を思うことが、いつか誰かの希望につながる。2020年の実用化を目標に、遠藤は歩き続ける。

写真世界で先行事例の少ない、ロボット義足に取り組む遠藤
写真遠藤の親友、吉川さん。研究を応援し続ける
写真ヒザのモーターで動く義足。「かっこよさ」「未来感」も重要


悔しさで進化する

サラリーマン技術者、堂前幸康(35)。開発したのは、これまで人間にしかできないとされてきた作業を肩代わりし、工場で働く人々の負担を劇的に減らす産業用ロボット。「今の世の中の人は仕事をしすぎだと思う。家庭でごはんを食べるとか、そういう幸せな時間を延ばすために、代わりに労働をやってくれるようなロボットを目指していきたい」と語る。
堂前の「高速バラ積みロボット」は、科学技術のアカデミー賞とされる国際的な賞を受賞。最大の特徴は、従来できなかった「バラバラにものが積まれた状態」から、ひとつだけをつまみ上げるという機能だ。ロボットに、つまむ部品の形ではなく、部品の山の中からつかめるところだけを識別させるという革新的な画像認識技術を開発したことが、実用化につながった。
そんな堂前を突き動かしてきたのは、「悔しさ」だという。実は堂前には学生時代、ミュージシャンになるという夢があった。しかし、プロデビュー目前にして、堂前のワンマンな姿勢が原因でバンドが空中分解。もう絶対に失敗しないという悔しさが、堂前の原点だという。
今年7月、堂前はドイツにいた。大手通販企業・アマゾンが主催する国際ロボットコンテストに、大学との混成チームで出場するためだ。ライバルは、世界屈指の企業や大学。形状も重さもバラバラの商品を棚に積みおろしするロボットの性能を競い、大きなビジネスチャンスを狙う。
堂前たちはこの大会に、バラ積みロボットを改造したロボットで挑んだ。目指したのは、「あきらめない」そして「やさしい」ロボット。これまでのロボットでは、正面から挟み込むしかできなかったが、吸盤を加えることで、上からや横からも「あきらめずに」商品をつかめるように改良。さらに実際の運用を考え、商品をつぶしたりすることなく、「やさしく」つかむようにロボットをプログラムした。
そして始まった本番。1種目、箱から棚に商品を戻す競技において、堂前たちのロボットは出だしを快調にこなす。しかし、途中で思わぬトラブルからロボットの画像認識ミスが発生し、結果は16チーム中11位という苦いものとなった。悔しさにまみれる堂前。しかし、残された時間が少ない中、吸盤をフル活用するというアイデアを提案。仲間たちとともに、競技開始直前までロボットの改良に取り組み続けた。
迎えた最終種目、棚の商品をつかんで箱に入れる競技。他のチームの失敗が続き、挽回のチャンスが訪れる。しかし、堂前たちのロボットは、二つ目の商品、ティッシュの箱をつかむことに失敗してしまう。それでも堂前はあきらめず、ルール上一度だけ認められる「やり直し」を宣言、再度のチャレンジで、箱を運ぶことができた。順位は8位。再び悔しさをかみ締める堂前に、現地の記者が声をかけた。「あなたたちのロボットは美しかった」。堂前がロボットに込めた信念は、伝わっていた。さらに主催企業からは、高い機能を発揮した画像認識センサーを購入したいという商談も。悔しさを糧に、堂前は開発に挑み続ける。

写真30代にして業界に衝撃を与えたサラリーマン、堂前
写真新たに挑むのは、物流業界。新機能の吸盤を駆使する
写真最新技術が集う国際コンテストで、注目を集めた


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

■柴田崇徳さんやっていることは細い、狭いことかもしれないんですけれど、そこは深く・・・少なくとも自分の役割の部分は、他の人には負けないような「深み」を持った仕事としてやっていくことが重要なんじゃないかなとは思っています。■遠藤謙さんやりたいことをやり続けられる人、だと思います。■堂前幸康さん成果を成果で終わらせないで、次の挑戦につなげていく。その次の挑戦をも、また次の成果につながっていく。それをずっと繰り返していける人だと思います。

ロボット研究開発 柴田崇徳、遠藤謙、堂前幸康