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第279回 2015年10月19日放送

常識の外に、未来はある 起業家・増田宗昭



過去の延長線上に、未来はない

CD・DVDのレンタルで日本最大のチェーンを展開する増田。だが、増田は自らの仕事はレンタル業ではなく企画業だと言う。大切にしているのは、世の中にないアイデアや発想を形にして、新たなビジネスを企画すること。増田は、32年前に創業して以来、次々と企画を生むことで、年商2,000億円の企業へと押し上げてきた。
例えば12年前、いち早く始めたポイントカード事業。増田はポイントと引き換えに、客の購買データを収集し、年代や性別、売れる物の傾向などを分析して、企業に販売する仕組みを構築した。今ではコンビニや飲食店など100社を超える企業が提携している。また4年前には、ネット時代における書店の新たなビジネスモデルも開発。コーヒーを飲みながらゆっくり本を選べる店舗の設計、ジャンルごとにオススメの本を探してくれる専門のコンシェルジュを置くなど、独自の店作りで売り上げを伸ばしてきた。増田は、なぜ「企画」という仕事にこだわるのか。
「(かつての経営は)同じものをとにかく速くたくさん作る。それが競争戦略だったし、成長だった。だけどその延長に未来はないのよ。過去の延長線上には未来はない。新しい未来のためにプラットフォームを作るのが企画会社だし、それをしないと生き残れない」。
消費者の価値観が多様化し、求めるものが目まぐるしく変化する時代。その変化に対応する者だけが今の時代を生き残れる。強い危機感が増田の企画への情熱を駆り立てている。

写真12年前に始めたポイントカード事業。会員数は5,500万人を超える。
写真4年前にオープンした書店。出版不況の中、売り上げは伸び続けている。


客の声を、自分の中に聞く

常識破りのビジネスを次々と生み出す増田。その企画は、意外にもひらめきや思いつきでは生まれない。地道な作業の積み重ねから生まれる。増田は社長らしく会社に居座ることをとにかく嫌う。マーケティング調査を重ねることはもちろん、暇さえあれば外に出かけ、街なかの店をつぶさに観察する。
目の前に置かれた環境を当たり前と思わず、一生活者として徹底して見直すことで、客が求めるものを単に提供するだけでない、革新的なサービスを生み出そうと考えるからだ。客さえも気づかないものを提案することが、「企画」。そのために、増田は生活者としての感性を磨き続ける。
「世の中どうなってんだろう、どんな風に向かうんだろうって、みんな外に答えを探すけど、自分は何がしたいんだろう、どうなったら幸せなんだろう、自分っていうことの中から答えが湧き出るような自分でありたい。だからあまり社長業に埋もれたくないし、一生活者として自分の感覚がいつも世の中とシンクロしているように生きなきゃいけないと思っている」。

写真街なかをつぶさに観察し、企画の種を探す。
写真20もの企画を抱える増田。社員にも主体性を厳しく求める。


革新は、失敗からしか生まれない

3,000名の社員を率いる増田が、リーダーとして大切にする信念が「失敗を許容する」ことだ。増田は、新たな事業を企画する時、成功するとは見込まない。売り上げゼロでも経営が傾かないように計算し、失敗を前提に事業計画を立て、社員にも常に「失敗を恐れるな」と発破をかける。世の中にないアイデアや発想を形にする増田の仕事は、時に共感を得られず、鳴かず飛ばずに終わることも少なくない。だが、始めは失敗に終わっても、その要因を一つ一つ分析し、改善していけば、革新的なビジネスにつながる。「失敗を計算し、大胆なチャレンジをする」。守りながら、攻める経営が、会社の成長を支えている。
「普通の人はみんな成功すると思ってやるの。だけど、俺は失敗すると思っているの。だから事業計画書には売上げゼロっていつも書くの。どこまで誠意込めて一生懸命寝ずにやっても、失敗することがあるわけさ。もう失敗だらけだからよ、俺らがやることって。だから価値があるのよ、だから事業になるのよ。誰でもできる仕事は、事業にならない、みんなやるから」。

写真5月にオープンした家電店。客の数は多いが、売り上げは目標に達していない。
写真家電店の課題を分析し、てこ入れする増田


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

人を一番幸せにできる人。人生を一番豊かにできる人。大変?違う、楽しいよ。大変だけど、楽しい。だって人が喜ぶから

起業家 増田宗昭


The Professional's Tools(プロフェッショナルの道具)

増田が、企画を形にする時に必ず使う道具がある。B4サイズの画用紙とスケッチ用の特殊な鉛筆だ。紙の上にキーワードをいくつも書き出し、結びつけることで、頭の中を自在に表現する。こうして図にすることで、企画の意図が、相手にわかりやすく伝えられると言う。30年間企画屋として渡り歩いてきた増田ならではの工夫だ。
「企画ってイメージなんだよね、言葉じゃない。形になっていないから見えない。見たことも経験したこともないことについて、「いいね」って言ってもらえるようにするにはどうすればいいか、常に考えているのね」

写真企画の意図や情報の優先度を視覚的に伝える。