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これまでの放送

第253回 2015年1月26日放送

日本は、日本の道を行け ラグビー日本代表ヘッドコーチ(監督)・エディー・ジョーンズ



強みを知り、強みを伸ばす

日本ラグビーを急成長させ、世界ランキングを過去最高の9位にまで押し上げることに成功したエディーさん。そんなエディーさんがチームを率いるときに最も大切にする流儀が、「強みを知り、強みを伸ばす」というものだ。
体格が最もものを言うスポーツのラグビーにおいて、体が小さい日本人はこれまで世界の強豪にはまったく歯が立たなかった。だがエディーさんは、日本人の強みを徹底的に観察し、それを伸ばすことで世界の強豪相手にも打ち勝つ集団へと進化させた。エディーさんが考える、日本人の強み。それは、どんな過酷な練習にも耐え、向上心を持ち続ける“勤勉さ”だ。エディーさんは、日本人の勤勉性を生かして、早朝6時から練習を始め、選手を徹底的に追い込むことで、世界一タフなチームを築こうとしている。
「日本人の強みは、真面目で忍耐力があることです。それは間違いなく世界一です。他の国の選手なら、とっくに逃げ出しているでしょう。」(エディー)

写真日本の“勤勉さ”を生かして、世界に例を見ない
ハードなメニューを次々と強いる


ハッピーにしない

世界の名将・エディーさんの名将たるゆえんは、選手一人一人を理解し、その能力を最大限に引き出す手腕にある。
代表合宿の間、エディーさんはひたすら選手の一挙手一投足を観察し続けている。選手の能力や課題を見極めるのはもちろん、「どんな性格か」、「コーチや他の選手との関係はどうか」、「ラグビーを続ける動機は何か」など、それぞれの選手の内面までつぶさに見つめる。その上でエディーさんは、選手の心を刺激するような策を次々と講じ、選手から力を引き出していく。
たとえば、引っ込み思案でチームに馴染めない選手がいれば、思い切ってレギュラーに抜てき。他の選手と、より積極的にコミュニケーションを図らなければならない状況を作る。あるいは逆に、レギュラーの選手から少しでも過信や慢心を感じれば、容赦なくレギュラーから外すなど大なたを振るう。選手を成長させるために必要なのは、選手を正しく理解し、それに合った方法で“少しの不安”や“緊張感”を与えること、エディーさんはそう考えている。
「選手の心をもてあそぶことはしませんが、少しだけ揺さぶりをかけるのです。私はハッピーなチームにはしたくありません。居心地がいいと能力は発揮できないからです。ときには少し突き放すことで、選手が100%安心しないようにしています。あえて刺激し、緊張感を作り出すのです。」(エディー)

写真ハッピーなチームでは、強い組織は作れない
気の緩みがあれば容赦なく指摘する


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

私にとってプロフェッショナルな人というのは、何事も常にしっかりやろうとしている人だと思います。どこであろうと何をしていようと、自分の仕事はできるだけ完ぺきにやろうとする人です。

ラグビー日本代表ヘッドコーチ(監督) エディー・ジョーンズ


放送されなかった流儀

波は小さく

世界各国の強豪チームを率い、実績を上げてきたエディーさん。どんな組織でも、成長させていくには、必要不可欠な心構えがあるという。それは、“感情の波を小さくする”ということだ。
「大事な試合に負けて、自信を失った。」「体調が悪く、今日は少し気分が乗らない。」どんな人でも感情的に落ち込み、やる気がでない日もある。だがエディーさんは指導者として、誰にでも感情に起伏があることを理解した上で、そうした波を最小限にとどめさせることが大切だという。
「技術的にも感情的にも、常にやる気が満ちあふれている組織はありえません。自分も生きていく中で100%頑張る気持ちになれない朝もあるでしょう。でも、そういう日こそ自分を奮い立たせないといけません。波を小さくさせ、一貫性を保つことが成長の差を分けるのです。」
ひとたび惰性が習慣づけば、人はどんどん易(やす)きに流れ、元の状態に戻すことさえ難しくなる。だが、自分を律する力を身につけているものは、気持ちの落ち込みも少なく、再び成長曲線に乗ることができる。指揮官としてエディーさんは、まずは自分の波を小さくした上で、指導する選手の“波”にも気を配り、鼓舞し続けていく。

写真早朝6時から始まる練習
選手が来る前にみずからの体を温め、万全の態勢で待つ