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これまでの放送

第265回 2015年5月25日放送

渡辺謙55歳、人生最大の挑戦 俳優・渡辺謙



断崖絶壁で、あがく

俳優・渡辺謙には、若い頃から貫き通してきた流儀がある。それは“断崖絶壁であがく”がごとく精一杯仕事に向き合うことだ。渡辺は次のように語る。
「とりあえず安全なところで自分のこう安全でひっかかりやすいところにやっていくというよりかは、精一杯手を伸ばして足を伸ばして、自分の体のどこまでそういうものをひっかけてしかも上まであがっていけるかということをトライしないと、僕はいけないと思うんだよね。まあ言ってみれば崖をよじ登るみたいに。そうやってあがいているのが全てだと思っているので。」
そして今回の挑戦、ブロードウェイミュージカル「王様と私」。歌もナマの英語の舞台も初体験の渡辺にとってそれは、またしてもあがきの連続となった。ギリギリを強いられる現場であがき続けること、その姿勢が渡辺をさらなる高みへと導いてきた。

写真極限まであがき続けた先にたどりつく境地とは・・・


試す 捨てる 試す 捨てる

渡辺が芝居をするとき、大切にしていること。それは、日々新しい何かを試し続けることだ。より「面白い芝居」とは、どんなものか。渡辺は、まず思いついたこと、その時の感情を素直に表現してみる。そして次に同じ場面を演じるときにはそれを惜しげもなく捨てて、また新しい芝居を繰り出す。そうすることで、より『面白い芝居』へと時々刻々と塗り替えていく。今回渡辺は英語が足かせとなる難しい局面に幾度もぶつかった。だがどんなに追い込まれても、新しい芝居を試すことをやめなかった。芝居を固めてしまえば、そこで新しいものが生まれる可能性は潰(つい)えるからだ。渡辺は次のように語っている。
「とにかく試すんですよ。可能性を試す。恥をかく商売だと思ってるから。捨てて塗り替えて捨てて塗り替えてっていうことをする、ある種の勇気を持ってる奴が最後には勝っていく、というかな」。渡辺が世界の第一線で闘い続けられてきた裏側には、こうした弛(たゆ)まぬ姿勢がある。

写真今回のリハーサルでも試行錯誤を繰り返した


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

あきらめないことだよね。とにかく何があろうが与えられたものに関してはあきらめないこと。その与えられた環境の中で与えられた自分の状況の中でベストを尽くすということ。それができるかできないか。ということじゃないかなと思いますね。

俳優 渡辺謙


プロフェッショナルのこだわり

渡辺は、今回のブロードウェイ挑戦で半年間ほぼ一人暮らし。舞台で最高の自分を解き放つため、さまざまな工夫を施している。自炊もその一つ。毎日ごはんを炊き、稽古場にもおにぎりを持ち込むほど。外食はほとんどしない。また、生け花も欠かせない。部屋の目立つところに必ず飾る。花を生け替えるのは一週間ごと。つぼみが膨らんで花が咲いて散っていく様子が時間の流れを教えてくれ、生活のリズムが作れるという。渡辺は、舞台に立つ数時間のために24時間、生活の全てをささげる。
「起きて、メシを食って、着替えて、出て行ってリンカーンセンターに入ってそこからステージに向かっていくっていうとこの、1日が僕にとってはもう全部がライブなわけ。無駄なものがないといったら変だけど。1日というのを積み重ねていくしかないんですよ。」

写真花の中でもお気に入りはチューリップ
写真ごはんを炊き、必ずおにぎりを稽古場まで持って行く