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これまでの放送

第189回 2012年7月16日放送

未来をつかむ、勝負の教室 小学校教師・菊池省三



自信が、人を伸ばす

この20年で、崩壊したクラスを次々と立て直してきた小学校教師・菊池省三。クラスを再生させるとき、菊池が大事にしているのが、「自信が人を伸ばす」という流儀だ。
「自信がないから、友達をいじめたり、教師に反抗的になる」と言う菊池。「自信」を持たせることこそが、学級崩壊やいじめをなくす秘けつだと考えている。
そのため、菊池は子どもたちを褒めることにこだわる。何気ない仕草やちょっとした表情など、ささいな事までも、きちんと褒める。また、教師が褒めるだけではなく、子ども同士でも褒め合う機会を毎日設け、自分の良さや友達の良さに気づかせる工夫を重ねている。

写真菊池学級・ディベート大会
大人顔負けの白熱した議論が繰り広げられることもある


啐啄(そったく)

啐(そつ)とは、ひな鳥が卵から出ようとして殻を破る音。啄(たく)とは、親鳥が助けようと外側から殻をつつく音。卵が無事にかえるには、両者のタイミングが合わなければならない、という意味だ。子どもの中に“変わりたい”“伸びたい”という気持ちが芽生えた時に、背中を押す。勝負の時はいつか?作文やふだんの仕草、友達との会話などあらゆるシーンから、菊池は子どもの状態を探る。絶妙なタイミングで、子どもに働きかける。そうすれば、子どもたちは一気に伸びるという。

写真ふだんは厳格な菊池だが、子どもたちの話に思わず笑いがこぼれる


今までの自分を、超えろ

菊池が事あるごとに、子どもたちに伝えているメッセージ。
面倒なことや苦しいことからは、つい目をそらして逃げたくなる。しかし、その壁を乗り越えてこそ、人は成長できる。全力で課題に立ち向かい、突破できたとき、そこには新しい世界が広がっている。今までとは違う自分になれる、と菊池は教えている。
社会に出ると、困難なことに多く遭遇するだろう。それでも勇気を出して、立ち向かっていく人に育ってほしいと菊池は願っている。

写真教壇に立ち続けて30年、多くの子どもたちを育ててきた菊池


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

常に自己否定もしながら進化し続けようとする人。常に今を変えていく、進化するために変えていく、そういった取り組みを苦に思わない人だと思います。

小学校教師 菊池省三


プロフェッショナルのこだわり

菊池は、休み時間、子どもたちと一緒に遊ぶこともなければ、児童を下の名前で呼ぶこともない。叱る時も徹底して叱り、なぜ叱られたのかを子どもたちに徹底的に話す。なれ合うことと、信頼されることは全く別のこと。なれ合いの関係になってしまっては、教師として教室全体の様子を捉えることができなくなってしまうからだ。
そんな菊池が、子どもたちと信頼関係を築くために大切にしているのが、“成長ノート”。子どもたちに、ノートに毎日の授業の感想や日々思っていることを書かせている。素直な気持ちや過去のつらかったことなど、なかなか口にできないことも、書くことならできる。今の6年生も、書き始めて1か月で、それまで抱え込んでいた感情を吐露し始めた。
菊池は、放課後や休日に成長ノートを幾度も読み返し、一人ひとりに丁寧な返事を書く。返事を読んだ子どもたちは、また作文を書く。その繰り返しが、菊池と子どもたちの間の強固な信頼関係を生み出している。

写真子どもたちの思いが詰まった“成長ノート”
写真休日、10時間かけて返事を書く菊池 
子どもたち全員の気持ちと向き合う時間だ


放送されなかった流儀

群れになるな、集団になれ

良いクラスの条件は?という問いに、菊池が答える言葉。個人の意志がなく、単に友達とつるんでいるのを「群れ」。一人ひとりが意志を持ち、自ら考え、行動する。さらに仲間を思いやる気持ちも持つ。そんな姿を「集団」と表現している。クラスが「集団」になったとき、子どもたち一人ひとりの個性が輝き出すと菊池は言う。いま担任している6年1組33名も、よりよい集団を目指して日々、進化しつづけていく。

写真菊池学級では、子どもたちは競うようにして自らの考えを発表するようになる