スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第161回 2012年2月13日放送

夢の旅客機、未来へのフライト 旅客機パイロット・早川秀昭



命を預かる、砦(とりで)の砦

去年10月、新型旅客機の世界初就航に向けたプロジェクトの最前線にいた。
早川が担う任務の一つが、就航までに機体に不具合がないかをチェックすることだ。
早川は就航の1か月前、実際の機体と全く同じシステムを搭載したフライトシミュレーターを用いたチェックを行っていた。その中で、LANと呼ばれる自動操縦システムのわずかなずれを見逃さなかった。
「人の命を預かるのだから、航空界の仕事に携わる人すべてが安全の砦(とりで)だ。その中でもパイロットは最後飛び上がるところの責任者。その砦の、さらに砦でなくてはならない」早川はパイロットとしての自分の役割をそう表現した。

写真シミュレーターに乗り込んだ早川


0.001パーセントを、見逃さない

新型機の就航まであと3週間と迫る中で行われた、実際の機体を使ってのテストフライト。70回以上にわたるそのフライトに挑むにあたり、早川にはひとつの決意があった。それは、徹底的に不具合をあぶりだすこと。
早川は「99.999パーセント機体が完成していても、膨大な部品の数から言ったらどこかが壊れているはずと思う自分がいる。機械だから信頼はするが、絶対とは思っていない」と強く語った。

写真テストフライトに挑む早川


命を運ぶ、責任

早川は新型機導入の要ともいえる、ひとつのプロジェクトに挑んだ。それは、より安全性を追求するための、パイロット訓練の改革だ。
早川が行ったのは、実際に就航している路線を想定し、複数のトラブルが予測できない形で発生する厳しい訓練。より実践的な訓練でパイロットたちに単なる知識ではない、「考える力」を身につけさせるのがねらいだ。
3時間にわたって緊張を強いられる「鬼の訓練」が始まった。「最大限のパワーでのぞんでこそ人間性が出る。限界ギリギリまでやって身につけないといけないものがある。命を預かる仕事だから。」そう語る早川。命を運ぶ責任を胸に、改革に踏み切ることを決めた。

写真訓練生と初フライトに臨んだ早川


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

今の自分の知識能力そういうものを自分でしっかり理解して、でも仕事にあたるときは常にモチベーションをもってあたる人が、プロ

旅客機パイロット 早川秀昭


プロフェッショナルのこだわり

早川は上空で常に外の様子を眺めている。注意してみるのは150キロもの先の景色。およそ10分後に到達する地点の状況を予測するためだ。
現代の旅客機は自動操縦のシステムが高度に発達している。しかし、天候や風の強さといった「未来」までは予測できない。それを補い、より安全で快適なフライトをするのがパイロットの大切な役目だと早川は考えている。「雨にも、10分激しく降ったら、20分休みとかいう『息』がある。」と語る早川。空の呼吸を読み、常に考え続けていくパイロットこそが理想だと早川はいう。

写真常に空を見つめ続ける早川


放送されなかった流儀

歩みを、止めるな

新型機の訓練部長という肩書きの早川。長年にわたって訓練の教官を務め、空の安全と向き合い続けてきた。その中で今でも解決できていないのが、パイロットが犯すヒューマンエラーだ。
時代とともに変化し続ける、空の交通量や、旅客機の性能、パイロットの人格。常に変わり続ける空の環境の中で、ヒューマンエラーを大きな事故につなげないためにできることは、「地道に安全対策を講じ続けること」だという。
常に歩みを止めないこと、その地道な姿勢が安全につながると早川は考えている。

写真新型機就航に挑んだ早川