“駅弁販売のカリスマ”として全国から注目を集める三浦。専業主婦だった44歳の時、駅弁を販売する会社でパート販売員として働き始めると、担当する売店の売り上げは急上昇。53歳で埼玉・大宮営業所の所長に抜擢された。現在、JR大宮駅構内の売店など9つの店舗で100人を超える部下を統括している。
三浦は、出勤する日は必ず部下たちと店頭に立つ。接客する時に大切にしていることは消費者の立場で考えること。三浦は専業主婦時代、「まだ買うか決めていない時に押し売りのように店員に声をかけられるのが嫌だった」という。その経験から店に立ち寄る人すべてが駅弁を買うと決めていると考えず、場合によっては、そっと見守ったり、世間話をしながら、買うと決めるまで待つ。その客がどの駅弁にするか具体的に悩み始めてから、それぞれの商品の個性や特徴を正直に伝えアドバイスする。客が買ってよかったと納得して駅弁を食べてもらうことを、何よりも大切にしている。こうした姿勢が、店の売り上げを結果的に伸ばすことになると三浦は考える。
営業所長になって6年目。三浦は今でも進んで売り場に立つ
三浦は、パートやアルバイトの販売員たちの声に耳を傾けることを大切にしている。それは店頭に立つ彼らにしか分からない、「客層ごとの好み」や「商品の売れ筋」をつかんでいるからだ。三浦はどの駅弁をどれだけ発注するかという毎日の判断を、ある程度キャリアを積んだパートやアルバイト販売人に任せている。三浦が所長になる前までは事務所に常駐する営業職の社員が担っていた仕事だ。この発注システムの変更で、売れ残る駅弁の数は大幅に減り、利益は上がった。そして、重要な仕事を任されることにより、販売員のモチベーションも上がり、より前向きに仕事に取り組むようになったという。
三浦は駅弁の発注をパートやアルバイトの販売員に任せている
三浦は出勤する日に欠かさず行っていることがもう一つある。それは駅の売店を回るとき、販売員にさりげなく声をかけることだ。何気ないやりとりから、体調や働く意欲が下がっていないかを確かめる。また彼らの相談に乗るときも、三浦は極力、事務所ではなく、客がいないときを見計らって店で話すようにしている。事務所で聞くと、「所長」と「部下」という意識が互いに強くなってしまうが、店であれば、肩ひじ張らずに話ができると三浦は考える。販売員と同じ目線で対話できることが営業所長・三浦の強みの一つだ。
三浦は店舗を回り、店員とコミュニュケーションをとることを欠かさない
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三浦は部下の社員に対して、こなすことができるようになった自分の仕事は、いつまでも抱え込まずに、できるだけ誰かに引き継ぐことを勧める。そのメリットはいくつもあるという。まず、誰かに引き継いでもらうためには、その仕事をわかりやすく説明できるまでに熟知し把握しなくてはならない点。また、生まれた余力で新たな仕事に挑戦できるメリットもある。さらに、仕事を引き継いだ人は新たなやりがいを持てるだろう。「積極的ワークシェア法」ともいえるこの方法。個人のスキルアップだけでなく、職場全体の活性化にもつながると三浦は考えている。