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これまでの放送

第194回 2012年2月20日放送

宝は、すぐ足もとにある デザイナー・梅原 真



宝は、すぐ足もとにある

農林漁業と地方に関する仕事ばかりを引き受け、次々とヒット商品を生み出す梅原。そのデザインの第一歩は、そのモノの本当の価値に目を向け、可能性を見いだすことから始まる。
生産者や地方の人々は、「頑張っても頑張っても、売れない」と自らの作るモノに自信を失っていることも少なくない。だが梅原は、「ないものねだりをせず、足もとに眠っている地域の“宝”に目を向けることが、衰退する一次産業や地方の再生にもつながる」と考えている。

写真
写真今、大ヒットを飛ばしているクリのお菓子。かつては山に捨て置かれたものが、梅原の手によって、宝に生まれ変わった。


熱を持った人の、伴走者になる

全国各地から仕事の依頼が殺到する梅原だが、いくら金を積まれても動かない。仕事を引き受けるにあたって最も大事にするのは、依頼主の「本気度」、そして「志」だ。そうした依頼主の発するエネルギーが梅原を突き動かし、その熱意に応えようとする中から、梅原のデザインが生まれる。
生産者が本気で作った“いいもの”であれば、必ず売れると言い切り、背中を押す。そして、デザインの力で市場を切り開く。

写真志ある依頼主と、共に走る。


日本の“風景”を残したい

梅原が仕事をする上で常に念頭に置いているのは、自らの仕事が、「大切な風景を残す」ことにつながるかどうかだ。
梅原の言う「風景」とは、単に美しい景色を指しているのではない。いいものを作ろうと額に汗して働く人々の姿と、それが醸し出す現場の空気や景観。そうした人々の営みが映し出された“美”や“豊かさ”を、「風景」と呼んでいる。今は、売れないものや非効率なものは価値がないとされ、失われていく時代。そこにデザインを掛け合わせて付加価値を付け、売れるようにすることによって、その営みを存続させる。それが梅原を貫く信念だ。
「いい風景とは、志そのもの。俺はデザインの力で、それを守りたい。」

写真いい“風景”を守りたいという思いが根底にある。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

あらゆる場面があるですよね。そのあらゆる場面に対する空想を、現実にする人のことをプロフェッショナルと言いたいなと思いますけどね。

デザイナー 梅原 真


放送されなかった流儀

デザインで、コミュニケーションを生み出す

梅原はよく「コミュニケーション」という言葉を口にする。売れない商品というのは、消費者とのパイプがうまくつながっていない状態。そのパイプを作り出し、細いパイプを太くしていけば、売れるようになる。いわば、消費者との間に「コミュニケーションを生み出す」こと、それが自分のやるべき仕事だととらえている。
どうすれば商品が消費者の目に留まり、手に取られ、カゴに入れられるか。単にパッケージだけをデザインしているのではなく、コミュニケーションを生み出す方法を常にトータルで考えている。こうした方法論やデザインの手法は、すべて独学で身に付けてきた。

写真梅原はコミュニケーション・デザインの達人。数々のヒット商品を生み出してきた。


マイナスを、プラスに変える

梅原が手がける一次産業や地方の仕事には、特別な難しさがある。規模が小さくて効率が悪い、知名度がない、販路がない、広告を打つ金もないなど、商品を売るには不利な条件ばかりだ。だが梅原は、そうしたマイナス条件を逆手に取って、プラスに変えていく。
例えば今、梅原が力を入れているのが、地元高知の森林の活性化。高知県の森林率は84%と全国一で、経済的にはマイナス材料と見なされがちだ。だが梅原は、その森林率の高さをむしろ誇り、「84プロジェクト」と銘打って、森林まるごとブランド化に挑んでいる。

写真「マイナスとマイナスを掛ければプラスになる」が持論。