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第194回 2012年4月23日放送

まっすぐ戦う、勇気を持て 投手コーチ・佐藤義則



いいときを、焼付ける

球界を代表するエースを数々育てて来た佐藤。佐藤が選手に指導する時に心がけている流儀、それは選手の「もっともいいときの投球フォームを隅々まで頭に焼き付けること」だ。佐藤は全神経を集中させ投手の投球フォームを観察し、記憶する。佐藤が特に注意してみるのは選手がもっともいい球を投げたときのフォームだ。腕や腰、足など全身の部位がどのように動き、関係し合っているかをチームの投手すべてで記憶している。それがフォームの修正箇所を瞬時に導きだすことができる秘密だ。
佐藤はひとつの型にはまった投球フォームを選手に押しつけることはしない。選手自身のフォームの個性を把握し、そのいいところを伸ばす。
この独自の指導法があるからこそ、選手達は佐藤を信頼し、納得して練習をすることができるのだ。

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まっすぐ戦う勇気を持て

たった一人でマウンドで戦わなければならない投手という仕事。佐藤自身も44歳まで現役を続け、数々の強者と渡りあって来た。しかし、その佐藤をもってしても「人間はみな弱いものだ」と言う。
だからこそ佐藤にはマウンドに上がる投手に伝えたいことがある。それは「まっすぐ戦う勇気を持て」という、強い気持ちだ。
投手は自分より格上のバッターを前にすると、その恐怖のあまりに自分の持ち味が出せずにボールが甘くなり打たれるようなケースが少なくないと言う。
「相手の大きさに押しつぶされることなく、打たれてもいいから、思い切ってまっすぐ投げる勇気、デッドボールすれすれの厳しいコースを果敢に攻める勇気を持て。」そう佐藤は選手に繰り返し解き続ける。佐藤はその勇気を持たせるため、若手にはあえて強いチームを相手に登板させている。そうすることで、大舞台で投げる度胸を付けて欲しいからだ。そしてそこで、自分の球は強打者にも通用するという実感を得ることで、勇気が育つと考えている。

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練習は本気、本番は遊び

佐藤は、練習で常に120%の力を出して本気で投げることを求める。実戦では多くの場合、緊張や不安などもあり80%くらいの力でしか投げられないことを佐藤は経験上知っている。だから練習では120%全力で投げる、そうすれば本番でリラックスして投げることができ、最良のパフォーマンスが発揮できるからだ。
選手に120%全力で練習することを求める佐藤。選手への指導も常に真剣勝負だ。選手の投球を傍らで見ながら、全力で褒め、全力で叱る。いい時はどこがいいのか、悪い時は逆にどこが問題なのかを強い言葉で選手に伝える。遠慮はせず、評価を曖昧(あいまい)にしないことで、選手の中にある迷いや不安を払拭(ふっしょく)するのだ。明確に評価することで選手は自分の持ち味を理解し、同時に課題を確認することもできる。「選手が進むべき方向性を示してあげることが何よりも大切なコーチの仕事だ」と佐藤は言う。

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プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

選手が認めてくれることだよね。いくら厳しくやっても言ってることをやってみたらそれが結果に出る。いくら厳しくても言ってることが間違ってなければ、自信持って選手と接することが一番だと思う。それ以外にないと思う。

投手コーチ 佐藤義則


プロフェッショナルのこだわり

10年先を見据える

44歳まで現役を貫いた佐藤。プロの世界で長年生き残って行くことの難しさを誰より知っている。プロ野球選手の平均寿命は7〜8年と言われている。「プロ野球の選手は、会社員のように定年まで働ける訳ではない、だから一年でも二年でも長く現役を続け、家族を養っていけるようになって欲しい。」と佐藤はいつも口にする。
そんな思いの中で、佐藤が選手を指導する時に常に念頭においているのが、5年先、10年先の選手の将来だ。怪我(けが)や故障というリスクと常に隣り合わせの選手に対し、どうしたら体に無理がなく長続きできる投球を身につけさせることができるかを考え指導する。それが佐藤の指導の根底に流れる選手への愛情だ。

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