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これまでの放送

第200回 2013年5月13日放送

希望のリハビリ、ともに闘い抜く リハビリ医・酒向正春



脳の力を、引き出す

脳卒中によるマヒなどの後遺症を治療するため、できる限り早い段階から、積極的に体を動かしていく“攻め”のリハビリテーション。この分野の最前線で闘う酒向が武器にするのが、脳の画像分析だ。脳卒中の専門医としての経験を生かして、患者の脳の画像を詳細に検討し、傷ついた脳に残された回復の可能性を見つけ出す。そして、読み取った情報に基づいて理詰めのリハビリを繰り返していくことで、失われた体の機能は驚くほどの回復を見せる。

写真傷ついた脳に残された力を、最大限に引き出す。


リハビリ=人生の再出発

リハビリの現実は、決してなまやさしいものではない。脳卒中による後遺症を抱えた患者の中には、せん妄やうつ病など、精神的なダメージを負ってしまうケースが少なからずあり、それがリハビリを難しくする。しかし酒向は、どんなに困難なケースでも、最後の最後まで粘り抜く。リハビリには、患者の人生を取り戻すという大切な役割があると、信じているからだ。
「リハビリは、まさに再出発。おいしいものを食べる、見たい景色を見る、それで自分が生きてるということを実感し、新たな人生を送ってもらう。それをサポートするのが私たちの医療。」

写真目指すのは「人間回復」だという。


命が助かって、リハビリをして、それで終わりじゃない

「こんなに患者の気持ちを分かってくれる先生はいない。」そう評される酒向の医師としての姿勢は、自らが味わってきた苦しい経験の中で培われた。中学1年の時に交通事故で重傷を負い、人を救う医学の力に憧れを持つようになった酒向。やがて、多くの患者の命を救う脳神経外科医となったが、一命は取りとめても重い後遺症に苦しむ患者に対し、何もしてあげられない無力感にさいなまれるようになった。そして、40代にしてリハビリ医に転身したが、今度は父・正信さんが脳梗塞で重い後遺症を負った。酒向は自らリハビリを手がけて回復させたが、退院後に再び悪化。「リハビリ後」も体の状態を維持し続けることの難しさを、家族という立場で嫌というほど味わうこととなった。酒向は今、すべての経験を糧にして、患者と家族を支える医療を目指している。

写真リハビリは、退院後も続く長い闘い。それを支えたい。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

どの仕事でも、ひたむきに仕事をしていると、2~3年間で限界が見えてきます。そのときに、しっかりと情熱を持って、使命感を持って、その限界をクリアしようと努力して、アクションを起こせる方がプロフェッショナルじゃないかと考えてます。

リハビリ医 酒向正春


放送されなかった流儀

あえて“普通”のリハビリをする

酒向の病院で行っているリハビリは、行うタイミングや負荷の強さは計算されているが、メニュー自体は、ほかには無いような特別なものではない。施設や器具も普通のもの。その中で、廊下や階段など身近なものを工夫して使いつつ、効果を上げている。目指すのは、「どこにでもある普通の病院」で、質の高いリハビリをできるようにすること。そして、リハビリを病院の中だけで終わらせず、退院後も家の中などでずっと取り組んでいけるものにすることだ。それが、高齢化や救命治療の進歩により、後遺症を抱えた患者が増え続ける今の日本に必要なことだと、酒向は考えている。

写真誰もが質の高いリハビリを受けられる社会を目指して。