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これまでの放送

第190回 2012年8月20日放送

楽しむ心が、道を拓(ひら)く 駅弁販売・営業所長・三浦由紀江



自分だったら、こうして欲しい

“駅弁販売のカリスマ”として全国から注目を集める三浦。専業主婦だった44歳の時、駅弁を販売する会社でパート販売員として働き始めると、担当する売店の売り上げは急上昇。53歳で埼玉・大宮営業所の所長に抜擢された。現在、JR大宮駅構内の売店など9つの店舗で100人を超える部下を統括している。
三浦は、出勤する日は必ず部下たちと店頭に立つ。接客する時に大切にしていることは消費者の立場で考えること。三浦は専業主婦時代、「まだ買うか決めていない時に押し売りのように店員に声をかけられるのが嫌だった」という。その経験から店に立ち寄る人すべてが駅弁を買うと決めていると考えず、場合によっては、そっと見守ったり、世間話をしながら、買うと決めるまで待つ。その客がどの駅弁にするか具体的に悩み始めてから、それぞれの商品の個性や特徴を正直に伝えアドバイスする。客が買ってよかったと納得して駅弁を食べてもらうことを、何よりも大切にしている。こうした姿勢が、店の売り上げを結果的に伸ばすことになると三浦は考える。

写真営業所長になって6年目。三浦は今でも進んで売り場に立つ


現場が、一番分かっている

三浦は、パートやアルバイトの販売員たちの声に耳を傾けることを大切にしている。それは店頭に立つ彼らにしか分からない、「客層ごとの好み」や「商品の売れ筋」をつかんでいるからだ。三浦はどの駅弁をどれだけ発注するかという毎日の判断を、ある程度キャリアを積んだパートやアルバイト販売人に任せている。三浦が所長になる前までは事務所に常駐する営業職の社員が担っていた仕事だ。この発注システムの変更で、売れ残る駅弁の数は大幅に減り、利益は上がった。そして、重要な仕事を任されることにより、販売員のモチベーションも上がり、より前向きに仕事に取り組むようになったという。

写真三浦は駅弁の発注をパートやアルバイトの販売員に任せている


現場だから、話せることがある

三浦は出勤する日に欠かさず行っていることがもう一つある。それは駅の売店を回るとき、販売員にさりげなく声をかけることだ。何気ないやりとりから、体調や働く意欲が下がっていないかを確かめる。また彼らの相談に乗るときも、三浦は極力、事務所ではなく、客がいないときを見計らって店で話すようにしている。事務所で聞くと、「所長」と「部下」という意識が互いに強くなってしまうが、店であれば、肩ひじ張らずに話ができると三浦は考える。販売員と同じ目線で対話できることが営業所長・三浦の強みの一つだ。

写真三浦は店舗を回り、店員とコミュニュケーションをとることを欠かさない


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

自分の仕事を楽しむことだと思うんですよ。楽しんでいる人には、誰もかなわないと思いますよね。それと、そうすると、くじけない心も生まれるかもしれませんし。あとは、小さなことでも自分らしくチャレンジし続けること。私はこの二つだと、私は本当に思いますけど。

駅弁販売・営業所長 三浦由紀江


プロフェッショナルのこだわり

三浦は地方の弁当業者と共同で、新たな駅弁を開発することにも力を入れている。その数は5年間で20種類以上。食材などの中味はもちろんのこと、商品のネーミングにも力を入れる。弁当の名前に「私の好きな」という言葉をつけて、「私とはだれ?」と客に疑問を抱かせたり、地方の方言を前面に打ち出したり。そうすることで、客の目を引き、駅弁をすすめやすくしているのだという。また今、駅弁は旅のお供としてだけでなく、家庭でのちょっとしたごちそうとしても人気があるという。そうしたニーズにも対応した新しい商品を生み出していくことが、売り上げアップにもつながるという。

写真この日は福島県の弁当業者と新商品の開発のための打ち合わせに臨んだ


放送されなかった流儀

「自分の仕事」を誰かに振れ

三浦は部下の社員に対して、こなすことができるようになった自分の仕事は、いつまでも抱え込まずに、できるだけ誰かに引き継ぐことを勧める。そのメリットはいくつもあるという。まず、誰かに引き継いでもらうためには、その仕事をわかりやすく説明できるまでに熟知し把握しなくてはならない点。また、生まれた余力で新たな仕事に挑戦できるメリットもある。さらに、仕事を引き継いだ人は新たなやりがいを持てるだろう。「積極的ワークシェア法」ともいえるこの方法。個人のスキルアップだけでなく、職場全体の活性化にもつながると三浦は考えている。