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これまでの放送

第230回 2014年5月12日放送

まず動け、未来はその先にある プログラマー/アーティスト・真鍋大度



“誰もやらない”

フィギュアスケートのエキシビションやPerfumeのライブ、東京オリンピック招致の映像から、有名CMまで。数多の分野で世界を驚かす表現を生み出し続けている真鍋。真鍋が表現を生み出すときに大前提にしているのが、誰もやらないことをやる、という至極シンプルなことだ。たとえクライアントから、「○○○のようにしてほしい」と前例を出されても、絶対に同じものは作らない。真鍋が関わる限り、何か新しいこと、誰もやっていないことを盛り込む努力を必ずするという。真鍋は番組の中で次のように語っている。
「誰かがやりそうだなと思うことはちょっと避けちゃう節はあるかもしれないですね。1点物で作っていくっていう。そうやって価値をつけていかないといけない。それってすごくコストパフォーマンス悪いのでなかなかやりづらいと思うんですけど。3年後に、もう誰でもできて全く価値がないものになったときに、じゃあ何をやっているかっていうのを考えると言うか。たぶん新しいことをやりつづけるっていうのはそういうところだと思うんですよね」

写真誰もやったことのない表現で世界中を驚かせてきた
写真真鍋の名を一躍有名にした「electric stimulus to face」より


とりあえず、やる

昨年11月。真鍋はラジコンヘリを使って全く新しい表現に挑戦しようとしていた。しかしこの時点で、何か新しい仕事の依頼を受けているわけではなかった。真鍋たちが大切にしているのは、誰かに頼まれたからやるのではなく、とりあえず、自分たちのおもしろいと思うことをやってみる、ということ。自分たちの感覚を第1の羅針盤として、考えるよりも先に「とりあえず、やってみる」。そのことが、次の何かを生み出すと信じている。真鍋は番組の中で語っている。
「いきなり100%設計できるわけではないので、こういう実験を重ねて勘どころを探していくというか。まああとこの段階がいちばんおもしろいですけどね。失敗し放題というか、いちばん楽しい時間。」
このときも4日間、考えるより先に、時に荒唐無稽(こうとうむけい)とも思われることも試し続けた。

写真仲間と、思いつくままにおもしろいと思うことを試すのが真鍋のやり方


効率なんて、知らねえよ

この春、ラジコンヘリとダンサーの共演という前代未聞の表現に真鍋は挑んだ。ダンサーとヘリの動きを合わせた日、真鍋は深夜0時を過ぎても、現場を去ろうとしなかった。そして周りから疑念の声が上がる中、ふと思いついた表現をとりあえず、やってみた。そこには見たこともない光景が広がり、まわりは驚嘆の声を上げる。
試行錯誤をはじめてから15時間以上をたったとき、真鍋がつぶやいた言葉がある。
「結構みんなうまくいかなそうだなとみんな思ってやらないんですよ。僕はそれをちょっと、とりあえずやってみる。100個やったら、1回ぐらいはおもしろいものが出るので」
それは効率的なのかどうか、とディレクターが尋ねると次のように真鍋は漏らした。
「効率とか・・・ねえ。効率悪いけど、ほかにやり方あるかなぁ。いちばん効率いいのは、自分で手を動かさないことですね。効率いいって言うか、いちばんなんか手っ取り早い。」
世界中から声がかかり、手がける仕事がどんなに大きくなっても、真鍋は現場でみずから手を動かすことをやめない。クリエイティブであり続けるために真鍋が大切にしているものの一端がここにはあった。

写真ヘリにパネルをつけて飛ばしてみると、見たこともない光景が広がった
写真真鍋はみずから手を動かして、新しい表現を作ることにこだわり続ける


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

・炎上を呼ぶときに集まる人・伝えるレベルを選ぶ人ですかね・トップ、言葉、限界を捨てる人の巻

プログラマー/アーティスト 真鍋大度


解説: 今回のプロフェショナルでは、「プロフェッショナルとは」を真鍋自身に生放送で表現してもらった。
表現された真鍋の「プロフェッショナルとは」がこの3つ。

生放送に使われた技術の一部を体験できるサイト
http://professional.rzm.co.jp/index.html


プロフェッショナルのこだわり

誰も見たことのない表現を生むために真鍋が大切にしていることがある。それは、週に1回は大学の研究室や企業を訪ねて、最先端の研究や機材に触れること。番組では、32個のマイクで音源を可視化できる、音源可視化装置をリサーチする真鍋の様子を取材した。そこには少年のように目を輝かせて機材の操作を楽しむ、真鍋の姿があった。
さらに真鍋は、過去に行われてきた表現の事例にも、大きな関心を示す。例えば、ダンスなどが過去にどういうテクノロジーを使って表現されてきたか、17世紀にまでさかのぼって調べたものをウェブサイトにまとめるなど、その興味は人並み外れている。
最新のもの、過去のもの、そのどちらにも興味を持ち、日々触れ続けることが、新しいことを生む引き金になると真鍋は信じている。

写真真鍋が興味をもったのは32個のマイクが付いた、音源可視化装置