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これまでの放送

第162回 2011年10月17日放送

「生きたい」その願いのために 血液内科医・谷口修一



助ける、それだけを考える

白血病など「血液のがん」と闘い続ける医師・谷口修一。
谷口を頼って入院してくる患者の多くが、他の病院で打つ手がないと言われた人たちだ。当然、治療は厳しい闘いとなる。そんな中、谷口が貫く流儀がこれだ。
本当に助けられるのか、過去に助かった事例があるか?医師の誰もが抱える不安を捨て去り、ただ「助けること」だけに集中する。そして患者が「生きたい」と願う限り、最後まで一緒に闘い抜く。決して、治療をあきらめることはない。
どんなに難しい状況でも、針の穴を通すような可能性が残っていないか、懸命に探り続ける谷口。その努力の積み重ねが、「さい帯血ミニ移植」など独自の治療法の確立につながってきた。過去の事例も、教科書も、治療をあきらめる根拠にはならない。谷口は部下に、「教科書は自分で書け」と指導している。

写真患者やその家族に人気の谷口
握手を求められると、照れながら応じる


どこまでも読み抜く、根性

谷口の口癖は、ずばり「根性」。「医師に必要なものは何か?」と問われると、必ず「根性」と答える。
移植治療を受けた患者は、抵抗力が極端に低くなるため、感染症にかかりやすい。しかも、症状は全身に及ぶことが多い。例えば、肺炎と脳炎を併発したり、内臓からの出血が起こったり、重篤な症状が次々と襲いかかることがある。患者の体の中で何が起こっているのか?この薬を使いたいが、副作用で他の臓器に障害が出るのではないか?どの臓器から優先して治療すべきか?複雑な症状をひも解きながら綿密な治療方針を立てる。そのために谷口は毎日、血液検査などのデータを穴があくほど見つめ、納得がいくまで考え続ける。谷口のもとに来る患者は、重篤な患者がほとんど。教科書や文献を探しても、答えは書かれていない。最善の治療法を、自ら見い出さなければならない。まさに考え抜く「根性」が必要なのだ。

写真写真目を閉じ、治療方針を考える谷口


命を引き受ける、覚悟

谷口が最も大事にする信念。
患者は命をかけて移植治療に臨む。谷口を心から信頼し、つらい治療にも耐える。「たとえ亡くなっても、それが谷口先生の治療を受けた結果なら諦める。後悔はない。」と言う患者は多い。
患者から命を委ねられる谷口もまた、医師としての覚悟をもって治療に臨む。ギリギリの闘いが繰り広げられる中では、谷口の下す判断の1つひとつが患者の命に関わる。常に全力で治療に当たり、覚悟を持って決断を下す。それが命を預かる医師の使命だと谷口は考えている。

写真治療方針を徹底的に検討する谷口のチーム


<造血幹細胞の提供について>

現在、移植が必要な患者さんが多く、さい帯血や骨髄液が不足しています。ドナーになるには、以下の団体までお問い合わせ下さい。

●さい帯血を提供したい 
「日本さい帯血バンクネットワーク事務所」へお問い合わせ下さい。
電話:03-5777-2429(平日 午前9時~午後5時30分)
ホームページ(PCサイト):http://www.j-cord.gr.jp/index.jsp (クリックするとNHKサイトを離れます)

●骨髄液を提供したい 
「日本骨髄バンク」 へお問い合わせください。
電話:0120-455-455(平日 午前9時~午後5時30分)
ホームページ(PCサイト):http://www.jmdp.or.jp/ (クリックするとNHKサイトを離れます)


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

患者さんのニーズにちゃんと応えられる人。みんな助かりたいと思って来られるわけですよ。それを助けてあげられたらね、あんたに対しても偉そうに、俺はプロフェッショナルだ、と言うけど。まだ道は遠いですな。

血液内科医 谷口修一


放送されなかった流儀

目の前のことを喜ぶ

厳しい闘いを強いられる谷口が、よりどころにする流儀。
血液検査の結果が少し良くなった、昨日よりもご飯が食べられた、腹痛が少し治まった…どんなに小さなことでも、谷口は患者と共に喜ぶ。
次の壁を心配することも大事だが、「いま状態が良いことに感謝し、喜ぶ」ことこそが何よりも患者の支えになると考えている。
白血病などの治療は、数か月以上、ときに何年もかかる長丁場だ。長い闘病生活を支えるのは、日々の小さな喜びだ。

写真谷口の豪快な笑顔に患者は安心する